『ロビー』
色褪せたようなあまり広くないロビー。
無人の受付カウンターとモニター、いくらかのソファがある。
開いた大扉の向こうは、中庭が見える。
『記録[
>>12063
「かいせい……」「[はれ?]で、[あめ?]が止むこと」
「……なる、ほど?[あめ?]っていうのが止んだら、良いことがあるんですね」
「そしたら、そうですね。止んで欲しいです」
「みんなもそれを待っているようですから……」
「………………え、あれ? えっ……?」
突然、モニターを見て困惑の声。その視線はある一点に注がれていた。
むしろ今まで気が付かなかったのが不思議なぐらい。それもまた、こんな状況下で気が緩んでいた証なのかも。
「わ、わたしちょっと他のところ行ってくる!
みんなおやすみ、気をつけてね……!」
それだけ言い残すと、早足でこの場を去っていった。
「引っかき傷なんてくれるなら」「来世の先まで持ってってあげる」
にこにこ。気付かれてしまうかもね。
吐き出す言葉がもうとっくに生還を前提としていないことくらい。
「猫の手なんて、」「犬と違って借りられてばっかりなんだから」
「今くらいは大事にしておきなよ、そのちっちゃな額がほんとに赤くなったとき困るもん」
>>12044
そいやノインくゆって『快晴』分かって無い感じ?
ウルトラ晴れぽよだぜ。
雨が止むまでって事だ。止むと良いなーマジで。
「……そう、だね。ちょっと気が緩みすぎてたかも」
初日から今日まで、何もなかったから悠長に過ごしてしまったけれど、これまで通りだったら襲われた時にひとたまりもない。これからは襲われないように過ごさないと。
……もうわたし一人の命じゃないんだから。
「あんまふざけたこと言ってると引っ掻きますよ」
辛辣─────
「……そう、ですか。
なら猫は、本人の意志を尊重するまでです」
それでも、心配する気持ちはありますが。
猫は気まぐれですから
気まぐれで手を差し伸べ
気まぐれで突き放します。
最後にはきっと、…………さぁ。どうなるでしょうか
「警戒しといて損はねえと思うぜ、消耗は激しいけど…襲われるよりは全然マシだからさ」
「使ったからこそ安くなった、それは考えたいよな。
前例が無いなら、覚悟がないと使えないようにしているって有り得るし」
「そっかあ~~、そんなに犬のこと好きなんだ~~?」
にま~~…………。
「でも」
「気持ちだけ貰っておくね。コレは僕の責任。
たとえ無駄に終わったものだとしても、他の誰かに負わせるつもりはないよ」
そういえば、いつか命の価値の話をしたっけ。
無情なギロチンを振りかざした人もいたけど。
きみは情に飲まれて、無駄遣いして。
それで結局、最後には笑っているのかも。
そうだったらいいな。
「……資源が開示されていますから。これからは、資源が多い人から狙われるでしょう」
「[かいせい?]まであと3日、ですから。身を守ることを第一に考えても良いかもしれません」
モニターを眺める人に、ポツリと、呟くように。
「テキトーだったらこんなこと言ってません」
「貴方だから使う価値があると思ったんです」
猫は群れないことが多いですが
同族意識なんかは強い方ですから。
それに一度は褒めあった仲です。
「……そっか、そんなに取られちゃうんだ。
運が良かっただけだったんだね、わたし」
赤い文字の人たちは、運が悪かったのか、それとも誰かの恨みを買ってしまったのか。
どちらにせよ、この人たちを殺した人がいるという事実に違いはない。
……資源が狙いなら、いつかはわたしも。
まー。需要を察知したからこそ、と信じてぇよなぁ。
貧乏過ぎて何も渡せんけど、なんかファンサしとくか……。
(指はーと。わりと下手)
「猫の雨粒ちゃんはそれ、テキトーに使ったら後悔するって」
「保証する。そういうのはもっと親しい隣人に使うためにあるんだ」
「引っかかれても痛くなさそうだし」「ナイフ、振ってもかすり傷しか付かなさそ~」
「……いや、三本か」「ここでも使われたんだったね」
「大損だよねえ。僕らが買ったから、その次が安くなった……と思ってるよ。
その方が精神衛生にいい」
「……そういえば、そうでしたね……」
「食料とか、要ります?
猫は資源がそこそこにありますから」
「…………誰も襲ってませんからね」
一応弁明しておきました。
「休んでるだけならたしかにそんな減らない、けど…襲われるとな……あっという間にすっからかんだ………」
誇張表現、では無いのかも、モニターの適当な0の数字を指さしながら。
「ん、休んでて、それで怪我がなかったんなら幸運だぜ〜?
………そうなってない、って事だからな〜…」
赤い文字に気付いたか、なんて思いつつ。
「蘇生薬……」
そんなものもそういえばあったな、なんて数日前の記憶を掘り起こす。結局今まで一度も使っていなかったものだから。
……半額になったなら、いざとなったらわたしも買えるのかも。
「棚バトル……? は、よくわかんないけど、わたし休んでただけで……」
むしろそんなに減るものなんだ、なんて思ってしまった。
結構みんな買い物とかしてるのかな。それとも、襲われた人の手当とか?
もう一度モニターを眺めて、今度はそこに映る不吉な赤い文字を見て、息を飲んだ。
「どうせもう死んでるから言っちゃうね。蘇生薬買ったんだ、そこの真っ赤な文字の子に」
「その後で半額セールになっちゃったワケだけど……」
「不発の一本と、成功裏の二本。前者が僕の」
「!?」
「……あ〜、そういう事か。棚バトルに勝ったり、休みながらも運が良かったりすりゃ、そういう事もあるだろうよ〜
だからそんな焦んなよ〜、怪我よりは全然いい事だからな!」
「そんな真っ白じゃ返り血バレバレになるでしょ」
「きみが文字通りの濡れ衣になるまでお預けだな~」
血は抜きづらいそうだけど、洗ったら落ちるかもしれないし。
「…………無実です!」
思わず弁明の言葉が口をついて出た。自分でも誰に向けて言ったか分からない。
でもわたしがこんなに持ってる方だとは思っていなくて、疑われてしまわないかと焦るあまり突拍子もない言葉を発してしまった。