『食堂』
どちらかと言うと広めのキッチン。水浸しになった。
奥にはシステムキッチンとカウンターがある。ガスも水道も電気も通っていない。
カウンター奥に「箱」のついた扉があるが、曇り空の見える階段があるだけ。
『記録[
「あれおかしいですね、評判良かったのに」
わざとらしく戸惑ってみせる。
これに関しては、気に入られてた方のが変だ。
「新しい名付けですか……
……なんだか私も記憶喪失になったみたい」
「まあ、追々。名前より欲しいものが多くて、今は」
「やめて……おばさんを意識させないで……」
欲はないが、寄る年波は怖い。
「ゴミみたいなあだ名だね」
タンちゃんはややマスコットキャラの趣がある。
別に安直でも相手がいいならいいんだけど……
「だったら人につけてもらえよ名前ェ〜、募集でもしてさァ」
「お前らも歳をとったら体が痛み、小さい文字が見えない、
しみったれたおじさんやおばさんになるんだよ……今のうちに雨を楽しみな……」
雨音って素敵♪とか言える日も永遠じゃねェぞ
「改名」「私、ネーミングセンスないのですが……」
「昨日も探偵の方に『タンちゃん』という名を進呈しました」
どうにも安直になってしまうようであった。
ないと自称する割りには案を出すけども。
「そうですね、イベンドの方が……印象に残るだろうし」
「そしてまた歳を感じる物言いも……」
関節って痛むんだな、やっぱり。片頭痛しか知らない。
「まぁ心もとないねとは思うけどなァ」
所詮布だもんな。
あんまり人気のないとこは歩かない方がいいのカモ。
「改名でもしたら?縁起のいい名前に。
そしたら良い自体を引き寄せてくれるかも。」
人様の名前に気楽な物言いである。
「イベント事で降る方が雨人間感あるよなァなんか。」
「雨降ると膝と方が痛むンだよな……」
「どの反応が正しいかはまだ判別できませんね……」
何分、自己評価も巧いほうではないしな。
いやまあ、それはいいとして。
「ヨンコって名が結構縁起が悪いので、
ジンクスも曰くつきになってる可能性も否めませんね」
「本当に、大事な日にはいつも雨が降るんですから。
普段は雨女エピソードとか、あんまりないのに」
「え?なんか普通は反応違うの?」
若いやつはもっと気の利いた事言うのかもな……
まさか脳直で変なこと言ったりしないもんな……まともな人間は……
「ジンクスってやつかァ〜?別に持ってて安心するならいいケド」
「なんか大事とか引き寄せそうだろその曰くだと……」
「藍くんもいる」
「……みすぼらしい、ですか」
やっぱ成熟した男性だと反応が違うなあ。
「大事な日はいつも傘を持ち歩いてたもので、
これは……私の方の習性ですね」
「これだけ盗まれることもないだろうし、
置いていてもいい、のかも、確かに」
寝るやつに、停電に気をつけろよォ〜と手を振って。
「うわァ〜なんか……みずほらしくなったなァ〜」
服からカーテンへ。なかなかの左遷である。
まぁ薄汚れた服よりいいわな。
「傘くらいどっか置いときゃいいのに。使わねぇだろォ〜」
「ご飯はないはずなのに、
つい食堂には立ち寄ってしまう」
「……あるいみ習性ですね、人間の」
カーテンだったらしき白い布を纏って、
今日もまたのんびりと覗きに来る。
小さな傘も、変わらず傍らに抱えて。
「なれるかなぁ……おっきく」
なれなさそう。
「……えへへ、そうですね。
なんだかんだで良い人生を送っていました。
立派な夢だと言っていただき、ありがとうございます。
叶えるためにも、頑張って耐えないと……!」
「おっきくなれよ…こっから…」
ハタチって言ってたし大きくならないかもな。
まぁまだ原稿のげの字もないので、新刊を出せるかは未定である。
「いいじゃねぇか。つまり日常に戻りたいってことだろォ〜」
「ここに来て思い浮かぶのがそれってことは、元の人生がそれなりに満足できるもんだったってことじゃないの?」
「立派な夢だよ、それも」
「小さい、ですか……」
身長の話だと受け取ったのか、またしょも……とした顔になる。
「なるほど……新刊を出す、ということですか。
小説家、夢があっていいですね……!」
ほんの少しだけ目を輝かせて。
「私は帰ったらいつものようにお勤めを頑張って……それで息抜きに美味しいものを食べられたらそれでいいかなって。
我ながら地味ですね……」
苦笑いを浮かべる。
「まぁローラーメイドの嬢ちゃんは俺からすると……小さすぎるかな……」
いやらしい目で見るにはね……
背の話なのかなんなのか。
「あ〜帰ってしたいことかァ」
「そうだなァ……とりあえず帰るまでに原稿仕上げて出しに行きてぇなァ……」
久々の新刊だ。
>>6437
「は〜い、いってらっしゃい。力蓄えとかないとだしね」
ここだと完全に夜型になった方が良いのかな〜、とかぼんやりと。
自分が何かする気は全くなかった。
「偶然ですよ。偶然。
いやらしいとか言われたらそういう風に見ちゃいますからね」
「話題ですか? 話題……うーん?
帰ったらしたいこと、とか?」
絞り出した結果だった。
「え?他の奴には見せてたの?なに……おじさんの目はいやらしいからダメってこと……?」
そんな…………………………
「そんなしょもしょもすんなよォ〜、自分から話題持ってくるもんだろォ〜」
「……あ、たしかにおじさんには滑るところを見せてなかったですね」
「何の話もしていないですかぁ……」
しょもしょもとした表情になった。
「ローラーメイドがローラー使ってんの初めて見た……」
歩くところしか見た事なかった……
「なんの話ししてたの?なんの話しもしてないかも……」
「不満と股間で動く年頃ね、わかるわァ」
「陣はどうだろね、2日も経ったら仲いいヤツと一緒に居るってやつらも増えるだろうからなァ」
それでいいと思う。
陣なんて別に安全がどうとかじゃなく、寄る辺がない奴らが
集まって怪我とかしてもすぐ助けを求められるようにしましょうってのが大目的だ。
そしてそんな相互扶助なんて時間が経つ事に成り立たなくなるわけで。
成り立たなくなる前になんとかそれぞれの寄る辺を見つけて欲しいものである。
「ごきげんよう。今は何の話をしてました……?」
シャー、とローラーシューズで滑りながら入ってきたメイドが恭しくカーテシーでご挨拶。
>>6425
「……襲われないように願っておきます」
よろしくお願いします、とは言いづらく。
「ちょっとしばらく僕は部屋で休んでますね。勿論停電前には起きるので」