『廊下』
薄暗く、色褪せた廊下。一切の破損はない。
絨毯は水にぬれ、だいなし。
中庭に面した壁は割れない窓になっている。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
『記録[
『バイタルサインに異常を検知。緊急プロトコルを起動します……』
ザザ、ザ……
ザザザザ……
『死者を確認、資源の追加生産を行います』
『……』
『資源供給システムに追加の不具合を確認しました』
『資源供給システムに五十件の不具合を感知。担当者は速やかに確認してください』
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
『資源供給システムの不具合を確認してください』
『こちらは自動放送です。』
ザザ、ザ……
『……おい、何かがおかしくないか?』
『計測中』
『はい……』
『……管理人室、というか』
『二階以上が、まるまるなくなっている』
ザザ、ザ……
『予報更新』
『次の[快晴]は推定約三十時間後です』
「え、えらすぎるー!笑」
「親孝行だねえ……笑」
「帰ったらおじさんの本探そと思ってたケド、んじゃそれ買うときは紙にしよカナ笑」
「……さって!チルタイムしゅーりょー!笑」
「そろそろ停電きそうだし、レイラちゃんも気を付けてね〜笑」
そう笑えば個室に戻っていくかな。
大きな体を丸めるようにして、ゆっくり、噛みしめるように食べ物を口にしている。
(……さっきのヒト……礼を言いそびれちまったな……)
(ここに来てひとっことも喋ってなかったから……いや、こんな場所で食べ物を恵んでもらえるとは思わなかったから……)
(名前は″リタ″、だったか……ロビーのモニターも役に立つもんだな)
(……オレみたいなのがわざわざ探しに行ったら怖がらせっちまうか……)
(……)
(ありがとう。ごちそうさま)
「自分で言うと自慢してるみたいになりそう。
養子で引き取って貰って…いっぱい勉強してた。」
「ふうん。電子書籍は場所も取らないし、軽いしいいよね。
でも紙の本はね。ぺらりってページを捲る時の音がいいんだよ。
私はそう思ってる。」
「おかあさま」
「もしかしてレイラちゃんってお嬢様だったりする?笑」
「や、本はガチ全然読まん笑」
「雑誌くらいかなー、ファッション誌!笑」
「それも電子だし、紙の本はもー全く笑」
「気付いて無いだけで意外と身近に居たりして。
すごく好きってわけじゃ無いけど、お母さまに沢山読むように言われているの。
ひざしお姉ちゃんはあんまり読まないの?」
「そっか。本の中に出て来る人みたいに命を懸けてひざしお姉ちゃんを守ってくれる。そんな人が現れるといいね。」
そのよっぽどの事が今まで無かっただけなのか、そうではないのか、少女には分からない。
「わからん笑 あんのかな?笑」
「よっぽどのことないとそゆかんじでみんなのこと薄っすら好き♡なんどよね笑」
「博愛主義ってゆーらしーよ笑」
それができなそーだから、イイコちゃんなんだよね。
「そんな照れ屋さんがいるなら出てきてほしー笑」
「アタシ?アタシはー、そだねー……」
「好き♡って気持ちはあんだけど多分恋じゃないと思うんだよね笑」
「なんか、なんだろ。ペットとか子供に感じるみたいな……愛情?笑」
「燃えるよーな恋愛って憧れるケド、できないんだよねーなんか笑」
「それはそうなんだけど…。」
ナイフで人を刺して資源を奪う事もそうなのだろうか。出来る気はしない。
「恥ずかしがって告白出来ないのかもだね。ひざしお姉ちゃんは誰かを好きになった事ってある?」
「えーそんだけで?笑」
「そしたらみんな悪いコなっちゃうよ笑」
「考えるくらいみんなするくない?笑」
「海とかお祭りのデートいーよねー!笑」
「水かけあってキャッキャしたーい笑」
「したコトないケド笑 てかちゃんと彼氏できたことな笑」
「え!笑 そっかその可能性も……笑」
「イイコのレイラちゃんに来てないならサンタさんじゃないもんね笑」
「アタシにも来たか……春……笑」
「え笑 なんかサンタさん来てたし!笑」
シャワーの後部屋に戻ったら食糧が置いてあった。
誰がくれたんだろうな、顔を見られなかったのが残念。
「……あれ」
朝の散歩の最中。不意に、資源袋が昨夜より少し重いことに気が付く。
誰がいつの間に、贈ってきたのだろうか?などと考えつつ、通り過ぎて行った。
・・・。
(……腹減ってても眠れるもんだな……)
(雨の音のおかげか……)
(後3日か……つーことはここに連れて来られてもう4日も経ったのか……)
(人を狂わせるにはこれまであった刺激を無くしてやるだけでいい、なんてどっかで聞いたな……)
(そう考えると、うるっせえ自動音声にも意味があるか……いや、)
(そうでなくたって、この降り続く雨の音があれば、オレは………)
…いつの間にか眠ってしまったようだ。
むくりと起き上がって目を擦る。
「朝……なのかな……」
窓の外の様子からは時間が伺い知れない。