『食堂』
どちらかと言うと広めのキッチン。水浸しになった。
奥にはシステムキッチンとカウンターがある。ガスも水道も電気も通っていない。
カウンター奥に「箱」のついた扉があるが、曇り空の見える階段があるだけ。
『記録[
「ロビーのモニター見てみたら死んだのが誰か分かると思うよ」
「朝……昼だっけな、モニター見た時にさ」
「名前とか居場所の隣に【生存】て、わざわざ書かれてたから……」
「見ての通り…」
「あぅ、やはり怪我人、が……」
「………あぅぅ、」
「し 死者……?!?!!」
さあっ、と。顔が青ざめた。握られた手に意識を向けながらも。
「しし しっ 死者がっ、れたの゛れすかぁ゛…?!」
裏返った声。
「状況?えっとねー」
「アタシも停電してからこっから出てないからここしかわかんないけど」
「怪我人が数人、で、死者が二人……かな?」
「おじさんとメイドさんが個室のどっかに運んでくれて、掃除もしてくれたから今はきれーだよ」
「良い夜をお゛……」
泣きべそをかいたまま見送っている。
「…あぅう…?」
昨日見かけたお医者様と様子は違うようだったのに首を傾げながら。
布は…入りようになることなど予測れきましぇんかりゃ、と続けて。
「…あの、あのぉ…」
「差し出がましいことれすけど」
「…しばらく個室に2人でいましたのでぇ…」
お外の状況はいかがれす…?と恐る恐る尋ねた。
「確かここのプールにはシャワーがあったよな
少し浴びてくるか」
そう言うと、スタスタと歩いていった。
シャワーが冷たい事は知らなさそう。
「しっかし、こうも布が必要になるならもっとふわっとしたスカートとか履いてくるんだったなー」
「止血とか掃除とか、なにかと入用じゃん」
「どうしてアタシはこんな薄着で……」
「まかせたよー、ひざし」
「皆もしっかりやすむようにー」
ひらひら、軽く後ろ手を振り。
そうしてメイド達は消えていくのでした。
「しりとりだけの会話はマジで静寂が訪れちまうんだよな…」
過去でも思い出しているのかもしれない
「っとお疲れさーん、ゆっくり休みなよ〜」
「あ……お疲れさまでした」
「みなさんも良き夜をお過ごしください」
つられるように自分もそう言って、カーテシー。
片割れの後をついていこうとするのだろう。
「こん゛ばんはぁ゛……」
べそかいていた。すぐ泣く。
「当羽は気にし゛ます゛ぅ゛……!!」
「けど、けどぉ…」
「そう言っていただけて安心…いたじました゛…」
カラッと笑うのにべそかき顔。
しゃくり上げながら話していた。
「…騒がしい奴め」
ぶっきらぼうな対応。
まるで他人…というか、
『彼』にとっては他人なのだが。
別人のようだと分かるかもしれない。
「そだよなァ、蘇生はできるらしーけど、
まあ……余裕ねえしな」
そうしてふと考える。
自分が死んだとき、蘇生されたら嫌だな
ようやく……解放されるのに
「この状況で生き返らせたって、
資源のカモにされちまいそうだし」
「ん~……」
「端切れ、此処に置いとくわ。粗雑だけど止血程度には使えるかもね」
袋より取り出すは、元はカーテンだったであろう裂かれた端切れ達。
「そゆワケで、メイド達は本日は退勤とさせていただきます。
皆様おつかれさまでしたー」
少し考えた後、ゆるく頭を下げるのだ。
片割れの言い出した事を咎めるようなつもりでもなし。
「いーよいーよ、気にしないで!笑」
「そーゆー役にも立ったならなおさら買っといてよかったわ笑」
泣きじゃくる天使と対照的にカラッと笑った。
本当に気にしてないみたい。
「ええ。ごめんなさい、ひざしさん。
私が怪我してしまったから」
ぐるぐると右手にはタオルが巻かれて。
「すぐに替えのものを交換するわ」
「そうですね……色々ありましたから」
「そろそろ休みたいかな、って……。
ダリアさんがまだ喋りたいなら私もお喋りしますけど……」
先に個室に行っておく、ではなく、そんなことを言い出す。