『食堂』
どちらかと言うと広めのキッチン。水浸しになった。
奥にはシステムキッチンとカウンターがある。ガスも水道も電気も通っていない。
カウンター奥に「箱」のついた扉があるが、曇り空の見える階段があるだけ。
『記録[
「ものすごく現実的な回答をしてしまった」
「いっそお刺身がいいな、当分食べられなさそうですし」
「停電中は……個室の電子錠も機能しなさそうだし、
寄り合っておくのが安心……なのかな。信頼できる人なら」
「私は気にかけておきます、周りのこと」
「ウッ………」
天ぷら…ステーキ……名前を聞いて胃を抑えた。
カレーうどんはセーフ。
「ファンタジ~みたいな奴らも多いし、人間って言ってる奴らも同じ世界から来たのかわかんないよなァ~」
「世界を回る……魔法、転移……大法螺吹きじゃないならマジに何でもありだね」
「あ、私はサンドイッチ系。たまごじゃ無ければなお良し」
「それに、そゆのあれば生きて帰った時に食べてやるってモチベとかになるかもじゃん?」
「ああ、失礼。
文字通り色んな世界を転移しているのです。
しがない神父ではございますが、
この本で世界を渡り歩いておりますので。
分かりやすく言えば異世界転移ですね」
「私は…暖かいシチューでも食べたいですね。
ここのは冷えたのしか出てこなさそうですが」
カーテシーだ!
礼儀作法は知らないので頭を何度もぺこぺこ。
「あ、」「見終わりました、けど……」
「物自体がほぼ見つからなかったです。水道も何も使えないし……」
「文字助かるな~、俺モニターの文字も殆ど見えないからね正直。
おかげで表示されてる名前もよく見えないんだよなァ~」
「料理も頼るよ……おじさんを労って善行を積んでくれ…」
敬われてるか?やや怪しい。
でも人の助けは全力で借りる気概はある。
「てか停電とかあるんだ。なんかその間に起こったりしそうじゃない?
みんなで集まってたほうがよさそうだなァ~……」
「ん、」「あ」「こんにちは、かな……」
「記録時間の停電と変換されるらしい食事の話、ですか?」
キッチンの隅からひょこ、と現れた。食堂探索少年。
お初の顔の人にも昨日見た顔の人にも頭を下げた。ぺこぺこ。
「交換ですね。覚えておきます……」
「ええ、本当に異世界だったりするんですか? 雨じゃなかったらせっかくだし思いっきり外に出たかったな……」
「そうですね、個性的」
「この期に及んで、私以外にも室内に傘を持ちこんでる方が、
二人ほどいたのはちょっと驚きでしたけど……」
くるり、危なくないように傘を回した。
「やっぱり敬われますね、年長って」
「ふむ、停電は起きてない、と。ありがとうございます」
「そこのおじさまはついうっかりで事故死しそうですね。
その時になったらお祈りの言葉でもかけましょうか」