『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「あ、」「クリスマスと誕生日が近かったらプレゼントも一緒に……みたいな、感じですか」
「お正月と誕生日、だと……」「お正月パワーに誕生日が飲み込まれちゃいそうですね……」
お察しします、と言わんばかりな慈愛の瞳。
「大丈夫!言葉で死ぬことはございません!この空間においては……」
「チョコレートは比喩です。言葉は時に理想や希望、夢に殉じるための甘言となりますよね。
同時に、リアリティとやらが欲しければ現実味というカカオを足して、苦くすることも出来るんです。
どういう甘さを好むかは、人によって違う。適切な甘さである必要があります」
「僕は七夕生まれだよ」
ほんとはね。うまれたての命なんかじゃない。
「今日は何日なんだろうね?通信機は分しか教えてくれなかったから。そもそも、ここに月齢なんて……」
三日月は呟いた。
「元旦」
突然の元旦にフリーズした─────
「良いじゃん良いじゃん良いじゃん〜?スゲー始まり的な〜?ヤバ、マジで凄すぎてオモロいな〜!」
数秒後くらいに、いつもの明るい調子になったかも
「小遣いとお年玉がいっぺんにやってくるせいでいくら損したかわかんねっす……」
12月~1月生まれの子には、誕生日個別に祝ってあげると喜ばれる可能性が高いですよ。(小噺)
「っすー。いやまぁめでたいのはめでたいんすけどね、いいことばかりでもないっていうか……」
「こう、盆と正月がいっぺんにやってくるって言うじゃないすか」
「誕生日と正月がいっぺんにやってくると、一緒くたに祝われるんすよね……」
遠い目をした。
「元旦にはまだ早かったですよね?
ちょっと曖昧…………
というか今日何日でしょう……」
人よりはまだ体内時計が狂ってはいませんが、それでも狂いつつはあり。
「……あ、」「おはようございます」「えっと」
「元旦……ですか。良い日に、生まれて来たんですね」
虹色多弁さんの声を聞きながら、起きた人にぺこ、と一礼。
「まさか!これは持ち前の口でございますよ!
でも確かに話術の学校で添削していただく機会は欲しかったですね!」
「さて、以前綾川様は私めとお話した時人には人ごとに適切な処方があると、意訳ですがそう言っておりましたね。
確かに、思えば言葉とはチョコレートです」
急に意味不明なことを言いだした。
「まあ……」「その語り口がそういう"特異点"由来だってことなら、そりゃあ悪い技術だったんだろうね」
「添削してくれる教師も作っておかないと」
おはなしがながいよ〜。
「というか前にプールで時間の流れが違うから誕生日に間に合う可能性があるとワタシが吐き捨てたんですが、やっぱり夜草様は寝ていらっしゃいましたね!ああ、長々と吐き捨てたのにお恥ずかしいです!」
「………………」
希望を持たせるだけ持たせておいて、
上げられてまた落ちる方が辛いと思うけどな、と。
思ったけど、遅いだろう。口には出さなかった。
「……」「発達しすぎた技術」「人の罪」「贖罪」
「…………」
黙ったままを保って、静謐で呼吸をしている。俺に対する話でも無し。
「………」
話の着地点が見えない。多分最後まで聞かないと良くわからないものだろう。いや、聞いて理解できるかはまた別だが。
何せ、どうやら私の頭は硬いようだからね…。
>>13179
「というところで夜草様に話しかけます。つまるところ、私めは未来人だからこの空間の時間の流れと外の時間の流れが違うことは、あり得る。可能だと思います。私めの世界ではホルマリン保管の代替として使われると耳に挟んだことがあります。
自分の世界にはそういう事例があったから。だから、思いました。生きて脱出すれば外はまだ夜草様の誕生日に間に合う時間ではないかと!
されど1日の猶予があれば、果たせるものがあるはずです」
「まあ、無理は禁物だろう、休めるときに休んでおけば後々もう少し楽かもしれん。」
女はというと、起き上がってから変わらず、ソファでくつろぎ続けている。