『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「もう言っちゃいますが、夜草様が受諾してくださるならとある毒にかかってそれは血で感染するので刺さないでという感じに自衛のため吹聴していきます」
最悪の出力。
「……皆さんが、コンテキストさんを苦手とする理由が、少しだけ分かった気がします。」
以前までは、ある程度信は寄せていたかもしれないが、今は違った。
水から上がった男を、冷めた目で見ていた。
「貴方の言葉の方が、余程毒よ。」
「私は……」
続く言葉が、出なかった。
彼みたいに自由に言葉を操る術を、彼女は持たない。
「やめてよ、こんな事……本当に、迷惑……」
→「特別な人間が発生すると、人はその方を特別視してしまいます。だから、脚色に使える!
現に、毒人間と呼ぶような方もいるくらいに有毒を疑ってかかる方がいるくらいですから、あなたのその毒は人を操作する力がある!
殺傷せずとも有効的な手段になる!
恐れという方向性だとしても、集団の利益になり得るのです。さながら羊を誘導する牧羊犬のように!
つまり、嫌悪で自棄にならないでくださいということです」
「…………。」
そんなものまであったのか。たしかにタバコはあったが……。
本当に、意外なものが提供されていると言うか。
「……そういう仕組みなんだな。解明されているものなのか。」
>>11869
「そう……? 無理したら……困るわ。私が」
あなたの無理を防ぐには一番効果的な言葉だから、そう告げて。
冷たい水はおろか、外気で風邪を引きそうだったので。
薄着姿のままぎゅうとくっついていたりしていた。
着替えも手伝ってもらったかも。
肌を見せていたのはほんの少しの時間だけど。
「紙飛行機は…どっちかと言うと娯楽品かな。私もヨーヨーをもらった。」
ヨーヨーを…もらった…。 中年女性からなかなか聞かなさそうな言葉が出てきたな…
「でも夜草様に認識して頂きたいのは、今死ぬことはないという事。これだけは事実であり、無毒である可能性はあります。
そして無毒であろうと今、毒性があるという情報は使えます。
例えば!夜草様の毒は人を選別する毒であると触れ込んだら?例えば今、私めは毒のプールに飛び込んだが奇跡的に毒耐性を得て、選ばれた……なんてエピソードを付け加えたら?」→
「彼女の毒は、アルコールと反応するものでね。これが無毒化されずに元の毒の効能に戻っているなら。そうなれば…酒で中毒を発症する可能性が非常に高い。ないとは思うが…くれぐれも気をつけてくれ。」
そう、元はそう言う毒なのだから、逆にこのハコのせいで戻ってしまっていても何ら不思議ではないとも考えた。
「……嗜好品があるだろう。そん中に酒がないとも言い切れなくてな…何せ煙草があるもんだから…あってもおかしくないなって。」
中はしっかりは見ていない。自分はタバコを買うだけ買ってその後は自販機に見向きもしていないのだから。
「当羽は元気…れすから」
「大丈夫れすよぉ」
「あぅぅ…」
じっと見つめられるのに、弱かった。
手を繋いでシャワールームへ。
冷たい水は確かなようで、あなたが風邪ひかないようにと思いながら。
当たらないようにしながら、汚れを落とすのだろう。
袖口など念入りに洗おうとしたかもしれない。
よく拭ってもらうから。
そうしたら、個室に戻ることを提案するだろうか。
きっとあなたをタオルでわしゃわしゃ拭きながら。
「……」「あんた、一応アルコールは避けろよ…。」
「………」
あまり大丈夫ではなさそうな彼女を見て。放っておくにおけないな、なんて。お節介にも程がある。
「……コンテキスト様は……御言葉選びも、お声も、とても堂々となさっておりますからお話を聞くタイミングによっては、少し、人を選んでしまうのかもしれませんね。」
にこ……と笑っておこう。
「まるで立派な演説でも聞いているかのような気持ちになりますので……自由気ままな在り方をなさる方には少々、耳を傾け難いのかもしれません。」
「いや~でもこの仮説、穴がございまして!時間差で毒死するかもという懸念と、まだ毒死を見ていないだけって可能性もあります!
だからこその検証でございます!女性の甘噛様と男性の私めが、検体として証明するのです。
夜草様ごめんなさい!今は死なないけど毒にかかって死ぬかもです!ちゃぶ台をひっくり返します」
「お願いね、アン。疲れていたらいつでも言うのよ」
全てをあなたに任せているから、負担もそれだけ大きいだろうと。
じっと見つめて。手を取ればその場にいるものに手を振って、シャワー室の方へ。
「まあ、本当に均一化したいなら殺し合いなんか起こらないように工夫もするだろうし、資源供給は各々の袋まで直接したほうが明らかに効率は良いが…そこんとこDREAMはどう思ってんだろうな?」
資源が勝手に手元で湧くなら、向こうから勝手に増やすことも容易いだろうに。それをしない理由ってなんだろうね。なんて、火種を持ち込んで。
「もう少し話を単純に出来りゃ、聞く人間も増えるだろうがね…。」
プールに飛び込んでいた彼を見て、思わず立ち上がっていたが。
力が抜けたように、硬いタイルにへたり込んでいた。
「……。」
これからどうすればいい。
「ここまでが私めの練りに練った仮説にございます!納得していただけましたか?
故に私がプールで凍死することもないのですが、タイルに上がりますね!着衣で水を含み過ぎたので」
そそくさと縁に近寄って上がる。
「いや~、去って行く人を見て思ったのですが」
「…」
「はうわっ そうれした」
「シャワー、シャワー浴びに行きましょうねえ」
「当羽が洗いますので…」
指し示した方を見れば頷いた。
行きましょうか、と声をかける。
頷くなら、そのまま2人で、その方へ。
「……。」
ちら、と目を向ける御子の姿。
そもそも此処で貴方はなんの力もなかった、とも聞こえる話。
それはきっと、恐らく、尊いものと扱われてたものにとって。
「……なんとも、御気の毒な話でございます、ね。」
「…とりあえず話はわかったから。これ以上医者の仕事を増やさないでもらえるか…?」
くしゃみしてると言うことは、体も冷えているだろうし。
そろそろ上がってくれ、と言いたげ。