『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「お、威勢がいいなァ」
「いいんじゃねェか。生きてる今が大事だもんな」
「最後まで精一杯生きるのだって、絶対悪いことじゃァない」
その原稿だってなァ、最後の最後までインクしぼりだして書いたんだ。
同じことだよな、人生と。
「死ぬそのときまで頑張って生きような」
「おかしいのかもしれないけれどね。私は死ぬつもりないの。
最期には雨水が流れ込んできて溶けちゃうんだろうね。壁とか亀裂が入って来てる気がするし。
私達、綺麗な資源になるかな?
でも、それまでは生きてるんだし、何で死ななくちゃいけないのかなんて考えない。
それが生きるって事だと思うから」
原稿を貰って居るなら、それを胸の中に抱き締めて。
あなた達、二人を見据えて言い切る。
「ガキが気遣うなよォ〜」
「ま、ありがとなァ」
もう昼くらいかな、多分そう。
こんなに終わった場所なのに、のんびりしてるもんである。
「楽なのに……俵……」
まぁ、そんときになったら多分。
宝物らしい運び方することなるけどな。
「ガキ……まさか寝たフリを……」
「誰に哀れまれるというんですか。
俵運びの女の子のがよっぽどでしょう」
そっちの品格のが下がり通しになりそうですよ。
「別に運び方は重要じゃないからいいけど……」
「我儘なやつだね……」
我儘言えるようになったね。
「色気のある運び方なんかしたら死んだお前が哀れだろ」
おじ専だって思われちゃうかも……
「お前に出来んのかァ〜?力なさそうだからなァ〜」
「……までも」「そうしてくれると嬉しいなァ」
できるだけ1人にしたくねんだよネ。
だから、直ぐに後追ってくれんなら嬉しいよ。
「お前が先に死んだら肩に担ぐかァ〜」
米みたいにな。
「そうですね……一緒に」
「もしそっちが先に倒れたら、
私は引きずってでも中庭の外行きますよ」
どこまで行っても人ありき。ここではね。
「自然はそんなに人に寄り添わないよ」
リアリストおじさん現る。
餓死か溶けるか、ナイフで死ぬか。
溺死もできるが苦しそうだな……
「できるだけ一緒にいる時に死ねるといいなァ」
「飢えるのやっぱりしんどそうだな……」
死に方を選ぶ段階になってくると、
やっぱり選り好みが始まってしまう。
「死にそうになったら介錯の雨が来るコースがほしい」
「この土壇場で落下を試すのは怖いですし」
「あっちの方が生き残るならそれはそれで」
それぐらいのことは、あってもいいはずだしね。
「建物の方も限界が来たりするかもな……」
「そのうち感謝伝えるやつもどんどん消えてくぞォ〜」
「どうにかして1番最後まで残りてェなァ〜。いや落ちたヤツらの方が生きるか……?」
しょうもないレース
「あらら、案外せっかちだったんだな」
意外、ではない。行くなら一緒だろうと思った。
「じゃあ、その分二人に多めの感謝をしちゃお」
「ありがとね〜」
本気で感謝しているんだか、いないんだか。
子供みたいに手を振って、顔を引っ込めた。
あるのは、身体を引き摺ってでも来たという事実だけ。
「お陰様で」
「もしアレが無かったら、本当に死んでたと思うから」
血だらけの手でVサイン。
周囲を見渡して、少ないな、と。
「お礼言いに来たんだけど……羽の人と、小さい子は?」
「お……」「生き残ったんだ」
昨日の。
随分死にかけだが、何とか生きてるらしいな。
「今はプール改め手動沸かし風呂だネ……」
「シャワーは変わらずあるよ」
ずる、ずる、ずる………
壁を汚しながら、青い顔の男が顔だけ覗かせた。
「……ここ、プールで合ってる?」
一夜にして劇的ビフォーアフターを迎えたプール。
自身の目を疑っている。今、自分の目が結構信用ならない。
「おォ〜寝ろ寝ろ」
「どうせ暫くはなんもないだろしな」
賑やかだった3人組もいなくなった。
このまま静かに終わるかもな。それだっていいさ。
「身体が睡眠時間足りてませんよって言ってるし」
「もう少し……横になろうかな……」
スンと横倒し。ちょっと息苦しいけど、
それでも心地よい。
「もう、残ってる人も……少ないからな」