『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「そちらの方々は雨音がお好きな様子。
良いものですよね、雨音は。
轟々と降る雨は恐ろしいものでは御座いますが、
静々と降る雨は非常に心を落ち着ける音を出しますから。」
「おや、まあ」
素気ないお返事、困ったように
けれど少し楽しげな様子でくすくす笑う。
「わたくしは……雨の日も、晴れの日も好いております。どちらも素敵な光景を窓の外に映してくださいますからね。」
「此処の雨も……まだ嫌いでは御座いません。長々と降ればもしかしたら、思いは移り変わるかもしれませんが……今はまだ、美しき雫にわたくしは思います。」
「俺は好きですよ。人並に、ですけど」
「雨そのものってより雨音が好きに近いですけどね。
事務仕事とかしてる時に聞こえてくると落ち着くものです」
今も雨そのもの自体を憂いている様子はない。
傘があれば雨でも気にせず外出が出来る人間だ。
「雨が止まねば出ることすら許されないようですものねえ……わたくしといたしましてもずうっとお部屋にいるよりは外をかけてみたくは御座いますが……」
とめどなく、窓の外では雨粒が降ってきているだろう。
はてさて、晴れるのは一体いつになるのやら。
「雨に鬱々とする方もいらっしゃるようでしたしねえ。
……皆様は、雨、お嫌いですか?」
「おやおや、そうで御座いますか……こうして外が見られるというのに開ける事が叶わないとなれば、さぞ気落ちしてしまった方もいらっしゃる事でしょうに。」
外に出たいと焦る人々がいた。
コンコンと軽く、壊す気など微塵もない力で窓を叩く。
「まあ、しかし仰る通り閉鎖的ではないのもまた事実。
僅かばかりでも外を想える窓があるというのは確かに良いもので御座いますね。」
人の往来には笑顔で会釈をした。
……自分も眠りこけたいな、とは口に出さず。
「窓はどう頑張っても開きませんね。まあ、外が見えるだけでも開放的でいいです」
「どうも、お邪魔しております皆様。
成程、ええ、確かにプールに中庭でございましょう。」
「わたくしめはただこうして施設内を歩んでいるだけでございます故……様々な事象があった後とは思いますが、どうぞ気を張らず、ゆるりとお過ごしくださいませ。」
「わたくし、眠りこけていましたので……あまり皆様と関わっていませんでしたから……」
関わるとしても特定の人物になりつつある。
人が増えてきたな…………見回す。
ひとつ、ふたつ、みっつ……。
「…………ここはプール。
この外にあるのは中庭。」
中庭に続くであろう窓の外の、雨を眺めている。
「どうも。ただいまと言うべきですかね」
「言われてみれば初めて見る顔だ。皆あちこち見て回りますもんね」
そういう自分は定位置が出来つつある。
窓際で壁を背にして、胡坐をかいて床に座った。
ひた、と裸足が冷たい床を歩いていく。
目新しそうに彼方此方と、しきりに首を動かしながら
己の腕を繋ぐ紐を少し弄りながら歩いていた。
「おや、まあ……これが……
ええ、ええ、確かそう……プール、というもの
……あちらにあるのは……」
大きな窓に手をついて外をそっと覗き見る。
中庭があるとそういえば誰かが言っていた。
「いやあ、まだ誰も死んでないみたいで」
ひょこっと戻ってきた。
「あちこちから怪我人の話が聞こえるのは恐ろしいものですね。
共有資源とやらもすぐに空になってしまったみたいですし」
そっと来てシャワー室に入る。
冷たい水がかかるが、頭が冷えるには丁度いいと思った。
明日は我が身か。
人助けの前に自分が滅ぶのが先かもな。
ドン、と壁を叩いた。
>>4742
「やっぱレジちは笑顔が似合うな…」
またやかましい。
「ん、そうしてくれるだけでもめちゃくちゃうれしーぜ、つーわけで、俺は軽くシャワーしてからロビーにでも行くとするかな…」
と、言うとシャワー室の方へ歩いていったか。
>>4691
「ありがとうございます。そちらもお気をつけて」
続く言葉も、返す質問もない。
響いているのか分からない声で、そう返すだけ。
ありたいようにあれればいいな。
>>4656
「……そう、ですか。そうですね……分かりました。お互い、無理はしないようにしましょう。わたくしも、そうします」
柔らかく、微笑む。