『廊下』
薄暗く、色褪せた廊下。一切の破損はない。
絨毯は水にぬれ、だいなし。
中庭に面した壁は割れない窓になっている。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
『記録[
「あーあーあー」
「つゆちゃんイジメはやめてください。可哀想でしょ」
可哀想って言うのも可哀想では?
とにかく、つゆと玲衣の間にまあまあって割って入る。
まともな人間の気が触れたら困りますからね。
「あと夜はみんなに無情ですから。玲衣くんも気にしないでくださいね」
>>1502
「村から…お屋敷から…」
「あぅぅ…人間としては不健全なことですけれど…」
「ああでも…一昔前ならそのようなことも普通に横行も…」
あまり古いことは思い出せないが、思い出せば言葉を紡いだ。
それならどこも…どこも新鮮なことでしょうと続けた。
「大変でもやりとげなければ」
「やれる事は少ないれすけど、やれる事は何でもやりましゅかりゃ」
口元を見る。
「名前…天使でもいいれす」
「当羽は天使番号208番。通称は……あんぱんと…」
目を逸らしながら。
目前の肩に徐ろに手を添えたりと、女は兎角馴れ馴れしい。
刺繍の施された手袋に薄手の雨合羽が擦れてがさついた。
零れる言葉にうんうん頷いて、機嫌良さそに相槌を叩く。
「それってお前が誰とも反りが合わないから?」
「一緒になって繋がったような気になれるから?」
「夜の暗がりはお前の事なんてどうでもいいのにね」
ここでお友達が出来て良かったねえ、なんて。
「あれ」
「そういうことに、なるのか…」
女の子らしい名前を考えてたら、そうなっただけなんだけど。
なんだか恥ずかしくなってきた。
気持ち小さくなっています。
「あれ、好きなものの名前を付けてくれたの」
「それって、私を呼ぶたび好きなもののことを思い出すってことだよね」
「なんだかロマンチックかも」
遅れて思い至った。恥ずかしがる様子なんかもないから、激情家への道のりは遠いな。
「天使と繭じゃないすか。仲良しになったんすか?」
「まあガキ同士お似合いかもしれませんね……」
ガキにガキの介護を?化け物同士なのでお似合いです。
「悪いねえ人間クン。天使に喧嘩を吹っ掛けられちゃって……。
全く神の下僕ってヤツは好戦的で溜まったもんじゃない!」
「マ、オレは他の所も見て回っていくさ~。バーイ、人間クンパ……」
「演技力にはあんまり自信がないから、それなら嵐は荷が重いね」
「忘れちゃうことはないと思うよ。だけど、名前らしい名前で呼ばれることは、そんなにないから」
「雨が降ったら星は見えないし、夜空も悪くないんじゃないかな」
話し相手が固まっていくなら、少女も数歩距離を詰めよう。喧嘩に巻き込まれるのはちょっとね。
「ご迷惑と謝罪を勝手にする方が決めつけれすぅ゛…!!」
言葉は弱い。
「あぅぅ」
「喧嘩ではない、はずれすけど…?」
喧嘩になるのか、人間に言われればそんな気もしてきた。
人間の声にすぐ耳を傾けがちだった。
「……大した理由はないよ」
背後に回った女の方を見ないまま。
息をついて、口を開いて。
「……自分の姿と周りが溶けて、一つになるみたいで」
「だから、好きだったんだ」
それだけ。
人に語るような話でもない。ポエミィかは、わかんないけどね。
>>1468
「多分、そうよ。生まれた村、お屋敷から外に出たことがないから、実感はないけれど」
そんな様子ですので、どんな場所に連れていかれても驚いたことでしょう。
「ありがとう。こんな身体だから、守るのも大変でしょうけれど」
泣き顔でもどこか心強さを感じて口元をゆるめた。
「てんし、様もそれがお名前でいいのかしら」
「喧嘩するならよそでやってね~」
喧嘩は別に咎めないので、好きにやっていただきたい。
あすこにある中庭をコロッセオに見立てるのは如何か。
野次を飛ばすのなら得意だから。
連れに寄った方に寄ってった。でもって背後に隠れる訳である。
お前達って男なんだし女を守らなきゃいけないね。
仮に男じゃなくても手弱女は庇ってやらないと!
「薄汚くてとっ散らかった夜空が好きなんて」
「何か、ポエミィな理由でもあるの?」
逐一嫌味な口を利く。小馬鹿にした様な態度を取る。
「オレは追っかけるのは時によるがあんまり好きじゃあないんだよ~。よって事実無根!」
「全く。天使っていうのは決めつけでモノを言うからいけないねぇ~~~。
どーもすみません人間クン達!天使がご迷惑をお掛けしている為、悪魔が代わりに謝罪致します。」
天使と悪魔と、あの子は繭から出てきたんだっけ。
陣営バトル(?)の勝負はまだついていなかったのだろうか。たった七日で決着はつくのだろうか。
ちょっとわくわくした表情で眺めている。
>>1442
「畳……床張り…」
「あ。畳なら……日本にお家があったり…しますかぁ?」
深呼吸した。涙は飲んだ。
畳という言葉から引っ張り出した知識を口にした。
物珍しいのは…そうでしょう。あり得ない環境れすからぁ…とすぐにベソをかく顔に戻るが。
「お怪我しないよう、当羽がお守りいたします」
「もう2度と転ばせたりいたしましぇんから」
「巫女様も繭様もお名前…の響きには聞こえませんけど……」
「じゃあ、繭様で…」
寄りかかられたら支えた。足元に力を入れて。
「ロビーにいた天使と悪魔だ…」
なんか言い合ってるな……
ささ、と連れの方に寄った。人間パーティの守りを固める。
「…困らないなら、そう呼ぼうかな…?」
「夜空、落ち着くんだよね…」
「夜空は駄目だよ。あれって結構青いんだから」
「覚えてられるかって、そんなにお前の頭ちいぽけなの?」
何か、途端に騒々しくなったような。
酷く気儘なもので、特段取り合わずに話題を続けた。
「す ストーキングしてません…!!」
「ストーキングが十八番なのは悪魔れすぅ゛!!!」
びーっ!と指を指した。
べそかいてるから全く格好はつかない。
耳にこだまする激しい物音に、僅かに眉を顰める。
然程聞いてもない理由を律儀に答える辺り、
多少は意思疎通が出来るんだなあ、とか。
女は間抜けた感想を抱いた。
「嵐を名乗るならさ、ほら」
「もっと激情家をやらないと」
「怒鳴り散らかしたり、べそべそと泣き喚いたり」
だから、黒。
二文字のとことか特にお気に入り。
音の響きが可愛いでしょ。
「畳も板張りの床もなくて、変わった場所よね。
何を見たって物珍しくていいわ。何も知らないだけに怪我をしなければいいけれど。
名前、しいて言えば繭玉の巫女。巫女様や繭様と呼ばれれば、私のことだって分かるわ」
時々ふらついて天使へよりかかったり。
「わあ、また名前が増えた」
「いっぱいあって困ることもないけど、覚えられるかな」
「それとも、覚えるまで呼んでくれる?」
このままだと、関係ない呼びかけにも反応しちゃいそう。それでも少女は困らないのだけど。相手の方が困るかなって。
「ウワ!天使がついてきた!助けて~~~ストーキングされてま~~~す!!!!」
実際にはこれが後から追い抜いていった形ではある。