『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
「………………」
この結末は、見届けない。
冷えた心に、積もるものは。
無言、その場を去ったのだ。
投げる言葉なんて、ないわ。
「――ふ、ふ」
「先に謝罪など、……ええ」
「意味がありません」
にこやかに哂う。
「私は許しましょう。
あなた様がそれを望むのであれば。
喜んで差し出しましょう」
「次はどこを狙いますか?
手?足?腹?
――それとも、心臓?」
「……ええ、ええ」
「意味はないでしょう!
あなた様が襲わなくても。
次の停電には、私は死んでいるのであろうから!」
――先に謝罪を受けたのなら受け入れましょう。
それで、相手の気が晴れる
呼吸が浅く、早くなって。
体が小さいですから、それが顕著に現れて
動揺、困惑、恐怖
それらが全部、全部。分かりやすいほどに
服にも手にも血痕は無し。本性を現したり色々賑やかな喧騒の中で、これは悠々と寛いでいる。
物理的な干渉がない限りは暫くそのままだろう。
「今速攻で懺悔いたします!!私めは資源に目が眩み、以前葬儀で反論をしたローゼン様が苛立っていたので停電の最中にナイフで腹部をこう、刺そうといたしました!(エアナイフで切腹のポーズ)
結果はローゼン様が私めのナイフを防ぎ、ローゼン様は数少ない資源を使っての防衛がもう出来なくなり、私めも損をいたしました!やるんじゃなかった!許して…!」
「てか、殺人鬼ばっかりですね
ボク、お暇させてもらいます」
脚動かないから腕の力だけで這いずるけど、腕の力も弱いので数センチしか進まない
此方の行い、あちらの行い。
どちらも両立するものだから。
善意は善意のまま、そこに在るだろう。
それは変わらない事実だから。
リタはただ静観していた。
動揺の類はその顔には見られない。
出入り口からモニターを見てちょっと肩を落として。
そんでロビーの雰囲気を見て。
「……笑」
阿鼻叫喚の様相、女が笑った声は聞こえやしないだろうな。
気付かれる前に退散退散。
「葬式聞いてた時にさ、思ったんだよ。そんな思い出あったんだ、知らねぇけどってさ。
俺は毎日毎日誰かに刃を振るってるやつだったぜ〜?」
「そんな奴が、わざわざ人の繋がり程度で振るうのを辞めると思うか?」
「あ〜あ!せ〜っかく良い人でいようと思ったのに!口封じしなきゃって思ったのに!大好きだったから最期に焼き付くのは私が良いって思ったのに!」
「ぜ〜んぶ台無し!」
「でも良いですよね!そっち側って言うなら!もう隠す必要もないわけだ!」
「全て全て、演技だったのね」
「信じたあたしが、バカみたいね」
「…………そうよ」
「知っていたはずなのに」
「悪意は何処にでもある、ってこと」
色のない声が、呟きを紡いだ。
「……」「阿鼻叫喚、だなぁ」
あちらで狂気、こちらで悲哀、そちらで謝意。
耳を塞ぎたくなるような狂騒。これはただ立っている。
「へぇ?」
聞いたことを、反響さて
「っは、あっはっはっは!!あーっはっはっは!」
思い切り大きく笑う。
「あーあ、おもしれー女だ」
「マブのにーさん……」
嘘っすよね?と。声が震えるように。
だって、俺。
俺――
「そういうの、初めてなもんで……」
人からこっぴどく裏切られるのが。
根っからの、小心者。
コイツ────
「ああ~~~~~ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい私めローゼン様を舐めておりました!!!襲ってごめんなさい!!!」
「……」
「あぁ、そこにいましたか。
コンテキスト様」
ずる、ずる。
鳴らしていたヒールは響かせられず。
あなたの傍にこよう。
「……無事だったようですね、あなたは」
「な……なんてことだよ…… お、俺達、ずっと信じてたのにッ!!!!
皆をずっと……欺いてたってのか!?あの子が信じて、また一緒に過ごしたくて、蘇生薬まで使ったのに!
こんな…… こんな! こんなこと許されていいってのかよおおおおッ……!!!」