『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「アタシも移動すっかどうか…迷うなあ…あんまりいいとこなさそうだし…もっかいだけ…見て回ってこようかなぁ…」
ダルいのかなんなのか知らんがねっとり喋ってる。キモい。
まあ、ようやく気力が出てきたのかそのまま立ち上がってまたのっそりどっかを見に行くことでしょうか。
「今いる人数でしたら多少バラけて雑魚寝出来そう…うーん、どうなんでしょうね。」
「……考えすぎると疲れてきますね。私は祈りましょう。」
両手を組んで、無言の祈りを捧げ始める。
しばらくは反応しないだろう
「僕に帰る場所はないよ。生まれてからずっと雨が止むのを告げて、星を追いかけて、虹をかけるだけ。
そうしてずっとずっとずっとずっとずっとずっと……」
「今更帰る場所があっても、ねえ」
「ハァ…全く、考えるだけやになるね、なんだか。…これからどうなるやら…。」
なんて話ながらソファに吸われていき、そのままずるずる横になっていきます。すんげえだらしない………………
「助けた後……どうなのでしょうねえ、連れてこられた覚えがないので帰りもまた同じ様に……だとするならば皆一様に元の場所に帰るのでしょうけれども……」
「帰るとこ…ないっちゃないね…。……帰ったら、確実にアタシは…」
そこで言葉を濁す。顔色はマシになってきた。
けどこの女、なんかやっぱあるらしい…。
「個室ですか。…とはいえ私は盲目で杖となりそうな物を持ち合わせていないのでたどり着くことが難しいですね。……なので、どなたかここにいらっしゃれば安心します。」
「なァ〜〜帰るとこない奴とか、
帰りたくねって奴いる?」
「助けた後さァ、どーすんだろな。
そのまま前までいたとこにポイ、なんかな」
「だったら俺、は」
なんて言いながら、一瞬、気になるものがあったのか他のところを覗きにいくようにふらっとロビーの外へ出て行ったが…すぐに青い顔して戻ってきた。
なんかあったっぽい。
「あっちに個室があったよ……♡」
「ベッドはないから僕は誰かを下敷きにしたいな〜」
廊下の絨毯が寝床としてマシかもしれない。
踏まれる危険はあるが。
「…にしても、どこで寝ような…。普通にその辺で寝たら…アタシじゃ風邪引きそうでやだな…」
寝床を探しにいって、なかったらここのソファで寝ようかな、なんて計画を立てているようです。まだしばらくはここにいるようですが。
>>1859
「近くにいても嫌じゃない人…ですか。…ふふ、ありがたきお言葉です。」
マシ。
初日だからこそ、その評価なら少しばかりかリスクは減る。
「…はい。今日はいろいろありましたし、緊張も警戒もされたことでしょう。」
「私は今日はここで何も起こらないことを祈りましょう。」
「おやすみなさい、猫様。」
丸くなって眠る猫を邪魔しないように、静かになったことだろう。
「おやおや、夜草織様はお誕生日でらっしゃる!
それはなんとも奇異な時に巻き込まれてしまったものです。」
「折角の特別な時だというのに……。」
「雨粒ちゃん誕生日なんだ!
それってめでたいコト?僕たちでお祝いする?」
気も紛れるかもしれないし。
「その後の儀式の方が気になるケド。
成人の儀とかそういうヤツ?」
「…そいつは災難だったな…。でもおめでとう、…いやまあ、祝ってる場合じゃないけどさ…」
なんか、なんて声をかければいいかわからないようで微妙な顔をしている。気がする。
「ええ、ええ、親御さん、ご友人等が心配……または心配をかける故に帰りたいと願うことは当然で御座いますね。七日、とは決して短い時ではないのですから。早く帰れると良いですねえ。」
わかります、と頷きつつも他人行儀に笑っている。
「私も今日、誕生日で……夜から皆で盛大にお祝いする筈だったんです。
それに、その後は儀式もあるし……」
「だから、一刻も早く……」
「……こっちも、町の事とか、流行とかの話なんて全然入って来ない村だから。
私は洋服が好きだから、買ってもらえたけど。」
親近感は同じ様だ。
「だって普通に暮らしてたら普通にそういうものはあるだろうし。
パパもママも心配するから……ここスマホも通じないわけだし」
「早く帰りたいと思う方もいらっしゃるのですね。
まあ、それが普通なので御座いましょう。」
「ええ、はい、酷く流行の遅れた村出身で御座います。
なんだかほんの少し親近感というものが湧きますねえ。」