『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「確かに不審な点はいくつも見受けられる。資源目当てと言われてしまうのもしょうがない」
「ただ……彼がそこまで頭の回らない人間だとは思えないんだ」
床から僅かに目線を上げ、顎に手を当てる。
考えごとをする時のいつもの癖。
「何より……蘇生代の話を持ちかけたのは他でもない僕だ」
「あの時のリアクションは……想定外の言葉を聞いたような感じだった」
「多分、葬式自体に何か目的があったんだろう。資源目当てならあんなやり方はしないはず……だと思う」
「………コンテキストと言うやつが、食堂で追悼式をしたんだよ。………まあ、内容はさておき…今のところ賛否両論、と言ったところだね。」
起こったことぐらいは話してもいいだろう、と。
「ふぅ………すまない、暗い話にしてしまったね。………食事が足りないとやはりカリカリしてしまっていけないな………。」
頭を少しかいて。この話はもう終わりにしようか。
「そ、…そうですか……。…」
「…実際、生き返った方は、どんな気持ちなのでしょうね………。」
それを最後に、また祈る時間に徹する。
離脱。
「正直、昨日のであれを信用する気は失せた。元々、かなり饒舌だったことが引っ掛かってたんでね。」
「どうせ、ひとりで資源の横取りでも企ててたんだろうさ。」
饒舌ということは、それだけの理由があるはずだからね、とだけ付け加えて。
「つーか話しまくると頭のカロリー使いまくるな、ソファ借りんぜ〜、ちょい寝るわ〜」
と言って、適当なソファに寝転がって寝始めたか、見事に足がはみ出ているが…
「……」「弔ったのに、生き返らせる」
「確かにおかしい。それなら弔わなくていい」
「生き返るなら、弔いを送る必要性なんてない。……ですね」
つまり、そういうことなのかもな。
目を伏せてソファに深く腰掛けていた。
「嘘だとしたら俺とかどう言われるんだろ〜な、伝説の巨大邪龍をカードで倒したみて〜な逸話でも言ってくれんのかな、まあ言わなさそ〜だけど」
「ん〜、実態は知らないけど、ま、この感じだと焚き付けじゃんね。
茶番なら崩れてもいい、事実なら奇跡、的な〜?知らんけど」
「キミは変なことは言ってないさ。齟齬が生じているだけで。」
ふぅ、と一息吐き出して、閉じていた口を開いて、また閉じる。
言いたいことは言うようだ。
「そーだな〜、薄情かもな〜
…いや、薄情か〜」
「お生憎様ヤバとオモロに感情のアンテナ?しゅーはすう?それとも比重?それを強くしてっからさ〜、しっかりして〜奴からは何なんだよ、と言われるかもな〜」
と、頭の上で腕組みつつ言おう
丸まっていた体を伸ばす。犬の体は床で寝るのに適している。本当に犬なら。
「あの葬式」「そんなに酷かったの?」
「やっぱり、知らない人のことを嘘で装飾して送り出したのかな?」
現場を見てきてはいない。けど、そんな気がするから。
「それで、できもしない蘇生を求めて」
「……矛盾してない?」
「弔った相手を生き返らせるなんて。
それじゃ最初から生き返らせるつもりなんてないように聞こえるよ」
「じゃあ」
「誰かが勝手に、ひとり生き返らせた
「本当に仲良いなら気持ち悪さを感じて出てくるやつなんかいないだろうよ。」
「冒涜としか感じない。私はそれだけ。」
「………それに、医者はもとから薄情だよ。」
それだけ言って、この女は口を閉ざした。
「しっかり葬式はしていた」「でも、聞くに耐えなかった人たちもいて」
「……齟齬が発生しているんでしょうか、それとも両立されているのでしょうか」
お話するための声かけに関してはコクコクと頷いていた。了承。
「……彼にどのような思惑があれど、行い自体は否定しないさ」
「ただ…………あの催しが余計に不信感を掻き立ててしまったのは事実じゃないかな」
「もう少し良いやり方があったように思えてならないよ。少なくとも死者への誠意はもっと見せるべきだと感じたね、僕は」
「まぁ、ここでいくら論を重ねようが何も変わりませんし
どれも予想の域を出ませんから」
「本当に心優しい人のだけの可能性だってありますから」
「おかしいって……コンテキストさんの事ですから、何処かでお話聞いてたのかもしれませんよ。」
「……人の葬式なのに、薄情ですね。」
>>9308
「ええ。生まれつき身体が弱くて、髪が真っ白なこと以外は人間と変わらないわ。あなたも何か変わったの?
『みこ』であることが何か関係があるのかしら」
「……そう」
諦観を含んだ言葉、それは十分に理解できたもので、ゆっくりと頷く。
「今、何ができるわけでもないものね……」
与えられたものをただ受け取って生きてきた巫女は、これからもそうあるしかなかったから。今もこうして落ち着いている。
「ん、そーだな、俺としてもしっかり葬式してるは納得出来る、してたよ、他人事みたいに思っちまったからアレだけど」
もし自分がされる時は自分なんて居ないしね
「ん〜、なんかあったのか?んまー見かけたら伝えときはするけど…」
「………ありゃどう考えても可笑しい。あいつ、そもそも私に対しても名前しか聞いてきていないのに語れるほど仲良くなっているのか?………実際昨晩、聞いてられんかったという人が何人もいたぐらいだからな」
嫌な予感をじわじわと感じて。次あるなら文句の1ついいに行ってやろうかな、なんて思っていた。
「……コンテキストさんは、しっかり葬式されてたと思いますけど。」
何だか評価は良くないらしい。
少し、少女はムッとしていた。
「あ、コンテキストさんが戻られたら…教えてくれると助かります。
ちょっとお話があるので。」
「それから……もう一人の白衣を着てる医者っぽい人も。お話しなきゃ。」
「………そう、なのですね。」
なんとなく理解した。
「…あぁ、目が見えないことに少しだけ良かったと思えました。盲目の信徒には会場までたどり着くことすら困難ですもの。……けどそのような評価が多いですと、その方が生きている限り今後も続けられる可能性があって、……嫌ですね。」
ふふ…と苦笑い。