『廊下』
薄暗く、色褪せた廊下。一切の破損はない。
絨毯は水にぬれ、だいなし。
中庭に面した壁は割れない窓になっている。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
『記録[
「煙草吸ってみようかな……」
窓の外を見ながら、折角なんで。
犯罪、やってみようかなって。
まあ人を刺すのが犯罪と言われたらもうそれまでなんですけどね。
どうせ全部終わりなので、依存も心配いりません。
こんな短時間では肺も真っ黒になりません。
つまり、完璧です。
何なら麻薬とかもあれば買ってたと思います。
だってもう何もする事ないですから。
でもなあ、集めてももう何にもなりませんし。
お風呂はやっちゃったみたいだし。
つまり
「もう何もないなー」
もう何にもやる事無いんですよね。
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
ロビー、プール、食堂、バンケット、中庭……と、廊下を端から端まで行き来して、軽く見て回る。
「静かだねえ~~~……。
パーティは中止、資源の価値も無くなりゃあ煽るようなバトルもやり甲斐はなし。
ンまあ、最後のお楽しみは残ってるワケだが。」
「今は……また静かになる瞬間でも、見に行くかあ~」
中庭側へ進む。
「……悲しいねぇ……。
なんとも報われない物語だ。」
黒が滲んだ左胸に手をやりながら、呟く。
「今からでも天使が戻ってくりゃいいのになあ~……」
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
まゆこはおわった
「わ、たし……あなたに、あえて」
もはや喉の奥からは、風を切るような音しか聞こえない。
「幸せ……」
雨音にかき消されて、崩れ落ちて、灯火は落ちる。
あいしてる……わ。アン……。
「アン……」
誤魔化して、這いずって、終わりを拒んできたけれど。
とうとう終の時は避け得ぬようで。
約束は果たされなかったけど。
温もりは、思い出は側に。
「アン……わ、たし、まってる、から……」
灰の翼を両手で包んで口付ける。
ここで果てれば、だいすきなあなたが、私を見つけてくれるはず。
魂となって果てしない時を彷徨おう。→
『落下』の条件探りのため、猫は歩き回っています
そのついでで、まゆこさんの方を見に来ました。
……もう、長くなさそうですね
それだけ確認して、またどこかへと歩いていって。
「……少し疲れたな」
今日は休もう。
また明日、頑張って。
その次の日も、生きてたら続けて。
何も起きないだろう。
それでもいい。明日は偶然うまく行くかもしれない。
限界が来たら、その時はトランプでも使って遊んでいよう。
最期の時まで。
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
『次の[快晴]は計測不能です。』
同じ放送が繰り返されている。
『次の[快晴]は計測不能です。』
同じ放送が繰り返されている
「またね。」
そういえばブランシュお姉ちゃんと、天音お姉ちゃんにはもう会えないのかな。
お湯渡してあげたかったけど、仕方ないね。もうちょっと廊下に来ればよかったな。
「…………。」
ててて…と駆けてこの場を後にした。
「ありがとう……」
言葉を返すので精一杯。
ぐるぐると意味がリフレインして。
会いたい気持ちでいっぱいになる。
この気持ちや苦しみに潰れて終わるのかしら。
後は少しでも縋って、生きるだけ。
「教えてくれて有難う。そんな状況だったら移動しようとはしないよね。
なら、やっぱり移動しようとして落ちたんじゃなさそう。」
「食堂で落ちた人も、食堂に来て『~だね』って感想漏らして直ぐに落ちたから
その状況で直ぐに移動しようとした可能性は低そう。」
「何がトリガーになるんだろうね…。」
何かはあるんだろうけど。
「私の推理はここまで。もし何か分かるかしたらまた来るかも。」