商業通路(西)
改札外西側。
主にチェーン店やレストラン・カフェなどが多い。
営業時間外の為、殆どのお店は閉まっている。
鏡へ灯りを向ける。自分の顔もろくに見られない。
無造作に伸びた髪の先がフードに乗っている。自分の顔がどうなっているのか分からない。
後ろに別のひとの姿が見えて、灯りごとバッと振り返った。
「……ぁ、ハハ……は……」
何も在りやしない!恐怖心を誤魔化す為か、無意識に乾いた笑い声が零れる。
この場を離れよう。急ぎ足で、知らない気配から逃げよう。
ここから灯りが遠ざかる。
「ウ~ン」
「人、いませんね!」
すれ違ったものといえば、ゲーミング首輪とかぬいぐるみがぽつんと置かれていたぐらい。
「気配はするんですが…」
「いいこと言ってるように見えてそれただ美味しくなれって話だよな?」
「変なやつだな〜お前も大概」
お前が言うな
「行ってらっしゃい」
「いい味わいを出してカッコよくなっていきましょうね」
味の話。
「暗いからこそ精が出るっしょ」
「気をつけて行ってくるっすよ〜」
「ナンパ・高城・マンくんもやること終わったら早めに休むっすよ〜」
じゃ!と。その姿は改札口の方へ向かうことだろう。
「こころちゃんね、よろしくね」
ヘラヘラしながら返事。こちらの名前は……さっき名乗ったから大丈夫かな。
「おやすみ。悪い人に気をつけなよ」
「うまいってそれ味の話だよな?
もっとカッコよさとかで寄ってきて欲しいんだがな
お、今から巡回いくのか? こんな暗いのにやるなぁ」
「足元気をつけるっすよ〜」
ふらふらしてるからさ。
「うまいと女の子も寄ってくるかもしれないっすね」
?
「眞白ちゃんっすね。よろ」
「そしておやすみっす〜」
見送りながら。
僕もそろそろ本当に巡回行かないといけませんね〜、と電灯をつけた。
「…そういえば名乗っていなかったですわね。これは失礼いたしました。」
こほんと咳払いひとつ。
礼儀というものはちゃんとしなきゃ。
「真白こころと申します。少しの間ですが、お見知りおきを。」
「ということで、私もそろそろ就寝としますわ。ごきげんよう。」
と言って彼女も宿舎に戻って行ったことだろう。
去っていく彼に手を振る。
「うまいけどさ〜……いやうまいけどオレの名前にすることないよね?
うまいからなんだよ」
「しかしお土産屋か、次々新しい報告が上がるのな。」
「いいじゃないですか 美味しいですよサンドイッチ」
「業務が終わったら、ゆっくり休む。大事なことっすからね」
「良い夜をお過ごしくださいっす〜」
「あはは。何か元気出てきましたよ。」
考えが吹っ飛んだかもしれない。一頻り笑ったあと、大きく欠伸をする。
「オレはお暇しましょーかね。明日もあるんで。」
「ふふ、遊びでしょう?遊ばれるのはごめんですわ。」
昨日のすごいは見ていたかもしれません。
にっこりずっぱりしています。
「まるで外国の方のお名前みたいですわ。」
「冷たいな〜そこのかわい子ちゃんは!
もしよかったら一緒に行こうよ〜!」
懲りてないし
「ミドルネームみたいにするなよ
なんだそのサンドウ●ッチマンみてーなの!」
「ナンパ・高城・マンくんっすね」
サンドイッチ。
「すごかったっすよ、彼の昨日は」
「すごっ……かったすよ………」
そこの白いのもみてたんじゃないんすかね。
「…」
ため息ついたの眺めた。
「計算と数学っすからね〜」
「まあ僕は頭いいんでね…」
本当かどうかは定かではない。
「ナンパマン以外の呼び方あるんすか?」
酷い言いよう。
「どもっす。まぁ今の所は。」
ちょっとした現象に苛まれてはいるが。
「お化け屋敷はフィクションだからすからねぇ。」
多分皆理解していることを口にする。
「オレ計算は得意すよ。答えがわかるから。数学は苦手すけどね。数学は成績2だったんで。」
なんと事実である。
「難問に立ち向かえる程の気力は無いんで。だからアンタ達の考え方はタメになる気がするんすよ。」
否定をする気は無いらしい。
「それもございましょうね。」
妬ましいだなんて。わかり合えないんだなんて。
…ため息吐いた。
「おばけやしきはやるのに、本物はちょっと、ですか。」
すっとんきょう。
ズレずれの言葉を吐く。
「そういうものだと思ってしまえば幾分楽でしょう。永遠に結論が出ないことだって、解決しないことだってありますもの。」
「幽霊に岩塩とか投げてみたらどうなるんすかね、砕く前のやつ」
礫。
「答えがないものを問い続けるのって集中力いるじゃないですか」
「それよりはわかりやすくてゴールが見えてるもんの方が楽っすからね〜」
「お昨日のナンパマンじゃないっすか」
「今日の巡回は…これからっすね」
そういえばずっと喋っていたな。