『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「!」
びくりとその声に反応して、慌てて涙を拭った。
「…な、なんだい?」
素の反応をしてしまう。果たして、私はどっちに見えるのかな。
やべぇ〜〜。
明るい時にこんな風にナイフ持ったの、初めてなのに。
なんかめちゃくちゃ馴染むんだけどウケる。
(妙に綺麗なナイフを軽く誰にも当たらない程度に振り回してはしゃいでいる)
「お、地獄?案外スゲー事言うんだなアンタ、思うとこでもあったか?」
他人事のような感じかも。
「お、ご機嫌そうだなシスターも?やってんな〜」
「…………ん〜 」
ぱちりと目を開けて辺りを見渡す。
そこには顔を赤く染めた見知った顔があって。
「……綾川さん?」
どちらの言葉を発したのか、はっきりとは聞き取れなかった。
「さて、お二人とも。そろそろ時間だと思います。準備をしましょうか」
ナイフを取り出した。血を拭われた、綺麗なナイフ。
「…………」
猫は静かに、綾川さんの近くへと移動するのでしょう。
心配そうに寄り添うだけですが
それでも、何かになればと。
「あぁでも、今日は神父様が殺しに来てくれるんですよね。神父様は嘘つきですから私のことなんてきっと覚えてくれなさそうですしお迎えから遠いところまでしかしてくれないでしょうからいいです。死んだら私自身何もかも無くなりますので!」
恍惚、
瞳はらんらんと
「まあ、逃げられなくてもそん時はそん時でやれることたんたんまりまりだしな〜
……へー、迷路をゴールしたら願い、確かに眉唾だな。
あればいいけど、とは思うけど……こっちとしては神様なんてもん存在してたらヤベ〜と思ってっからさ〜」
「落ちたらどうなるのでしょう、そのまま死ねるのでしょうか。皆さんも私のことを心配していつまでも想っていただけるのでしょうか。行ってみたいなー」
「はえ〜っ 新しい表記ねぇ。ドンドン新要素出てくるじゃん。
けど、落ちたか……」
観測不能と書かれている人物の名前を見る。
「帰り道ではなく、地獄に落ちてるといいな」
「それもそうですね……」
二人が入れば、確かににそうか。
「眉唾物のおとぎ話なんですが、私の世界の楽園には、裏側があるらしいんです。そこには神様の作った迷路があって、ゴールに辿り着いたらなんでも一つ願いを叶えてくれるんですって」
「……眉唾ですよねぇ」
呆れたように笑う。そんなもの、無いと思っているから。
>>16056
「もう二度と、自分の手で、壊したくないだけの臆病者なだけなんだ…!!」
悲痛な叫び。でも、その声は決して大きくなくて。ただただ、苦しそうにしていた。
「間違っていようが、救えたらそれで、いいのに、私は…。」
自分を、追い詰めすぎたような。追い込みすぎたような。
これは、貴女のせいではない。
初めから、この医者の中にあったものだ。
>>16056
「最初は死に損なったと、思ったよ。けれどね。」
「みんなは、嘘でも私のことを1人の人として、扱ってくれただろう…?」
「彼女は、特に、心配してくれて…。」
人の温もりを思い出して、涙が一粒。
「違うんだ、違うんだ…!!正しさとか、間違いとか、私は、そんなんじゃなくて…。」
「そうですねぇ……」
何でもやろうという言葉に頷く。
「楽園……天国と地獄、もしあるならどっちが良いとかあります?」
「ん〜、アンタが寝てる間に出るようになった表記?的なやつ〜
俺も詳しい事は知らね〜ぜ?
なんか皆落ちた、とか騒いでっけど。
実際、それ出てから誰も姿見てねぇらしいし〜」
「何でもやっちまお〜ぜ、今なら何だってやれるんだからさ?」
「……そ、っか」「そろそろ記録時間……」
カウンター越し、ぼおっと呆けていた少年。
モニター前に溜まる人々、ソファにいる人々を見ている。
「じゃあ最高じゃんね」
昨日の惨事を知らないので、適当なことを言っている。
「あ、じゃあもうちょっと失礼〜っ
ところで、この観測不能や範囲外って何?」