『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「しょうがないなあ~じゃあ自己責任契約にサインしてもらえれば……」
「なら自分が人間クンだったことだけはずっと覚えてるんだろなあ」
「いや、馬鹿にはしてないよ…。なんと言うか…赤猫さんは人間とほぼ同じってか、そんな感じじゃ無いですか…」
普通の小型の猫になると、どれぐらいの知能があるかが未だ未知数だから困る、と言う感じで…なんて。
「バカにはしてねっすよ笑」
「ただちょっと、えぇ。喋られなさそうだな~とか、ね。
そのへん」
もにょもにょ。
「死因:ヨーヨー、とかにならん事を祈るばかりすね……」
「…………ヨーヨーで?」
「そ、そうかい。まあそういう日もあるさ(?)」
心配が変な方向に空回りしてしまった。
マジで何してるんだろうこの人……と思ったが口には出さない。
表情には出てるかも。
「脳の容量まで猫になるのは困るな…このままの容量で小さくなってくれないか…」
脳みそのシワを増やせば可能なはずだろう…みたいなノリで。
「え?ああいや…その…お恥ずかしながら…さっきヨーヨーで肘を強打してしまってな…」
恥ずかしそう。それでしんなりしてたのかも。
「今何時頃だろう…まさかもう停電前だったりして…いや、流石にそれは無いか…。」
あと5時間ぐらいですね。体内時計はかなり終わっているらしいです。
「なんか気だるげというか……ちょっとお疲れ気味なのかな?」
「その……大丈夫かい、綾川さん?」
ソファに沈む女医に声かけ。
やっぱ年齢的にキツいのかな……とは思ったが口には出さなかった。
ド失礼なので。
「よっすよっす〜?いい朝だな〜」
体内時計がバグり散らかしている。
「まあ労働に囚われていると大変かもしれないが、労働がないと違う場所に囚われたりもすっからよ、どっちが大変かはケースバイケース、ってね〜」
「全く、私も猫になりたいぐらいだよ…。」
働かなくていいなら、と、何度夢見たことか…。って呟いてる。
飼い猫なら飯も勝手にもらえるし…
「おはよう…。」
なんか眠そうな人多いな今日…ゆっくりできるところでゆっくりして欲しいものだ。
「あぁ、おかえり。」
戻ってきたあなたには、元気そうで何よりだと言わんばかりに。
「人間は大変ですね。労働に囚われているなんて」
猫は自由で気楽でマイペースです。
ふふん、と鼻を鳴らしました。
それから来る人に対して「おはよう」の代わりに、軽くしっぽを揺らしました。