商業通路(東)
改札外東側。
主にジュースやパンなど、持ち帰りの飲食店が多い。
営業時間外の為、殆どのお店は閉まっている。
「……一先ず様子見ってワケ?」
「悪いけど俺は喰われる気は無ぇよ」
弟とあの子のためにも無事に帰るって決めたんだ。負けるものか。
「喰えるもんなら喰ってみやがれってんだ」
自分にしか見えてないであろうそう吐き捨てつつ、他の場所を見回りに行くだろう。
「ああ。なるほど、なるほどね。そう来たか……」
皆が言っていた蜘蛛や排水溝に詰まった髪をやっと見つけた事に逆に感動を覚えたのも束の間。
視える。自分に向かい歯をむき出しにし大きく開いた口が。
しかし、口を開けているだけでまだこちらへ向かってきたり危害を加えてくる様子は無い。
周りが帰っていくのを見て
自分もこの場を去っていっただろうか。
※寝落ちです…!
実際はほぼ同じタイミングで
帰ったと思ってください
「だっりー、意味わかんねー」
「つかマジでクソめんどくせー」
やめときゃ良かったな、ここに来るの。
そう思わない瞬間はない。
……あの時ちゃんと謝れていれば。
自分はここにはいなかったのかな。
「……。」
舌打ちを零して宿舎の方へ足を向ける。
めんどくさい、だるい、やりたくない。
それでも、続けるしかないのであれば。
「上手くやるしか、ねーんだよ、ボケが……」
明日も仕事はある。
だから戻ったら昼過ぎまで寝こけよう。
いつも通りに、
二人分の影がこちらへ戻ってこない事を見送れば、
長い長いため息を吐いて軽く自身の髪を掻き乱した。
「あー……マジでめんどくせえなんだこのバイト?」
「なんで俺みてーなのが、マトモ側なんだよ……?」
まともかどうかは、わからないが。
少なくとも正常の側には立てている。
幻覚も幻聴もない。闇に惹かれもしない。
未だ正常の側に縋れて、いる。
「でしょうね。アタシも自分で言っててそう思う。」
それでも言っちゃうタイプだからこうなるんだろうね。
「それじゃお先に失礼します。
ご迷惑をお掛けしました……」
そう言って、敷島さんと手を繋いだまま帰路につこうとするだろうか。
「投げ飛ばされるのもソレはソレで別の恐怖があるな……
まあそん時はお願いします。受け身は取れるんで多分。」
柔道ほど受け身をとる機会は多くなくとも、基本的な動作は完全に身に染み付いているので。
どうせその時になったら無意識にできるだろう、というある種の自信、あるいは過信だ。
→
「マジで言われるまでもねーわ」
そういうところが持ってかれる要因の一つかもな。
そこの問題しかなさそうな二人は、
明らかにそういうタイプだもんな。
「俺は自力で問題ねーからさっさと戻って大人しくしろよ」
「業務外で気にかけることがある……
なんてマジやってらんねーんだからな」
はいはい、じゃあ帰った帰った。
ヒラヒラ気怠げに手を振って見送ろう。
「そうそう…だから振るうのは最終手段くらいで丁度いいんだわ」
武術とはそういうものだ
「その時は背負い投げでも転ばしでも何でもするから安心しな?」
手を掴んでる時点でそれなりに対処は出来るだろうし
見た目は何か誤解されそうだが緊急時なのでね
「んじゃ帰りますか
皆、お疲れさん」
色々お騒がせしましたと告げて彼女と一緒に帰ろうね
「うーん、相互監視。
ステキな響きだなあチクショウ。
まあそれが現状では一番良い選択……なんですかねえ……どうだろう……」
バイト3日目にして、何とも奇妙な関係が生まれてしまった。
「アラシさんもありがとうございます、気を付けてくださいよ。
アタシに言われるまでもないでしょうけど。」
「コトバだけじゃどうにもならないコトだってありますからねえ。
今回みたいなのとか。」
ある意味好例かもね。
「……はい、そっすねえ。もういい時間ですし。
……すんません、正直に言うと。
帰った後は飯を食うから良いとして、それまでの道程でまたヘンなことにならない自信が無いんで。
シバく用意はしといて下さい。」
差し伸べられた手を取ろう。
年の離れた男女で手を繋ぐことに、思う所が全くない訳では無いが。
まあ緊急時だし。
「相互監視…しかないかぁ………」
何でお互いがお互いを心配して我が身オシマイになった挙句に相互監視という
大変奇妙な事になっております
駄目じゃねえか
「ダメじゃねえか」
暗闇の方見てるんですけどこの人。
「敷島サンと香里ちゃん一緒に宿舎まで戻れマジで」
「お互いで監視しろってもう」
戻ってこないよう自分はここで見送ってからにするから。
「戻ってきたやつは俺がぶん殴るから」
まっすぐ帰るように。
「………はい、暗闇の中に行かせる気はないからね」
帰り道の暗闇を見ている御手洗氏に手を差し伸べる
もう片方の手には点灯した懐中電灯を
暗闇の中に行かせたら不味いのが分かれば阻止はできる
「そういえば。そろそろ帰りのことも考えないとなあ……」
敷島さんに続いて立ち上がり、帰り道の暗闇をちらりと見る。
ああ戻りたい。吸い込まれそうだ。
「……………………」
大丈夫じゃないかも。
「否定出来ないんかい…まあ、必要なら仕方ない場合もあるよね
やらないに越した事はないのはそうだよ」
やらなくて済むならやらないほうがいいのだと
「衝動や感覚の制御、お互いに頑張るしかないねぇ…
…そろそろ戻る?一緒に」
「幻覚や幻聴ばっかりは他人じゃ止めらんねーからな」
こっちはそう言った類のもの、見ても聞いてもいないから。
「……んじゃそろそろ解散ってかんじ?」
「まー誰でもいいから色んな奴と駄弁っとけよー
どーせヒトリで解決できるもんでもねーんだし」
兎も角食事と睡眠と会話は必須だろう。
一旦お開きにしてさっさと寝かしてやろう。
「まあ交渉の手段や必要に駆られての暴力に抵抗は無い、というのは、まあ。
否定できないんですけど……」
目を逸らす。
「まあ良い気分はしませんし。
やらないに越したコトはありませんよ。ね?」
誤魔化しに入ったかも。
「まあアタマで分かってんなら良いんですけどね。
……ソレができたら苦労しない、ってのは。アタシにも分かるし。」
衝動の内容こそ違えど。
似たような感覚を覚えているが故に。
「実際、そういうのに抵抗ない方でしょ〜…御手洗ちゃん
おじさんは抵抗や後悔しちゃいそうだから柔道選んだし」
殴る蹴るより押さえ込んで止めたいという
此れなら傷付けずに済むし…と
「…気を付けるよ…従ったら不味そうなのは…理解るし…」
聞き流すように努めて行くしかないと深い息を吐きながら立ち上がる
余り長居しても悪化しそうだな、此処だと
「しっかりしろよなー、敷島サン」
「さっきはガキもオトナも関係ねーとか言ったけど……
普通に頼れるカッコいー大人は見せてもらいてーもんだし?」
はい、だからがんばってねーと雑な応援。
「駄弁りながら声をうまい具合に無視できるようになれよー」
「どーせ明日も明後日も俺はここでタバコ休憩してんだしさあ」
どっか行ったりせずちゃんと顔出せよな、ということだ。
もちろんこれは御手洗さん宛の言葉でもある。
しっかりそっちにも目を向けとこう。
「んなアタシを人を叩く趣味のある人間と言うみたいな……」
どうだろう。実際殴る蹴るに抵抗が無い方の人間なのはそうかも。
「死んだら終わり、については同意するけども。
とりあえずその『聲』を話を聴くのを止めな?
人のことってか。アタシのことを何も言えなくなるからな?」
美人とイケメンたぁこれまた調子の良いことを、とかちょっと思ってるかも。
それはそうと彼女はチョロいので。
アラシさんに対する好感度は少しだけ上がった。
「人を叩く趣味はないよ…転ばすか抑え込みで精一杯だもの
柔道だし」
柔道経験者なので叩く殴るより締めたり押さえつけたりが主流になってしまうのが難点
殴る蹴るの様な直接的な負傷を避けれる格闘技ではある
「死んだら終わりだし…?
聲達が喧しいけど同意はしてくるな」
しなやす精神やめなされ
「おーい、美人とイケメン達の言葉をまず一番に優先しろー」
「よくわかんねーもんの言葉聞くなー俺らの方が絶対マシなこと言ってんだからなー」
「ええはい。覚悟しといてくださいね。」
言いやがった。
「……逆も言っときましょうか。
アタシがまた頭おかしくなってたら、躊躇無く頬引っぱたいといて下さい。
今回みたく転ばすとかでも良いですが。
……パンチとかは勘弁して下さいね。普通に死にかねないんで。」
それはそうと。
「待てコラそれはどういう意味だ。」
その爆弾発言はなんだ。
死ななければ安い、ってか?
「やばくなった時は…うん…やってくれて構わないよ」
今とかは嫌です、正気だもの!
「…まあ、死なないならいいんだよ
…聲達もそう言ってる」
オイコラ、早速、耳を傾けんな
とまれ覚悟はするだろう
「ちゃんと死なない程度に留めますって。
というか張り手で人は殺せないんじゃないかな……」
蹴りならいけるかも。
「メンタルねえ……少なくとも、幻聴放っとくよりかは圧倒的にマシでしょうよ。
まあ今は良いとして。……やべえ時は躊躇無くやりますからね。」
つまるところは「覚悟しろよ」ということだろうか。