『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
同じ放送が繰り返され始めた……
藍は亞麻露に蘇生薬をおくった
ここに来た日数を確認するように指折り数字を数える。
144時間…という事は大体6日間くらいだろうか、先の声は聞き取れなかった。
他のアナウンスは状況が好転する内容じゃなかったな…と、
自分でも不思議なくらい冷静にそれを受け入れるように考える。
『次の[快晴]は計測不能です。』
耳障りな高音が、不明などこかで大きく鳴った
『空間に異常があります』
『雨が降っています』
「ふうん」
死体は死体みたいですね。
そっちも多分死体ですね。
そんで上を見ました。
「あーつまり、あれは全部過去の録音で」
「俺達は餓死するしかないと?」
『次の[快晴]は計測不能です。』
『空間に異常があります。』
『不具合が計測不能件あります。』
『緊急プロトコルを起動できません。』
『外部通信ができません。アクセスポイントが存在しません』
『空間に異常があります』
『生産プロセスに異常を検知』
『こちらは自動放送です。DREAMより皆様へ』
集まっていた顔触れ、停電前に把握できたのはごく一部だったけれど。
数瞬。暗闇が開ければ。どうやら何やら。
くる。くる。くる。くる。くる。
傘が回り続けている。
新しい血の付かなかったナイフを、その場に取り落とした。
こびりついてるのは、古く変色した赤ばかりで。
上手くいかなかったなあ、とぼんやり思うだけだ。
「あ」
「……」
私は暢気に休んでいましたから。
白い手袋はまだきれいなまま。
白い服もそのまま。
だからこの鉄の香りは、彼らから伺えるものでしょう。
「……死んでしまいましたか?」
ではこちらは、カッパのあなたへ近寄って。
脈をそっとはかりましょう、動いていませんものね。
『――――――音声ログ[約一年前の日付]、<b>144:00:00の再生を終了します』</b>
『次の[快晴]の計算ができません』
『エラー、不具合が■件』
『エラー、エラー、エラー、エラー、』
[徐々に音がミュートされていく]
[二回目の液体音]
[硬い機械が地面に落下する音]
[駆ける足音]
[ごぽごぽという音]
[多くの液体がばしゃりと地面に落ちる音]
『嫌だ、いやだだしてだしてだしてだしてだ』
[重い扉が開く音]
[雨の音が大きくなる]
とりあえずよいしょって立ち上がり、死体チェック。
カッパのガキは──まあ良いです。
最後に飯食えたなら幸せだったでしょう。
んで問題はこっちな訳で。
「おーいつゆちゃーん」
ほっぺペチペチ。
「俺達生存者にも数えられてないみたいっすよー」
『あ、おい、待て!!』
[狂乱する声と走る音]
『嫌だ、嫌だ、いや、嫌だぁ!!!!』
『じ、じゃあ、僕ら……』
『僕らもうこの場所で餓死するかしかないんですか?!』
『再計算終了』