『廊下』
薄暗く、色褪せた廊下。一切の破損はない。
絨毯は水にぬれ、だいなし。
中庭に面した壁は割れない窓になっている。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
『記録[
「理由はない、か」
「もしそうなら……」
「もうちょっとは、怒れるかもしれない」
気持ちを、ひとつひとつ思い出していく。
そうして、生を望めるときまで。
「こういうのってドラマだと。」
「理由なんてないんだよ。」
「って言うんだよね。私、知ってる。」
「雨が何かは分からないけど、危ない雨なのかな…。」
ただの雨なのかもしれない。分からない。
「完全にほっとかれてるよりかはいいですけどね……」
「潜水艦とか宇宙船でもないし」
そういうのだったら、今以上に絶望的だっただろうな。
「天気予報も……あんまり信用できないな」
「急に縮まって」
「棚に入る資源も減ってますよね。初日は3000くらいあったのに」
「プロトコルってのも良く分かりません」
「直らないもんをガチャガチャする暇があるなら暮らしを快適にして欲しいんすけどね……」
「不具合は増える一方……」
「資源供給システムが3件、だったっけ」
何が前日から変わっていたのかも分からない。
ただ、不具合がある事だけが音声で伝えられるのは不安を煽るに十分だ。
自動音声も途切れ途切れですしね。
何だか、絶海の孤島って感じです。
「うーん」
「そもそも何が壊れてるんすかね」
で、ここってなんなんでしょうね。
何を直そうとしていて、何が直らないのか。
さっぱり分かりませんね。
「でも……」
「スピーカー、ほんの一瞬だけね」
「直らねえじゃねえかって言ってた気がする」
形式ばったアナウンスに、僅かに紛れ込んだ声。
確証はない。正しく覚えてる自信もないけど。
「助けようとしてる人がいるのかな……」
「あまり期待してもよくないんですけどね」
「……そこまではいってない×2」
まあ、延長線ではそういうことなんだけど。
「本当に、むしろ外から誰か怒りに来るなら」
「それはそれでいいのに」
「他の物を使って怒られてないんだから、怒られる筋合いもないよね」
そんな人がいたら、ムム……となってしまいそうだ。
流石に。
「用意してない、通信機の向こうの人たちが悪い……」
「建物に八つ当たりするのは、いっか」
人間と同じ感性じゃないかもだしな。
いーよいーよって言ってるかも。
「この程度で怒る人も、多分いないでしょうし」
「人間は限界なのに、建物は限界じゃないのはズルでしょう」
すっかり刃こぼれたナイフをしまい込み。
重ねた絨毯スクエアをぽんぽん叩きました。
うーん、埃ですね……
「これはこれでなんか……なんかだなあ」
見窄らしくなってしまって。
一枚を傘と一緒に持ちながら少し侘び寂びを感じる。
「限界って感じがします」
「………………」
あぁ、そっか。床で寝てるなら身体も痛むよなぁ……。
ひとつ頷いて、枕用以外に二枚持って行こう。
ないよりはきっとマシ。
『ありがとう』
お礼を描いて、一礼をして。
そのままプールへと向かう。
洗って乾かしに行くつもりだ。