『食堂』
どちらかと言うと広めのキッチン。水浸しになった。
奥にはシステムキッチンとカウンターがある。ガスも水道も電気も通っていない。
カウンター奥に「箱」のついた扉があるが、曇り空の見える階段があるだけ。
『記録[
笑い合って、無事お友達が増えたところで。
「おやすみなさい」
「あなたも。眠れるといいね」
またね、と手を振って。
少女は自室、と言うほどでもない、どこかの個室へ歩いていくのだろう。
出来れば、生きて帰りたい。
だから、死にたくはないね、
『夜空ちゃん』
『うん。よろしくね』
へにゃ、と笑って頷いた。
お名前を知り合ってるって、なんだかいいね。
『おやすみなさい』
『いい夢見てね』
軽く手を振って、立ち去るなら見送ろうかな。
この人物ものんびりと自室へ帰るつもり。
「そうだね」って相槌打って。
どうやら死人もいるみたいだし。なるべくああなりたくはないな、とは。一応、思うわけで。
「ふふ。お揃い」
「モニターの名前だと、雨傘少女だけど。夜空って呼んでくれたらいいよ」
「よろしくね、マリーちゃん」
声に出さなくとも、名前を知っていれば、何かと便利ですからね。
「早めに寝ろって言われちゃったし、私もそろそろ休もうかな」
くるくる。傘を回して。
『そうかもしれない』
『どうにかなってほしいな、って思う』
『大丈夫だったら、それが一番だよね』
足りてない上にケガ人は増える一方。
嘆きの声を聞くことも珍しくない。
『ふふ、お揃いだ』
『嬉しいよね。構ってもらえるのはありがたくて』
『そう言えば、お姉さんのことは……なんて呼べばいい?』
ふと思いついて。
声に出して呼ぶことは少ないかもしれないけれど。
聞いてみたかっただけ、かも。
「気を紛らわせる手段どころか、何もかもが足りてないみたいだよね」
「あ、でも。あと三日って話なら、案外大丈夫だったりするのかな」
「私もおんなじ。ここじゃ、無視されることも少ないし」
「話しかけてもらえるのは、嬉しいことだよね」
『うん、さっきのメイドさん』
『良い人だった』
本当にお家みたいかもしれない。
自分はここに寄り付く事は少ないけれど、
その少ない中でも、色々してくれているみたいだし。
『楽しいね』
『不安も、怖いのも、紛れるし』
『ここじゃ娯楽も少ないもの』
『お話してくれる人は、好き』
「ああ、さっきの」
アットホームなメイドの。さすがのアットホーム力が垣間見える。
ここは掃除もきちんとされてるんだな。本当にお家みたい、と少女は思っている。ここで起きた惨事など、知りませんから。
「お話、楽しいよね。ずっと一人じゃ退屈だから」
くるり。思うところありげに、傘を回した。
ちゃんでも、くんでも、どちらでも。
本当は性別がないから、どちらでも扱われてもよかった。
『うん。お掃除、お手伝いしたら』
『紫のリボンの。メイドのお姉さんがくれたの』
『便利だし、お話、楽しい』
本当は、お喋りって怖くって。
喋れないじゃなくて、喋らないだったけど。
何かの報酬としてもらえたものも、
贈ってもらえた厚意も大事にしたかったから。
こうして、文字を描くことにした。
それとも、マリーくんだったかなあとか考えていたけれど、花丸をもらえたので合ってたみたいです。
「お話、できるようになったんだ。それ、便利そうだね」
スケッチブックのこと。確か、あの時は持ってなかったはずだから。
自分が気にしなくても、他人が気にする。
おじさんといい、少女にさまざまな自覚を芽生えさせてくれています。
わ〜〜。片手を振り返している。
「マリーちゃん、だっけ?」
自己紹介もなんか、していた気がするな。周りの大人に手伝われつつ。合ってるっけ。
自分を賭け金にしたりステルス義理の息子になったり。
今日はいかがわしいDayかもしれません。
こっそりならばれませんからね。
「自覚があってえらいなァ~マジで」
「ガキが死んでんの見たくないからネ…だからこれからも気をつけろよ」
「なんかあったらすぐお友達でも頼るようになァ~」
いるだろお友だちの一人二人。
ガキたちはお互い助け合って生きるように。
「…………」
「!!」
思い出した! そうだ!
扉を開けっぱなしのお姉さん!
とんでもないシーンを思い出してしまったな……。
閉めてくれて良かったです。あの時。
それはそれとして思い出せたので、
わ~~と両手を振った。ふりふり。
廊下で挨拶をしたかもしれません。そこまで思い出して、
「あっ」
「プールに居た子だ」
扉閉めなくて大丈夫かな、みたいな視線をくれていた気が、する!
間違いなくされるんだろうなぁ……。
目に浮かぶかもしれません。
ステルス義理の息子が必要なのかも。
多分、すれ違ったか何かはした、はず。
廊下とかで。ぺこりとした。
小さい子、見かけたことがあるような、ないような。
多分、顔見知りではあるはず。会釈を返した。顔見知りでなくとも、一礼された時点で変わりはないけど。
「廊下以外でも売ってないよ。ちゃんと自覚持たないとなって」
「お祈りまでしてくれるの? 至れり尽くせりだね」
焼いてもらえる世話、抗う必要もなし。ありがとう、とお礼を言っておきました。
義理の息子にしちゃおうかナ……
でもしました!とかいうとトゲガキがキモって言ってきたり
ソバカスの嬢ちゃんがうわぁ…って目で見てくるんだよな…
世間はおじさんに厳しいです。
かわいげ、維持していきたく思います。
周りのやさしい人達のおかげだね。
義理の息子になら立候補できるかも……。
『雨、早く止むといいね』
『眼鏡のお兄さん、今日水遊びしてくれて、ありがとう』
さっきまでプールにいたので。
思い出してのお礼も添えちゃう。
今日は楽しいことが多かった。
フードのガキはずっとかわいいな…
俺、こんな息子が欲しかったカモ……
「お~、よかったなァ。もう廊下で傘売ったりしてねェだろなァ~」
「雨が止むまで壊れないといいな。おじさんお祈りしちゃう」
直す手伝いしてやる約束。とは言え壊れないのが一番だろ。