『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「すみません女性のその姿はすごく目に毒です」
顔面を覆っている。
こっちの方がダメージが強い。
いやとかではなくてですね、あの。はい。
「ではここで、可能性のプレゼンをいたします!
タイトルは『この空間に許された殺傷』でございます!!」
プールに浸かりながらみんなの方を向いて、手を大に広げて言っている。
「まるで言葉遊びのよう、ですね……」
スケッチブック、書かれている文字を見て苦笑する。
毒が安全とは、一体。
少なくともあちらの御子は……安全なものを撒いたつもりはなさそうだったけれど。
この空間に救われたのかもしれないな。
『どういたしまして』
『体調、大丈夫?』
『あのね、寒いから……風邪にも気を付けて、ね』
どういたしまして、と一礼をした。
凍えないように、と付け加えて。
「…………。ハァ……」
夜草のあまりの慌てっぷりに大袈裟なまでに大きなため息が出た。
「…………やはりそうだな。お前は此処では何も残せない。
無駄なことだ。」
ぷはっと顔を出します。とりあえず元気ですよアピール。
洋服は脱ぎ散らかされてました。はしたない!
黒いケープの人が服を畳んでくれてるようだ。
「ありがとう♡」
ヒラヒラと手を振った。
実際の所。
きっと毒性なんて無いだろう。
大きなプールに溶け込んだ少量の液体。
本当に毒だったとしても、濁らせる以上の事は出来ない。
「1つ。私めが夜草様を直接接触するのは年齢的にまずい。」
「2つ。毒とやらがこの空間で効能を発揮するかという実験をする。」
「2,5つ。タイミングよく甘噛様もプールに飛び込んでくれたおかげで男女差での検証が出来る。」
『毒は安全だって言おうとしてくれてる……?』
にしても、病院も薬もないので無謀には違いないけれど。
そういう事かな……とスケッチブックに文字を描いた。
「コンテキストさん!?」
そりゃもう、頭を上げて早々ビックリしました。
あっ、よく見たらもう一人泳いでる!?
「何してるんですか!?
あぶな……」
危なくしたのは誰だ。
「……っ。
は、早く上がって下さい!」
「……お、おやおや……これはまた……勇ましいお方ばかりですこと……」
二人目が飛び込んだ。
驚きというか、なんというか。
複雑な胸中である。
ただ暫くぼうっとしていた。
泣いてはなかった。
何もわからなくて、頭がぐちゃぐちゃで。
もう頭の中は溶け出しているのではないかと錯覚する位。
それでも、少し落ち着いて……
少しだけ顔を上げた。
「なっ!?」
水面付近にいた片羽は下着姿の女性が飛び込めばさすがに。
「見、」
「てないってきついですかね!?」
朝も似たことあったな。しかもみられてたな……。
どことなく上の空のようだった。
無理もなかった。あんなことがあっては。
きゅう、と手を握りしめながら。
「…そ、そうれす、シャワーで気分転換を…」
「ああ、でも、水がどうでしょう…」
「あぅぅ…」
縮こまっていた。
「…………!」
あわ……。
とりあえず脱いでいったお洋服が畳まれてなければ、畳みます。
そっ……。下着とかは見えないようにしておこうね……。