『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
「いいじゃんか、変わんねぇほうが」
「だってそのほうが見つけやすいもんな。」
「俺も次はもっとマシな小説書くかァ~」
いっぱい売れたらきっと、どっかで目に入るだろ。
だってお前、文学少女だもんな。
そんで握手会にでも来てもらおう。
ここに居る奴ら全員来てくれたら嬉しいな。
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
「……さよならは、言わないようにします」
「生まれ変わりか、やり直しか」
「どのみち私、こういう女ですから。
何もかも諦めて歩いているような」
「でも、好きなんです。
花も鳥も兎も、紅茶も……雨も、小説も」
「変わらないと思う。それは」
その確信は、持てる。
何もない私に、確かにあった、好きだから。
「俺ァ創作家だからなァ~」
「夢見せたいだろ」
「荷物がいっぱいなら、みんなで背負おうぜ」
ここに居る、同じように思ってくれる奴らでなァ。
そしたらどれか一個くらい、神様まで届くかも。
みんなで持ったらきっと軽い荷物だぜ。
いつか会えますように。
……あ、次はできればもっと健康でイケメンで成功しててめっちゃモテて美人の妻と可愛い子供が居る人生で………
「……穏やかに、少しでも長く」
「ですね」「せめて」
もっと良き出会いの形はこの世にはあって。
それでも自分たちはこうやって出会って、
戻らない。
なら、また今度か。
「俺も願いましょう」
「こんなに大きな夢を持てた」
「……そういう生を、望むことができた」
「ふふっ、その上で……
まだ、私に願わせようとするんですね」
「そろそろ手荷物がいっぱいです」
でも。そうしたいな。
両手を合わせて祈る。あったかもしれない未来。
あるいは。なくなった先の、どこかへ。
「もうちょっと健全な環境で」
「生きててほしい人たちもいるしねぇ」
そこのお兄さんたちとかね。
「いつかまた、会えますように」
「こういうの言霊って言うんでしょう?」
「……じゃ」
「願うか。」
「いつかまた、会えますようにって。」
「なァ。俺達の国にゃ、そういう迷信、あっからな。」
迷信、だけど。
願わないより、願ったほうが悔いないだろ?
死んで、消えて、その後で。
出会えたら良いよな。記憶も顔も違くたって 会える気がすんだよな。また。
「そう思ってもらえるのって」
「結構嬉しいかも」
叶わなくても。
また会いたいねって。
言われているのと、一緒だと思うから。
「………うん」「………」
「そうだな。」
ここで出会った奴ら、この風呂を作るため手伝ってくれた奴ら。
食堂で毎日顔を合わせた奴ら、生意気に話してくれた奴ら。
……そんで、お前。
「……そうだなァ」
叶わないわな。でっかい悔いだな。
「時間は巻き戻らない」
「生存競争にももう戻れない」
「もう少しだけでいいから」「なんてね」
望まれるような答え、だっただろうか。
取り巻く温かい人たちを。
大切だって言ってくれるあなたを。
こんな形で、望んでしまうのは。
「……」
「こんな場所じゃなくて」
「元いた場所で出会えたなら」
「そして、ここにいる時のように惹かれあったら」
「どんなによかっただろうって」
少しだけ、喉を詰まらせながら。
けれど澱みなく言う。悲しいのは、確かに嫌だ。