『食堂』
どちらかと言うと広めのキッチン。水浸しになった。
奥にはシステムキッチンとカウンターがある。ガスも水道も電気も通っていない。
カウンター奥に「箱」のついた扉があるが、曇り空の見える階段があるだけ。
『記録[
「自分より年下のやつの死とか1番見たくないしなァ」
「恋愛ミステリーにするか……じゃあそこの白い嬢ちゃんが
事件を解決し、恋愛し、暴れる人から逃げるプロットにするからネ……」
「俺も死ぬ気ありませ〜ん。でも今腹張って死にそうなんだよなァ」
「未来のベストセラー作家へのカンパ、募集してるからなァ〜」
「ナイフ……」
「そういえばナイフを手に入れてる人、いましたね」
「持てば抑止力になるとは思いますけど、
選択肢が増えてしまうこと自体が危ないのもそうです」
「怪獣に地元を踏みつぶされると嬉しいように、
案外自分がモチーフのキャラが殺されたら嬉しいかもな……」
「はは、確かに。本の中なら何が起きててもだしね」
くつくつ笑っていれば……続く言葉に、浮かべた弧は緩やかな物へと。
「……ま、冗談冗談。モラルはあるに越した事なーし、と」
「リアルじゃなくても全然長生きさせてほしいけどね」
「間をとってミステリー恋愛小説にしましょう」
?
「作家さんの言うことは一理ありそうですね。
だからナイフを簡単に手に入れて欲しく無いんです。
事件が連続して起きるのは嬉しく無いので」
「そりゃならねぇ方がいいだろ」
メイドの発言にははっきりと。
火のついた煙草吹かしつつ。
「創作は創作だから面白いんだぞォ〜」
「俺ァ人が死ぬ話で飯食ってっけど、人が死んで飯食えるほど図太くねぇんだから」
「お前らマジ死ぬなよォ〜頼むから」
「此処にいる人達で小説家先生の作品を買ったら」
「小説家としてのランクはひとつ上がりそうですね」
「長生きさせてくださいね、お話でぐらいは」
「あまり不穏なこと言ってくれるなよ……」
呆れ気味に、はぁ、と息を吐き。
「まぁ実際、この状況自体がミステリー小説じみてるよな」
「……ミステリー小説だったら、良かったんだけどな」
「関心がない……か」
「ここに集めてきたことが大事で、
その後のことは知らんぷり……」
迎えが来る、とは言われてたけども。
いよいよもって何をしたいのかがさっぱりだ。
「暴れる人、なるべく出ないと嬉しいですけどね」
「今のところはみんな理知的な方々ばかりです、見かけは」
「意外と恋愛小説もいいよ派が多いな……
ああいうのってイケメンと女性作家だけの場所だと思ってた……」
「次新作は……まぁ……これから生まれるよ……これから……
そうそう、ここのこと題材に書こうと思うんだよなァ〜
お前ら絶対買えよ〜。今作こそベストセラーにするからなァ〜!」
俺に冷たいヤツとか出番減らしてやるからなァ〜
「……」
豊かじゃない人が攫って来てる。
そんな言葉に少し考えては、幾つかの資源を手慰むもの。
だったらコレが物資に代わる原理は一体?自販機みたいなものだと言われればそこまでだけど。
「……作家先生的にはそうなって欲しいのか、或いはならない方がいいのか、はてさて」
「きゃー!暴力だ暴力!暴力反対!」
言葉のナイフはいいのかと言ったらそんなことはない。
「ミステリー小説はわかるーてカンジ笑」
「ね!ここで経験したこと書いたらウケそう笑」
「私もいいと思う。恋愛小説書いてても。
ここでの体験、ミステリー小説で出したらヒットするんじゃない。
私だったら買うわ。面白そうだし」
「ケチってるというより関心がない気がする。
あれから後何も言って来ないし。話が胡散臭過ぎる」
「世間体が許すならこのギャル殴るんだけどな……」
「こういうのはなァ〜、大抵『不便な環境でストレスを与えながら集団生活をさせ、いずれ爆発して争いが生まれることが狙い』とかそういう設定なのよ」
「今は良くてもあと2,3日したら暴れるやつとか出るねこれじゃ」
「いいと思いますけど、誰が恋愛小説書いても……」
揶揄はされるかもしれないな、ここでは。
「人を集める癖して、維持費はケチっている。
あんまり豊かじゃない人が攫ってきてるのかな」
「飯もだし……色々道具とかも置いてあるんじゃないかと思ったんだけどな……」
「マジで何もない。本当にここで過ごさせる気があるのか……?」
皆考えることは同じなんだろうな、なんて同情も覚え。
見覚えのある顔も、視界の端に捉えつつ。
「俺が恋愛小説書いてたら、まぁまぁキモイだろ。許されないよ」
「ミステリーね書いてるのは。推理物とかね」
「陽の光でもあったらまだなんとかなったのになァ〜。こんな雨じゃね」
「そっか、電気がないと……レンジも使えませんね」
「火を起こすにしても無人島じゃあるまいし、
木片とかはなかなか落ちてるものでもないし」
冷水のシャワーといい、なかなか身体に優しくない。
「ええと、……こんばんはですかね、今の時間は」
「時計を見るのをつい忘れてしまいます」
「まてまて!味方0になるから!」
「っと、やっぱみんな飯探しに来るよなァ〜
わかるよ……おじさんもここに来て、絶望したから……」
見知らぬ顔と、ちょっと知ってる顔。
どっちも大したもんは見つかってなさそうだなァ〜