『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
ちょうど入れ違いになったのかもしれない。
真紅のマントに包まれた初老の男性がやって来た。
両手に娯楽品やら嗜好品を沢山持っている。
「……ここはあまり来たことがない。」
最期に寄りに来たようだ。
「それくらいしかする事がないのかもね。」
結末は決まった。襲う考えも、襲われる心配もない。
どう幕を引くか。それだけなのだろう。
「はい、たぶん。」
3人で決めたことだから、と。
答える声には、1つの迷いもなかった。
またね、と言う挨拶には。
「………はい、また、どこかで。」
とだけ返して、この場を後にして行くだろう。
「……ロビーで待ち合わせで。…1人と、1匹のところです。」
医者が、ずっと一緒にいたあの二人。
最後は2人と過ごすみたいで。
「おォ〜、そうかァ」
「じゃァ、そうだな」
「またな。」
というのは、今の別れには不相応だろな。
でもこう挨拶する。ここで昨日そう話したんだよね。
またいつか、どっかで会えますようにを願おうって。
「すっきり終われそうかァ?」
「ありがとうございます。………お気持ちだけで。たぶん、使うこともないでしょうし………あ……いや…、…でも、使うことがあればまた取りに来ますね。」
そろそろ、ロビーの方へ戻るようです。
「じゃあ、私はこの辺で………ちょっとみにきただけなので。………少しですけど、話せてよかったです。……お世話になりました。」
そう言って笑った医者は、どうしようもなく幸せそうだった。
引き留められなければ、そのまま戻っていくのだろう。
「挨拶しに来たってこと? そっか。お疲れ様だね。」
立ち上がり、ぺこりとおじぎして挨拶。
「お別れかもね。誰のところに戻るの?」
「どうも。……紅茶、か、………いいね。」
一瞬見に来たときもパシャパシャ、してたっけ。
冷めてても、水は綺麗。
「いえ、今日はすぐ戻る約束をしてるので………」
「………ありがとう、ございます。………でも、今日でお別れ、ですね。」
どうやら、言動から、夕方になる頃には終わらせるつもりのようです。
「あらそうなの。はいってきゃいいのに」
「まァ〜もったいないか」「その顔洗うのもな」
なんかあったんだろけど。
まぁ、何があったにせよって感じだろ。
すぐに終わるつもりなら、そのまま持ってった方がいい。
「なんか常々よく頑張ってたなァ、お疲れさん」
プールの水は………たぶんそこそこの深さにもどってるのかな。それこそお風呂ぐらいの深さに。
「………」
ここももう、お別れ。そう思うと、刺すように冷たい水も、優しく見える。
「あっ、えと、こんにちは。いえ、その…なんていうか………別れの挨拶?」
目の赤みは、よく見なくてもたぶんわかる、泣き腫らした跡で。
「お風呂、昨日やってたからどうなったか気になったのも、あったりします。………あっ、入るつもりはないので………」
目元が赤くなったままの医者、入場。
プールの様子を覗きに来たらしく、水がどうなってるかを見に来ました。
「………どうも、…」
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
「おじさんのそういうところ、とげとげお兄ちゃんにそっくりだよ。」
放送を聞いて。
「飛び込む人、多いね。ちょっと資源取って来る。」
ててて…と駆けて行った。
「ほむりの…………ガキ」
ガキから逃れられない
「大切にされると作家冥利につきるなァ〜」
いつか一緒に熔けてくんだろな。
それもいい。お前のための物語だからナ
甘噛ほむり は 娯楽品 を得た。
甘噛ほむり は 嗜好品 を得た。
『資源倉庫への追加資源を配置しました』