Void
なにもない
『記録[
「多分直ぐに消えちゃうし……」
「やっぱり暴力?」
パンチのポーズをしました。
叩けば何とかなる…のか?
相変わらずよく泣く天使だ。
飛べなかったのは残念だけど、それでも歩く。
希望を信じて……
「落としてしまいましゅぅ゛…」
べそをかき。
歩き続けるのみですよぉ、と続けた。
泣くのはいつでもできるから。
涙はすぐに止まる。
残していける生き物だから、人間は。
体が溶けても魂が残る。
そうで無くても足跡が残る。
遺して、生きる。
そういうことができる。
「ですねえ…」
「…」
「ゆらぎに何をしましょうか」
「声をかけるのか…」
「…暴力か……」
まあ、時間はたっぷりとある。
試すだけなら、いくらでも試せるだろう。
次があるのか、なんて考えなかった。→
天使の言葉に深く頷いて。
この溶ける体、無くなった後に残るもの。
それがあれば、進める。
さて、停電の時間は過ぎたが……何も無い。
気付いては無いけど。
「やっぱり…可能性ありそう。」
「タイミングを見て、揺らぎに、こう、何かすれば…!」
可能性はあった、かもしれない……
「空……ですか?」
「抱えて…」
「……」
「あぅ…」
叶えてあげたいのだけど。
「ぜったいおとしでしまいましゅぅ゛う゛……!!」
飛ぶのが下手。
あなたを奈落に落とすわけには行かなかった。
「停電の……」
「…….!」
「当羽は…確実なことが言えませんが」
「当羽が落ちてから…だいぶ時間が経って織様は落ちてこられました」
「ただ…どうでしょう。1日は経過していなかったはず」
「その可能性は無鋳物ではないと考えます」
「…」
ゆらぎからの時間経過。
息を呑む。有る可能性と考えた。
どの世界の宗教も似通った形をしているのですね、と瞬きをして。
「はい。忘れてしまいます」
「…」
「身体は器にすぎません」
「解けたところで、眠っている魂が大切なものですから」
「きっと後悔しない」
「…そうあることを祈ります」
瞼を下ろし。開いた。
「一応…なんとなくは見えていましたけどぉ…」
「…すぐになにもないになってしまいましたね」
影すらない。
状況には首を縦に振った。→
「……やっぱりさ、こんな状況だけど、取り敢えず空飛んでみたいよね。」
「アンさん、私抱えて飛べたりは…?」
全人類の夢かもしれない……
無茶なお願いをしてみる。
「あっ、アンさんも見えてた?
やっぱり何かあったよね……」
あれが手がかりになればいいけど、今は影も形もない。
「落ちた時の状況も…バンケットと食堂の違いはあるけど、大体一緒かな?」
「……後は、あの揺らぎ?のあったタイミングって、もしかして『停電』と同じだったりしないかな?」
一応真面目に考えている。いるけど。
広げられた翼を見る。
「生前の行い……前に書物で読んだ気がします。」
天使が出てくるような物ではなく、彼女の世界の宗教の物だけど。
同じ様に、生前の行いを見られて、次の行き先を決められていたはず。
「つまり、忘れちゃうって事だよね。」
「……大丈夫、もうこの心に刻んだよ。」
「体が溶けたって、きっと。
今みたいな後悔をしない選択をする。」
気持ちの問題だけど、きっと。
天使の祈りもあれば、その願いは叶うような気もする。
苦難の道でも、あるか分からない次は、自分自身の価値を見付けて歩ん
「まずは共通項から」
「資源は…0でした」
「繭様を近くに置いて…皆様とお話しして…」
おしまいを捨て去った。
「…」
「上です…かぁ…?」
パサ、と翼は一応広げてみよう。
首は上るが、上はあるのか。
…飛んでみてもいいですけど、と。
選び取ったものはきっと。
──快晴の青空のように、美しい。
いい顔と言われれば、あぅ、と目をつぶって。はなした。
「先ほど…はいぃ。揺らいで…いた気が致します」
「当羽は….バンケットに。少し視線を逸らしたら」
落ちていた。
条件は…仮定として考えてみましょうか、と。
思案するよう唇に指を添える。→
「魂は生まれ直す前に主の手により漂白されてしまいますが…」
「…」
「…それでも、今の言葉刻み込んでいてください」
「心に。心臓に。魂に」
「…当羽はお祈りしかできませんけれど…」
──手を組む。
こうしたところで、何の意味もない。
「──きっと、あなたが次は」
「不自由なき不自由の日常に包まないよう」
「後悔なきよう自由な旅路を」
──生は苦痛の連続である。後悔の波は避ける。しどと涙は雨のように。
それが本来のあり方。
だから、命には“価値と意味”がある
「次があるからは生前の行い次第ですけど……」
死後の世界あります。次も裁定よければあります。
天使が目の前にいる。1番よく知っている。
「次さえあれば…あとは自由です」
「主はあくまで裁定を下すのみですから…」
生まれ落ちる場所はランダムだ。
前の人生が、良かろうと、悪かろうと。
「そのあとは…生まれたその場所とあなた自身があるだけ」→
「……確か、落ちた時…私も、アンさんも…資源を持ってなかったよね?」
「後は普通に会話してて、予兆は無かったし……」
ブツブツと聞こえる大きさの独り言。
色々と頭を使っている……
おわる選択肢は無い。
「落ちたんだから、やっぱり上に飛んでみる?」
でも、あんまり良い案は浮かばなかった。
「うん、いい顔。」
だけど…まあ、気合いだけしか無いのだが。お互い。
「さっき一瞬何か見えた気がしたんだけどなぁ……」
歩いても歩いても、虚無しか無い。
きっと同じ所に落ちてきた天使が居なかったらヤバかったなと思う。
「…そう言えば、私、私たち、何で落ちちゃったんだろう?
あの時は食堂に居たし…」
目の前の天使は、バンケットで落ちたと聞いた。
「落ちる条件とか、戻る条件がある?」
少し知恵を働かせる事にした。
「うん、苦しい…けど。」
「もしも、"次"があったら。
生まれ変わりとか、死後の世界とかあったら。」
「私は、"自由"の道を選びたい。」
「どんなに不便で、辛くて、大変でも。」
きっと、選んだ先の未来も、幸せばかりではない。
落ちて来る前、「生きる為なら何でもする」と言った、痩せた少女を見た。
きっと、自分とは正反対の道を進み生きて来た、合羽を着た少女。
強い彼女と同じ様に、生きてみたいと思った。
でも、でも。
あの子と一緒にいること、選んでいる。
あの子が許してくれた。苦いのを吐き出させてくれた。
あの子が私を望んでくれた。
短い命でも、最後までそばにいてって。
選択には責任が伴う。
落ちたまま足掻かず天井を見上げる無責任なこと。
──ダメだ、戻らないと。
「…ええ」
「こんな何もないところで終わらせない」
「這い上がりましょう、2人で」
「何としても」
と言っても何をすればはわ
「…」
「苦しいことに違いありません」
「…ですから、次の選択で同じ味の後悔を選びとらないよう」
「当羽もお手伝いいたしますから」
──こんなところ。
…
1人だったら、このまま彷徨い続けていいなんて思っていた。
人が落ちてきたら、繭の子のことを託して、引き上げて見送ろうと思っていた。
それくらいこの場所は自分にお似合いだった。
それくらい。→
それを選んだというのなら。
確かにあなたの後悔になる。
…
人間が羨ましかった。
“選択”ができる生き物だから。
足掻いても星の機構の一部でしかない自分と違って。
だから、プールでのあなたをどこか白けた目で見ていた。
逃げられない。解けない。関係ないでしょう。
…
慟哭は当然のものだったな。
→
何にもないの中で涙を生み出している。
鼻水啜ってずるずると。
不安を煽りそうなものだが、まあ情けない姿。
よく見る姿だったことだろうから、逆に安心を与えたのかもしれない。
「うん…」
「何か…目的があったとしても」
「その年まで育てられたことを否定いたしません」
「…」
あなたの後悔をしかと受け止める。
…
選ばされたのだと思った。
けれどあなたは“選んだ”と言ったから。
紛れもなくその時覚悟したのだろう。→
「"選んだ"から。」
「ああ、だから…私の唯一の後悔だから、こんなにも苦しかったのかな。」
いつの日か覚悟した、『美しい墨となり溶ける事』
小娘一人じゃ逃げられない事や、呪いを解く方法が分からない事は関係ない。
それを選んだのは、紛れもない自分の意思だった。
「だから、やっぱり、こんな何も無い所で終われない。」
「アンさんも、戻らなきゃ。」
その為に……どうにか脱出の方法を探さないと。
相変わらず天使は泣き虫だった。
今はちょっと面白いなと、虚無の中では良いスパイスかもしれない。
「自由無くとも…言い得て妙ですね。」
「うん、私も……村の人達が、全部悪いんだとは思ってなくて。」
大概の物は与えてくれたし、危険な事でなければやらせて貰えた。
下心、とは言わないが、内側で考えている事はあったろうけども。
色々与えて貰ってきたのは事実。
「…あは、耳が痛いな。」
「1個だけ後悔はあったの。
私はずっと、このままで良いって。墨になる定めだって我慢するのを"
情けない言葉で締めくくってから。
「足りませぇん…」
しょぼくれた。
主が産める天使の数にも限りがありますから…と話して。
「はいぃ。…戻りませんと戒め…怒られますので」
「…」
繭の子の名前を聞けば、胸元で手を握った。
「…繭様…」
無理して倒れる。人がいないと歩けないあの子だ。
こんなところに落っこちた。約束守れなかった。
罪悪感が、ボロボロ溢れた。
「巫女として…繭様のように…大切にされてきたのであれば、あなたも…自由なくとも事足りるよう不自由に育てられたのだと推測します」
「…それが悪いこととは言えませんが…」
「…後悔は生まれないものだと思います」
「選び取るからこそ、後悔が生まれますから」
「自分の手でしたことがあるから、後悔が生まれるんですよぉ」
それは他者には与えられないもの。
自分の内側で生まれるもの。
大切にしてくださいねえと説法解くみたいにして。
「<s1>偉そうなこといってたらごめんなさぁい〜…
「あぅ」
ごもっともなこと。
泣き声上げれど、否定する気持ちもない。
雛鳥みたいに泣く泣き虫だった。
ちゃんと…したことも…一応言えますよぉ…とは目線を逸らしながらしどろもどろ。
まあ、自信がないから。
あなたに配慮がないとは全く思わない。
もっと酷い悪言葉は言われ慣れている。
「似たような日常を繰り返していれば比較ができません」
「…」→
「天使が足らないとかあるんだ…」
何かと世界の在り方も違うから、だと思うけど。
天使が足りないって聞いて、大変だなと。
「じゃあ……貴方も、戻らないとね。」
「元の場所……あ、その前にまゆこさんの所に。」
「早く戻らないと、無理して倒れちゃうかも。」
「…泣いてないと、ちゃんと天使様みたいですね。」
天使見たことはないけど。
割と失礼な感想。他人への配慮とかが、反動で消え失せている。
雛鳥みたいに泣く、泣き虫のイメージしか無かった物で。
「でも、うん。」
「思えば、私後悔とかあんまりして来なかった。」
「ずっと昨日と同じ明日を、御子としての生活をするだけだったから。」
だから、急にレールから外れて、訳が分からなくなってた。
溶けていく自分が怖くて、どう生きるかなんて考えられなかった。