『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「5? なら許す!」
先程まで誰がどう見ても不機嫌!の状態だったんだけれども、ぱっと表情を変えて………何らかの基準で怒りを引っ込めたらしい。何なんだ。困惑して当然だろうな。
「返り血ってのは嘘! でも人は襲った! 誰かは秘密!」
床をバチバチ叩いていた尾も左右にウェーブしているしまたなんか倫理観に欠けたことを言い始めたし一貫してニコニコだし。与太である可能性もあるが…
「気色悪い、ですか……まあ、これはこれは……
何やら気に障る言動をわたくしめがしてしまったご様子。一体何が、と理解が及びませんが一先ずは……申し訳ございません、何かと至らぬ身でございます故どうか、ご容赦を。」
また少し、驚いたような顔をした後軽く頭を下げる。
何か変なことでも言ったかしら、と謝る顔はやや不思議げ。
「番号……ああ、はい、5番目でございました。上から5番目、ユウガオと申します。」
…受容。疑いすらしないのか、敢えてそう装っているのか。判別は付かないが、
「止めろ!気色悪い……!」
倫理観どうこうを一旦差し置いて概ね優しい、と形容されて良いだろう応えに、お返しとして差し出すのは明確な不興、不機嫌である。何らかが気に障ったらしい。
「お前、何番だ?」
「モニタに映ってる番号があるだろ、答えろ……!!」
噛み付きそうな様子で…聞きたがるのは何でか便宜上の割り振り番号であるし。全然無視してもいい。
「……おやまあ、返り血で御座いましたか。」
驚いたように目を丸くする。
「でしたら貴方様はお怪我をされてはいないということですね。それは何よりで御座います。どんな者でも傷は痛いものでしょうから。」
けれども特に怯えも憤りもしない。
なら良かった、と嬉しそうに笑っている。
「あ〜〜〜? アレ返り血…」
負傷部位の有無は服上からは分かりづらい程度であっただろう。怪我をしているとしても軽傷であるらしいし、よってこれが詮索されたくないが為の嘘なのか真実を述べているのかは分かりづらいかも。
一応前者である。服の血は自身のものであったが、どう捉えてくれても。そちらの反応を窺うように少し上から見下ろし、蹄を床のタイルに無意味にカンカン鳴らしている。
>>6117
この場には他に人の影があるのかもしれない。
けれども未だ話足りなそうに笑みを浮かべている存在は、
きっとユウガオくらいしかいないのかも。
「ふとした瞬間、多くの人たちがお休みになる瞬間がありますよねえ。ふふ、少しだけ不思議ではありますが……欠伸はつられるものであるようですし、誰かが休むとなると皆続いて休みたくなるのかもしれません。」
「……おや、冷たいシャワーは如何でしたか?傷など、問題は御座いませんか?」
「いや人散ってる〜」
人外が出てきた頃にはだいぶ人気がなくなってそうかも。髪がほぼ濡れてないのからして水を弾いてしまったらしい。衣服の血痕があった部分は洗ったっぽく丸く濡れている。
「ま騒がれるよりは良いかあ……?」
こちらのことを露骨に毛嫌いしているっぽい人の顔もあったような気がするし、平穏に済むならいいか?
「ああ……俺もそろそろ休んだ方がいいかもな。
今日もいい感じの枕は見当たらなかった……」
うーん、と唸る。
角のある方へ首を傾げて少し肩を揉んだ。
「退散します。皆さん、また明日」
「皆様どうか、お気をつけてくださいませ。
また再びお話しできることをこのユウガオ、切に願っております。」
去る姿を見送っている。
「人とくっつくのは、なんか……うーん……」
個人的にはそんなに好きではないらしい。
まぁ服はしっかり着込んでいるし、そのうち温まるだろう……。
そんな希望を抱きつつ、プールを出て行った。
水場に留まっていた理由の一つである傘の水気は、そろそろマシになっただろうか。
あちらこちらを濡らして回ると、誰かの顰蹙を買ってしまうかもしれなかったから。
後をついて回ろうなんてつもりはないけれど。シャワーを浴びるという目的も済ませたわけだし、一緒に来た相手がここを去ろうとするなら、つられて少女もお散歩の気分にでもなるのやも。
「シャワー浴びてる人がいたら、
すぐ向こうに全裸があるものでしょう」
私もあなたも、おねーさんも、2m級の有角種でも。
「水場って……風水的によくないんでしたっけ」
「どこかが特別暖かい、というわけではないでしょうけれど……おそらく此処はより冷える場なのかもしれません。風邪を引いては大変ですから、どこかよりマシな場所へ足を運ぶのは良いかもしれませんね。」
タイルはどこか冷たい印象を与える。
移動するような様子には、そうした方がいいだろうと頷いた。
「……そろそろ水場に居続けるのも…って気持ちになってきたから」
「出ようかな……」
外の方が幾分かマシ、な気がする……
五十歩百歩かも。
一般的なシャワー室の高さってどんなものなんだろうか…? 床から角の一番上までは2m数十cmとかなので見切れる可能性はややあるかも…
流石に扉ないしカーテン類を閉める分別はあるので年齢制限は必要ないはず。今のところ。
衣服に付いた血には大きな声も上げず。
そういう事もあるか、という感想だった、
あってしまうか、の方が近いかもしれない。
「シャワーが冷たいぶんここが暖かかったらいいんですけど……」
「プールがポカポカなのも妙ですもんね」
「あ゛~~~……寒…………」
今しがた入って行った者と入れ違いになるように、震えながらシャワー室から出て来る。
なんかデカい人いるなぁくらいは思ったかも。
それより寒いし頭濡れたままだし、全然さっぱりした感じがしない。