『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
此処に着物の姿はない。
少し前からどこにも顔を出していなかった。
大方どこぞの部屋にでも閉じ籠っているのだろう。
人目も憚らず隣に在った黒い長身も見かけない筈。
大方どこぞで死んでしまっているのだろう。
そっと、目を開ける。
「…………」
立ち上がって。呼吸音が、しなくなったそれに、近づいていった。
モニターを見る。
…もう、ここに残しておく必要は、無さそうだった。
『次の[快晴]は計測不能です。』
同じ放送が繰り返されている。
『次の[快晴]は計測不能です。』
同じ放送が繰り返されている
「…神よ。……いいえ、ぼくを見つけて、見捨てたダイヤ様。」
「ぼくはあなたから与えられた役を果たします。」
「あなたが見ていなくても、ぼくは果たして、」
「あなたがいる世界とは遠い世界で、」
「みんなをずっと見ています。」
汚れたナイフを、もう一度握り締めた。
「…………」
カウンター越しにロビーを見渡している。
暗闇を恐れることなく、壁に寄りかかったまま。
見ている。見ている。ただ、見ている。
きっと、死ぬまで。
今日も停電が来る時間でしょうか。
……蘇生薬も、包帯も、もう。
…………変な想像ばかりが頭に浮かんでしまって。
猫はただ、丸くなるだけですが。
どうか、私が、信じる人だけでも、外に出られたら。穴に、落ちられたなら。
叶わない祈りを、胸に抱きながら、時を待つばかり。
彼女の側の、床に座って。1人静かに、目を閉じた。
ててて…と駆けて来て状況確認。
随分静かになってるみたい。さっき廊下に居た人もいる。
ナイフ振り回して楽しんでいた人が、あらかた満足したからなのかな。
それとも停電後にはまた賑やかになるんだろうか。
「…………。」
ててて…と駆けてこの場を後にした。
「………………」
医者は、色々考えていた。
失っていい患者なんか、居なかった。だからその命を、奪った命を、そのまま奪ったヤツから貰うことで、私はあの悪党共への精算としたのだ。
けれど、もし、それすらも許されないというのなら。
だから私は、ここへ導かれたのだろう、と。
「――痛みは、連鎖するんすよね」
は、と自嘲気味に言った。
無力な自分は、ただただ傷付けられるだけで。
それでも。
「……死んでいい命なんて、あるわけないじゃないすか……」
壁際で体育座りをしながら、顔を伏せた。
結局、疲れが響いてあまり活動できなかった。
「置いた資源も誰かが持ってったし、無事に越せるといいけど」
ここまで来たら、悔いのないようにするだけ。
(……ここに来ていた人)
(彼らにだって、家族や)
(親しい人だって、居たのだろうし)
(……)
考える頭がぐちゃぐちゃする。ズキズキする。
痛い。痛い。痛い。痛い――
「あ、」「いいです」「大丈夫ですよ」
「そもそもどこも誰かの物じゃありませんから」
俺だって勝手にカウンターいるだけですし、と。
「それに、」「服を干すこともあなたが選んだ行動でしょうから」
「あ、おはよう…ごめん、勝手にカウンターで服干しちゃってて。」
気配に、声に気がついたのかそちらをみて。
カウンターには白衣と、上の服が干してある。医者は黒いタンクトップ姿だ。
「ん、そっか」
自分はとりあえず、服と白衣を干して。
…流石にこの格好じゃ、ちょっと肌寒いな…。とか思いながら、近くのソファでズボンが乾くのを待ちながらゆったりしているのかも。
一瞬だけ、廊下の様子も見にいったりして。
「水嫌いだからいいです……」
もう行く気は失せてしまったようです。
猫は気まぐれですから
さて、そんなこんなで暫くはごろごろと過ごすのでしょう。
※PL離脱
「ん、ただいま…っと、どういたしまして。…あ、そういえば…やっぱりプールの人達、お湯溜めてたよ。今なら足が浸かるぐらいの浅さだったし…見てくる?」
水蒸気の匂いを纏っているのは場に居合わせたからで。
彼女の様子は特段変わっていなさそうなら、安心したような、やはり心配なようなで。
自分はとりあえず服とかをカウンターの方に干しに行こうかな。