『食堂』
どちらかと言うと広めのキッチン。水浸しになった。
奥にはシステムキッチンとカウンターがある。ガスも水道も電気も通っていない。
カウンター奥に「箱」のついた扉があるが、曇り空の見える階段があるだけ。
『記録[
「大人になって翼が生えるもんなんすね。税金の使い道ってそこになるんだ」
別に信じてない。化け物とは住む世界が違うんで。
「出来る事やるんなら、奉仕を信じない大人より信じる人の傍にいた方が賢明ですね」
「俺は信じませんので、不要です」
「あぅっっ」
鋭い刃物でスパッと斬られた衝撃を受けている。
「あぅぅ…」
ごもっともなことを言われてさらに抉られている。
「ご飯〜…出せたらよかったんれすけどぉ…!」
「そう言った力は主に取り上げられていますのでぇ…!」
昔ドジした戒めとして取り上げられている。
「できることならなんでもやりましゅけどぉ…!」
できないことの方が多かった。
落ち着いた天使、またべそかき始めたか。
「道も踏み外せば、何かも歪みますよ」
「これでも子供の頃は、翼が無いと書いて
無翼でしたし……歳関係ないんですけど」
少年にはおはようございますを返した。
「極めつけには国に払う金も増えて。
大人に厳しい社会でした……」
とても嫌な世界にいたらしい。
おはようございますぅ、と挨拶。
そろそろ起床時間か。
「あなたれすねえ」
否定しなかった。
「あぅあぅ…」
「まともでも道を踏み外していてもぉ…」
「人間にはご奉仕しますので安心してくだしゃいねえ…」
道は踏み外さない方がいいれすけどぉ…と。
続けていた。
鍵がかかる個室があって、シャワーもあってトイレもあって。
しかし食事が満足に無いと、些か苦しい。
いや欲を言えばぐっすり眠りたい。
「おはようございます」
眠そうなのにも一応挨拶を返しつつ。
「大人ってのは高確率で道を踏み外すもんなんですかね」
「私でした。ぐうの音も出ませんね」
小さく笑って、羽を指で弾く。
「大人になるまで生きた結果がこれなら
まともよりなんですけど、いやはや」
「おはようございます……」
目をこすりながら少年が食堂へとやってくる。
雨が降るせいで外が暗く、すっきりと目覚めなかったようだ。
当羽は役に立たない天使ですぅ………
ごもっともなので否定するつもりもない。
人間の言うことが全部です。
「繭様は…はい、個室で…」
鍵も確認している。安心の個室だった。
なので食糧の一つでもと考えたのだったが。
「変な大人……」
片翼へと目を向ける──
「寝床争奪戦はごめんですからねえ」
「床は腰がもう痛くて痛くて……」
腰トントン。ごきごき。
今日からでもない腰の不調が訴えます。
「……変な大人……?」
あたりを見渡した、はて。
役に立たねえ天使だなあ。
さておき無いものは無い。
戸棚いっぱいの食料はこちらも欲しいところなんだけど。
「繭ちゃんは良いんでしょうか。ちゃんと鍵かけて眠れましたか」
「変な大人に絡んでると犯罪に巻き込まれますよ」
「はい…べそかきれすぅ…」
べそかき天使は否定しなかった。
人間が漁るなら場所を少し詰めた。
アホっぽいので探すのは大正解。
「すぐに降伏するんれすかぁ〜…?」
困惑していた。べそかきながら。怪しい人。
人間なのか反対に迷う。
「…お腹…」
「あぅ…」
これで食べ物の一つでも出せたらよかったのだが。
出せないからベソをかいていた。
役に立たない天使だった。
「ソファ100個は要らんでしょう」
失礼、とか言いながら天使に続いて戸棚を漁ってみる。
あの、アホっぽいんで。見えてないとこあるかなって。
無いんですけど。何にも。
「朝はご飯派なんですけどね。困りますね」
「じゃあ怪しい人です、がお〜。
無駄な抵抗はよして降伏しましょう」
そうも言われてしまえば手のひらを返す。
こうして男はあなたにとって怪しくなった。
「はぁ、憂鬱ですよ」
「ステーキが欲しいなんて言ってないのに…
ただ棚いっぱいの食料とソファ100個程が贅沢なのでしょうか」
「おはようございますぅ」
「…あぅぅ……」
他の場所にもと聞けば、不安が深まるような顔をした。
「悪い人じゃにゃいって言う人ほど怪しいんれすぅ…!」
目線を泳がせる。
当両翼はべそかきだった。泣き虫。
「…はぅ…」
「…最低限の確保ができるだけ良いのでしょうが…」
改めて戸棚を見る。
下がってみたって空は空。
「おやおや驚かせすぎましたか、
襲いませんよ〜悪い人じゃないです」
失礼しましたとひらひらと手を振る。
当片羽は物腰が柔らかそう。
「はい、おはようございます」
「奇遇ですねえ、みなさんと似た者同士。
食料の十分な確保が叶わなかった所まで
ててて…と駆けて戻って来る。
「おはよう。他の場所を探してみたけど何も無かった…」
あるのは雨の降る風景と雑魚寝している他人だけ。
「ヒャウッッ」
人の起きる気配がして飛び退いた。
「おは、おはは、おはようございましゅ!!」
呂律が怪しいのはデフォルトだ。
「い いえ…当羽はお腹が空いてるわけでは……」
「あぅ、でもでも、食糧の確認はしてもいますが…」
もだもだしていた。
翼が片方しかないのをチラチとみながら、目線は右往左往するか。
あくびをしながら体をもたげる。
片羽は軋むように羽ばたいた。
「ふぁ……おはようございます〜」
「残念ながら寝る前から空っぽなんですよ」
「やはりここに来る方々は、
腹ぺこさんばかりですよねぇ……」
資源の余裕が余所にもないことがわかってる
「…はぅぅ………」
「なかなか広い場所もないれすねえ…」
恐る恐る。
羽のせいで相変わらず歩きのバランスが悪い。
気を抜いたらすっ転びそうな足取りで場所を巡っている。
「…」
「食堂…でしゅねえ」
「…ぁぅう……」
空の戸棚をみて眉を下げた。
「ラッキ〜」
寝てる人ばっかか?おそらく?
咎められない限りは微塵も躊躇せずに残り資源を全部くすねていくだろう。落ちてるのと同じ、持ち主が居ないならそれは己のものにしても何ら問題ないよねの精神らしい。
重井田(しけいだ)は資源を R50 持ち出した
「……バレなきゃいいんですけど」
そうして、また静かに去っていくのでしょう。
猫は気まぐれですから
それでも、生きたいと思う気持ちはあるのです。
沢山食べたいという気持ちは。
猫 ですは資源を R50 持ち出した