『食堂』
どちらかと言うと広めのキッチン。水浸しになった。
奥にはシステムキッチンとカウンターがある。ガスも水道も電気も通っていない。
カウンター奥に「箱」のついた扉があるが、曇り空の見える階段があるだけ。
『記録[
『――――――音声ログ[約一年前の日付]、<b>144:00:00の再生を終了します』</b>
『次の[快晴]の計算ができません』
『エラー、不具合が■件』
『エラー、エラー、エラー、エラー、』
[徐々に音がミュートされていく]
[二回目の液体音]
[硬い機械が地面に落下する音]
あーぁ。管理不足にも程があるよ。なんでそんなの録音しちゃったの?
自動保存?だったら猶更、悪趣味が過ぎるね。
「ん~~……っ………」「ふぅ」
[駆ける足音]
[ごぽごぽという音]
[多くの液体がばしゃりと地面に落ちる音]
息が早くなる。
一度大きく吸って、吐いて。吸って、吐いて。
頭はアレコレ想定する。マイナスのマイナス、マイナスの方向に。
真っ白になりそうだ。
「……」
覚悟の上だった。
もう、この程度で動くほどの心ではない。
「……」
「……ああ、あの声」
『直らねえじゃねえか』
「外じゃなくて。ここ、だったんですね」
『嫌だ、いやだだしてだしてだしてだしてだ』
[重い扉が開く音]
[雨の音が大きくなる]
『あ、おい、待て!!』
[狂乱する声と走る音]
『嫌だ、嫌だ、いや、嫌だぁ!!!!』
あぁ、そっかぁ、って。
やっぱり、かぁ、って。
思う心をそっと箱にしまって。
ただ、耳を傾ける。
大丈夫。覚悟は決めていたよ。
あぁ、でも、予想外のものだけ、壊れちゃったな。
『じ、じゃあ、僕ら……』
『僕らもうこの場所で餓死するかしかないんですか?!』
「よかった」
あなたが無事で。片割れを抱き、抱いたまま。静かに耳を澄ませゆく。
謎の声。ノイズ混じりの音。
機械音声でも、生のコエでもない。録音か?
『再計算終了』
『外も、上も消えた』
『残ってるのは、この一階だけだ』
『それに、この空間は一年くらいの周期で――――――』
『……いや、関係ないな。これも、もう。』