『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「グロテスクな腐れ死体になるのは嫌だなあ」
ちらほらと人がはけていきますね。
そういえば男もシャワー浴びに来たんだったか。
……。シャワールームに血の匂いがとか無いですよね。
「ああそうだ、これだけ。湿気もそうだが…冷やすと言っても、水に晒すともっと良くないことになるから、それだけは控えてくれよ。」
じゃ、またね。と、今度こそ戻って行くのだろう。
雨を見ながら続ける。
「…………湿気ると、物言わぬ死体はすぐにカビの温床になる。すぐに腐るということだ。
……あまり長くは保たないだろうね。」
知ったように喋る。
「んじゃあ、アタシは戻るよ。物騒さが増してるけれど…キミたちも引き続き気をつけてくれよ。」
そう言って、この女は引き止められなければそのままさっさと歩いてロビーへ向かって行くのだろう。
「腐る前には出たいですねって話はしたけど」
「一週間は……保つかな……」
気温的にはギリギリといったところか。
冷やすものも、水ぐらいしかない。
シャワー室の一角から水音が止まる。
塗れた布を絞るような音が何度かした後、ゆっくりと扉が開いた。
「…………。何やってんだろ、僕」
「ありがとう。ロビーの方は小さいのもいるし…精神衛生的にもよろしくねえからな…。」
「ハァ…明日の朝には死体おんなじとこに戻ってきてました〜とかマジでやめてくれよ…」
葬儀屋さんやメイドさんなんかが案内に来てくれて助かった。
ろくでもないことを呟いている。まあ、この変な空間の中、あり得ない話でもないのだ。正直。
>>7801 カイル
そっか、と頷いて。
いいな、と言いたげに眉を下げて笑った。
ありがとうと言うように頭を下げて、離れていくだろう。
死体を。それはお疲れさまですと言いたげに頭を下げた。
怪しいが、怪しいからこそ疑っていないのかも。
少しの沈黙の後、再び一礼した。
踵を返し、去っていく。
「悪かったね…。」
「…ロビーの死体運んでたんだよ。…まあ、信じてもらえるとは思ってないが…。」
気持ち悪いほどに落ち着いている。そのせいで怪しさを増長しているまであった。
「個室の一つに、皆で死体を運び込んだり、
布でくるんだりしてて……」
「……大変ですよね、本当に」
自己満足であるから。
これにも大して、もう気を留めることはないのだが。
「それよりも」
「周りの人たちが悲痛な顔してるのが、
一番、沈むような気持ちになるかも」
「共感は毒ですね、ここでは」
新たに訪れた人には一礼をしようとして、血の色に固まった。
あわ……となりかけたが、あっさり出てきた姿に少し落ち着いた。
ケガ人……ではないらしい。多分。
「珍しい人生送ってるんすね」
あ、葬式とかならあるかもしれませんね。
思い返せば自分もあるような。無いような。
「……食堂かなー」
あの辺大変だったし。ってメイドをちょっと見てた。
命が軽いと聞けば、ただ視線を落とす。
ちっとも楽しくない、嫌な気分。
どれだけ紛らわしたって、襲われた事実が焼き付いている。
憂鬱な不安。
血なんて見たくないし、帰りたいし、誰かに危害だって加えてないのに。
そのメイドさんが行ったしばらく後。
「フゥ…」
衣服に血をつけた白衣の女が、真っ直ぐシャワー室へ向かって行った。なんと怪しさ満載。血を流せば直ぐに出てくるだろう。
「しつれいしまーす」
カツ、コツ。静かな足取り。
メイドはそのままシャワー室へと歩を進め、水音。
それから暫くしては、その手にボトルを持ち。
コツ、カツ。来た時と変わらぬ足取りがまま、その場を後にしていくのだ。
>>7743 カイル
そっか、と頷き返して。
暫くの沈黙の後、自分の目を指差して。
それから、首を傾げる。
相手は見えた? という問いかけのつもり。
あなたはどう答えても良いだろう。
さほど経たない時間でシャワーからあがる。
「聞こえてるよ」「シャワー室の中でも」
「……人が亡くなられたこと自体は、そんなに」
「初めてじゃないですから、眼にするのは」
ちょっとむっとしている。やや調子戻。
「そうですか。…………」
「命が軽いな」
それだけ呟いて、困ったみたいに頭を掻いた。
「お疲れ様です。
怪我の有無も大事ですけど、精神も消耗するでしょう」