『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
不具合が増えてる。相反するように時間は減っていっている。
混乱。錯綜。情報の濁流。それより前に、考えることがあるな。
「……ここでの死亡者は一人、負傷者は二人」
「しかも。よりにもよって……ですか」
嫌だな。
がくり、と。
膝を着いて倒れる。
別に。
別に。
「俺を狙え、なんて言わんすけどさあ……」
なんで人を、こんなにも容易く せるのか。
極限状態、とでも言うつもりなのだろうか。
こんなにも、簡単に、命のやりとりを。
「…………、なん…、で……」
狙われるような性格の人じゃなかったと思う。
誰かの反感を買った……のかもしれないけど
少なくとも、猫が見たあの人は
明るく、陽気で……優しい人でしたから
……あの人と親しかった人達は
何を思うのでしょうか
抱きかかえてみる。冷たい。揺り起こしてみる。起きない。息がない。なにもない。
「う、うぅ、うぁ……」
現実だ。何も変わらない。ああ、約束するまでもなかったじゃないか。だって、こんなに自然に泣いているんだから。嗚咽が漏れる。身体の痛みも忘れて、ただあなたを抱えて泣きじゃくっている。
『資源生産用原料不足による不具合12件により、緊急プロトコルが実行できません』
『担当者は速やかに確認してください』
『死者を検知。緊急プロトコルが実行できませんでした。』
『バイタルサインに異常を検知。緊急プロトコルを起動します……』
ザザ、ザ……
ザザザザ……
『死者を確認、資源の追加生産を行います』
『……』
「う、うあ……なんで……マブだったのに、ともだち、だったのに……。こんな良い人がなんで……」
ぽた、ぽたとあふれる雫。
「ごじゅ……」
目の前の光景と、放送に、頭が混乱しそうになる。
急いで動いてもこの場所ではあまり変わらない。だから、状況の把握を優先しようと。
「……」
死体を眺めている。そっちの壁際の。
「これじゃ」
「あれが未練、みたいじゃん」
「聞くんじゃなかった……」
約束は守らないつもりだった。
誰が死んだって泣いてやるものか、と思っていた。
……じゃあ。
この目から滴る雨はなに?
「……ちが、ちがう!そんな、そんなの……」
みとめない、なんて言えない。
だって、約束したじゃないか。
「……タチヤマさっ…!ぐぅ、うう……痛……!」
『資源供給システムに追加の不具合を確認しました』
『資源供給システムに五十件の不具合を感知。担当者は速やかに確認してください』
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
『資源供給システムの不具合を確認してください』
『こちらは自動放送です。』
ザザ、ザ……
『……おい、何かがおかしくないか?』
『計測中』
『はい……』
『……管理人室、というか』
『二階以上が、まるまるなくなっている』
ザザ、ザ……
『予報更新』
『次の[快晴]は推定約三十時間後です』
「いや、いや、嘘ですよね?嘘ですよね?だってさっきまで元気に喋って……」
自分の傷も忘れてふらふらと近づく。
「だって、ねえ……タチヤマさん?」