『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「……起きてたんですか」
貴方の前の床に、猫は座り込んでいましたから。
いつでも寄り添える位置で。
「…………」
猫はまた、言える言葉も無く。
ただそこにいるだけでした。
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
「……わかるなあ。」
「よく、わかるなあ。……その気持ち」
いつの間に起きていたのか、誰に向けるでもなく言葉がこぼれる。
「みんな……怖かったんだ」
「誰かに傷つけられるのが……誰かを傷つけた感触でしか、きっと安心できなかったんだ」
「皆、みんな。泣いていたんだ……」
彼女もまたそのひとり。
ただその場で静かに佇むのみ。
「……私も、エネルギー不足、なのかもな。」
傷の治りが遅い。すごく。まだ、じくじくと傷んでいる。
適当に結び直した包帯をみて、干してある服を見る。…まだ乾いてなさそう。
>>19135
「いやあ、これも自分の為っすから」
そう言って、灰髪はへらりと力なく笑った。
「ただ、そうすね」
「今はただただ」
「腹減って、力が出ねっす……」
想いの丈をぶつけて。
壁際までなんとか移動した後、ぺしゃりとその場に横になった。
>>19121
「…………そう。」
痛みは、確かに伝播する。彼女が苦しんだあの時。私も違うとは言え、痛みをまた感じていた。
貴方の言い分も、十二分に理解できた。それは、そうだ。
けれど。
今を生きる、"人"。
その言葉だけで、医者には、もう十分なほどで。
何だか、逆にまた、申し訳なくなった。
「………ありがとう。」
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
>>19113
「ざっす」
ぺこりと一礼した。
「俺、人が傷付くの見たくないんすよ」
「痛みって、伝播しちゃいますから。
誰かが愚痴を零せば、それを聞いた人の心が傷む」
「なので、極力傷付きたくないし、傷付けたくないんすね」
「……でも」
でも。
「人を殺すのは、確かに良く無い事っす」
「だからって、今を生きる人を蔑ろにするのも違うと思ったんす」
「……それが」
それが。
「……手伝った理由っす」
>>19107
「……ああ。綾川。綾川遥希だ。…今更覚えなくても、構わない。」
覚えてくれるのは嬉しいけれど。
「いいよ、話があるなら、私は聞こう。…………君のこと、傷つけてしまった、みたいだし。」
医者は、静かに貴方の話を聞く、そんな姿勢でいた。
「っす~」
霊安室から戻ってきました。
「えぇっと、綾川さん、でしたっけ。
俺はほのかって言います」
他の人が名前を呼んでるので覚えてしまったてきな。
「俺が今から言うのは、単なる自己保身ですし、弱い自分の身を守る為だけの自己満足っす」
前置きして。
「それでも、聞いてくれますか」
>>19025
「……あぁ。」
血に塗れた手、汚れたナイフ。
何かをしたのは、明白。
その前には、異教の信徒。もう冷たくて、動かない。温いのは、その赤く流れる物だけ。
「見つける神は、もうここには居ない。」
「見つける意思は、もう何も無い」
「……だから、おやすみ。」
ごめん。私は、君の信じる神でも、見捨てた石でも無いだろうけれど。
これが唯一の救いだと信じている
そのまま、明るかった貴女のところに来て、抱き上げたら。
まだ、体には生命の温度が残っていて、寂しくなった。
あとは…
「…シスターさん。あの人も多分、もう…。」
あの人を連れてきて、と。
霊安室まで。
「私は…先に行っている。」
「ン…、どう、した?」
運び出してしまって、戻ってきた所かもしれない。
その顔は、貴方を見る目は。申し訳なさそうに、していた。
「……私の体力にも頭打ちってあるんですね」
プールからふらりとやってきて、
モニターを確認すればまた去っていくのでしょう。
すでに遺体は運ばれた後でしょうから、死者の文字には興味を持たぬまま。
すぐに置いて来れたのか。すぐに戻ってきた。
次は、紫の彼。何とか担ぎ上げて。よろよろと、連れて行こう。
また傷口、破れないといいな。
黙って、1人ずつ、運び出そう。
ゆっくりとした動きで、人を、遺体を、あの場所へ。
青色のあなたから。紫の貴方。最後に、優しい言葉をくれた、小さな貴女を。
青い人を、霊安室まで運び出した。