『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
『そうだったみたい』
多分あの二人だよね、って検討をつけて。
『仲良しでよかったねぇ、って思う』
『ひとりより寂しくないものね』
「感謝はされてないですけどね」
はい。後は死ぬだけ。
誰もそれを覆せない。
選択肢、無くなっちゃってますね。
死に方くらいしか選べない。
なんとな~く花屋さんにぺたってくっつきに行った。
ぺた……。
ちょっとしたら離れて、また水の作業を頑張るんですが……。
ちみちみ、せっせ……。
『図々しさと愛嬌を振りまいた自覚は結構あります』
全方位に感謝が絶えません。マジで。
『そうだね』
『蘇生薬も、もう役に立たないみたいだし』
「そうすねえ。まあ、いないとも限らないんで、死にかけなら警戒した方が良いと思いますね」
「今の時点で蘇生させんのも相当趣味悪いっすからね」
藍です。
『うん』
『そこはね、すごく嬉しい』
『突き飛ばしはない方がいいかもだけど』
人が死ぬ、殺すにまつわる悲喜こもごも。
結構もう、お腹いっぱい、ってやつだった。
ままならないね、様々。
ここに到着出来て、よかったのか、悪かったのか。
わかんないけれど。頑張った気はする。
「ここでわざわざ刺し殺すのなら、もう私怨か何かでしょうね」
「死体も残らないほうがよろしい」
「生き返らないから」
「……もう生き返ってもな、というところですが」
「少なくとももう、人を殺す必要は無い訳です。殺したかったら中庭に突き飛ばした方が安いんで」
殺したい人はいる、かも。
でもそれって趣味の範囲なんで何とも。
中身のない良かったねーに良かったねーで。
最初からそれなら良かったかもしれないですね。
そうじゃなかったから今なんですけどね。
『我が儘をしながら生きていくのって』
『かなり大変って』
『しみじみ思います』
人を傷つけずに生き抜くためには、プライドを捨てた図々しさを発揮し、棚バトルに勝つ必要があって――
『そうだね』
『遊ぶのに必要な料金が』
『他人の命とかに、近かったから、余計に』
近い、というか。
正しく、他人の命、だった。
『うん。よかった』
わかんないままの、よかったねを。
うん、って頷いて受け取った。
そう言ってくれるだけで、いいんだよな。
「終わりの無いソシャゲより、終わりが決まってる据え置きのRPGの方が良いすもんね」
無いと、決められないと、納得しないと。
次に進めないもの、なんです。多分。
「安心したなら良かったすね」
安心や、肩の荷とかもあんま、分かんないですね。
良かったなあもあんまり。おめでとうも全部。
やっぱり、あの二人かなぁ。
二人一緒なら、よかったのかな。
本人達じゃないと、わからないけれど。
『そうかもしれないね』
『全部、気の持ちよう』
『死ぬってわかって、帰れないってわかって』
『ちょっとだけ、安心しちゃったところ』
『ないって言ったら、嘘になる』
もう足掻かなくていい、という。
少しだけ後ろ向きな、安堵。
肩の荷が下りたかのような。
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
玲衣も死んだなあ。夜空も死んだみたい。
って言うのを、まあ。他所に置いておきましょう。
悼む心は無いので。
「結局気の持ちようですけどね」
「全部多分、そういうもんなんですけどね」
通信を聞いて、天井を見上げる。
少しだけ黙とうをして、それで終わりだ。
『いい終わりだったらいいね』
『選べるのってすてきだけど』
『選ぶのも出来ないくらい』
『疲れちゃってる人もいるから』
自棄の延長線上じゃなきゃいいな、って思う。
最後の、最後くらいはさ。