『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「凄くはないさ。そうならざるを得なかっただけだ。」
「死が怖いのは当然のことだろう。だって、後先がわからないのだし。」
何せ、真っ暗な中で何が起こるかわからないだけでも怖いと言うのに。本当に先の見えないモノなんて…
「――ええ、ええ。
十分ですとも。……ありがとうございます、探偵さん」
何処かへ行く足には、手を振ろう。
己は少しだけ、ソファに背を預けながら。
「……そう、か。やっぱり凄いね、綾川さんは」
「僕は……いざって時になって、自分が傷つくのが怖くてたまらなくってさ……」
「絶対に死ぬ、だなんて決まっている訳じゃない。ただその確率が少しだけ増えるだけだと言うのに……」
「本当に…………本当に怖くってしかたがないんだ……!」
指先でガッチリと掴まれている400ほどの物資が、指に、腕に、身体に合わせて震えているのが分かる。
「……綺麗ごとだったんだ。僕がこうあるべきと考えていたものは」
「所詮は……絵空事でしか
「…人を助ける時の気持ち…か…。
単純だよ。自分ができることを精一杯、全力で、かな。命懸けは…ある意味間違ってはいないが、ある程度は自分も大切にしないと、救える者も救えなくなるから…そこら辺は少し曖昧かな。」
まあ、本当にやれるだけを、精一杯と言った感じ。
患者の治療の時は、自分の置けるもの全てを置いて、その人に注力していた。
「できないことはどうにもできないから…その時は地面を殴るしかできないが。」
何度か、地面を殴るしかなかったような経験もあるのだろう。少し苦い顔をして
「………………ねぇ、綾川さん」
「綾川さんは人を助ける時、どんな気持ちでいるのかな」
「やっぱりお医者さんだもの。いつだって命がけの気分なんだろうね」
ぽつぽつと言葉を漏らす。
口端から漏れ出る音は、僅かに震えを帯びていて。
「……」
今日は、鉄の臭いも纏わず、服も湿っていなかった。
あるのは煙と、元からあった嫌な鉄の臭いと薬品臭さだけ。
「…さて…。明日は……どうしようかね。」
ボソリと一言、漏らした。
「おかえり」という代わりに、小さく「にゃー」と鳴きました。
煙草の匂いはそこそこに嫌いですが
人が良いのでそこまで嫌ではありません。
>>10897
「…………」
猫は貴方の隣へとゆっくり進んで来ました。
特に何かを言うわけではありませんでしたが
どことなく、心配そうにしっぽが揺れていたり。
「あ、おきたんだ。」
綿積さんを見て。
「そういえば、残りの日数が半分へ減ったの、聞いた?…放送によりゃ、後3日で晴れるらしいんだけど…まあ、増える可能性もあるから、気は緩めない方がいいかもだが。」
あなたが袋の中に注力しているのを見て。
確か、その放送が流れていた時、あなたはまだ眠っていただろうから。
「…ただいま…?」
随分と喫煙所に長居したらしく、今日は煙草の香りがいつもよりも強めについています。
とりあえずいつものソファに座りますが。
「落ち着けよ……ちゃんと冷静にならなきゃダメだ……」
袋の中の資源をもう一度数える。
手元に残る数とこれから過ごすであろう日数を計算しながら。
こうして数えている間に、だれかが代わりにやってくれやしないか。
そんな思考が鎌首をもたげてくる。
「最低だな……僕は」
「……ありがとうございます、探偵さん
お陰で少しふらつきが抑えられました」
大人しく手当てを受けた後。
さて、と問題の食堂に行くかを悩んでいる。
「みなさん、ゲームを見に行くようで」
お見送り、お見送り。
「……『副作用』って、なんなんでしょうか」
蘇生薬にはそれがずっと書かれているけど
未だよくわかっていない。
生き返った人の話を聞いても、元より明るい人のようだったし。
精神錯乱……などではなさそうですが。
「蘇生薬も……半額になっているんだな。であれば猶更……」
死人は蘇る。それは確かな事実になった。
希望はある。必要資源だって緩和された。
なにも戸惑う事はない。今すぐに死ぬわけじゃ無いのだから。
「…………身を削ってまで助けるのか?碌に会話もしなかった人間を……?」
投げやりの自爆的な救助ではない。
自分も相手も助けたいという我儘な思想は今、自分の喉元に刃を突き立てた。
「ん〜、これは憶測だけど……」
「薬を使って、やっぱダメだったんじゃねぇかな〜って」
と、言いつつ、野次馬しに行くか…食堂に…
「パーティ……
まぁ、生き返るなんてめでたいことがあれば、そうなりますか」
「……資源は無いようですが、大丈夫でしょうか……」
治療されるのは嫌で若干ヴ…と唸ったかも、さっき思い切り突っぱねちゃったしな…
「へ〜、パーティな〜良いじゃんね〜!!お元気そう…じゃねーのか、元気なら何よりだぜ!」
「……生き返っていた。本当に」
すぐに見て帰ってきたのだろう、動揺が抜けきらない。
有償の奇跡はたしかにあった。
「効果があるとわかった以上、僕は…………」
「……」
こんなんじゃ足りない事ぐらいわかってんだ。
「…治療されるの、嫌とか言わないでくださいよ」
寝起きにこんなん見せられて、放っておくほうが気持ち悪い。
「お気になさらず。よく寝れたようで何よりです」
寝れる時に寝るのは大切ですから。
こんなところじゃ、満足に気持ちよく寝ることも、死ぬ以外で無いでしょうから。
「1人、今度はちゃんと生き返ったそうです」
「お、ワタち〜おはよっさん、
起きたやつはな〜、今んとこ普通そうだったぜ〜、普通に話しててビビったわ」
「あ、悪魔は行ってらな〜」