『食堂』
どちらかと言うと広めのキッチン。水浸しになった。
奥にはシステムキッチンとカウンターがある。ガスも水道も電気も通っていない。
カウンター奥に「箱」のついた扉があるが、曇り空の見える階段があるだけ。
『記録[
「あくまでもね~、ま、オレなりの礼儀ってカンジ。
おっけ~いが貰えた所で、オレは出てくるよ~。ではね人間クンら~」
「……」
去り際、何かを言おうとして、然し口を噤んだ。
その方が"いい"と思ったのだ。
姿は消える。
メイドと悪魔のやり取りを眺めながら、へえ、と声を漏らす。
「ダリアさんも契約してたんだ」
キャンセルもありなんだなあ、と思いつつ。とはいえ自分にそのつもりは無いのだけれど。
こっちはプールと違って争い事の空気は無さそうで安堵する。
それと同時に確かめたい事を確認出来たので別の意味でも安心する。
以前見た時に何となく仲が良さそうに見えたから、何事もなさそうなのはきっと良い事。
用事が終われば、二人のカーテシーに合わせて自分もお辞儀し、また廊下の方に戻っていく。
「先までは賑やかだったけど、今となっては後の祭り。
現時点は"堂"をお送りしておりまー────ぉとと」
カーテシーから体勢を戻そうとして、軽くよろける。
倒れこそしないにしても、メイドとしてはまぁなんとも減点ものだろうか。
「はー……と、あくまで変更かぁ。そゆ感じなら、おっけーい」
「ふむ、ふむ。そうか、それなら……いいことさ。
要望は理解した。『変更』という形で受け付けておこう!
目指すさ、せいぜい退屈の少ないものをね。」
「そゆ訳でよろしくー、と」「おかえりなさいませー」
話は終わり。メイドは再び、カーテシーで出迎えるのだ。
そんな事よりも、来客の方がメイドには重要だから。
「分かった上で言ってる訳だしー?」
そも、あんなことをしたのもただの気紛れ。
その気紛れも間が空けば、簡単に心変わりするものだ。
「それにその分、微々たるものでも面白いもの見れる訳じゃん」
「あんな契約で浪費するよか、そっちの方がよっぽど良いしね」
プールでシャワーを浴びた後で今度は食堂を訪れる。
色々使えない物も多いから食堂ってよりは堂だったっけ…と思いつつ、
少し確認したい事があるので入口から中の様子を伺う。
「キャンセルねえ。ンー……この契約に関してならオレは構わないさ。
ただいーのかい、そっちにメリットはないってのは当然わかってるだろうから。」
「忘れてないさあ。今の状態じゃ忘れることもないとは言えなくても。」
「オッケー、アレかとは思ってたさ。ちゃんとその為にも資源は残してあった……んだけど、」
「棚から資源を出し入れしてロビーの人達を怖がらせましょう……」
?
「モニターバグって壊れたらヤベーって思ってたけどそこはちゃんとやれててウケる、律儀じゃーん?」
「おや」「一見さんおかえりなさいませー、っと」
カーテシー。お出迎えだ。
「賑わいこそ引きましたが、"堂"はご自由にお使いくださいませー」
ジャックはアレクサンダーに医療品をおくった
だろうねぇ……なんてラオヤさんの言葉へは音もなく笑み。
「あの契約キャンセル出来る?
無理なら変更とかでも全然いーけど」
そも、期日もなにも決めてなかったしな。
外からちらと覗いたことぐらいはあるかもしれないが、中に入るのは初めてのこと。
わかってはいたけれど、見たことのない顔も多いなと思いつつ。
一緒にやってきた彼に、箱の場所まで案内してもらうのだろう。
「このくらいでいい?」「もう少し必要かな」なんて相談しつつ、物資のやりとりを。
「いってらっしゃいませ。
またのお越しをお待ちしております」
ゆるり、ひとつカーテシー。
「…ん、あぁ。流石に忘れてなかった?」
から、くるりと振り向けば。悪魔を見上げるのだ。
「できるできる。前の契約に関してのアレだし」
「ちなみに俺がここ来たのは、ロビーのモニターで色んな人の表示資源がエラい勢いで減ったり増えたりしてて何事かと思ったからです」
「マジで異様な光景だったよ。良い意味でね」
何事かと思って野次馬しに来たのだ。
「いやあ、散り散りだねえ。いってらっしゃい、人間クン達よ……」
「それじゃ、ダリアクン。話っていうのは……ここで出来る話?」
ゲームの前に聞いていた要件について、貴方へ。
「参加しない分、こういう所で盛り上げるのがパーティ的にはかなーと」
「レイラさんもいってらっしゃいませ」
カーテシーは欠かさずに。それも済めば、軽く身を伸ばすのだ。
ここまで喋ったのも中々あれだし、まぁ、ね。
「いやー実況席のマブ達もマブかったな〜さんきゅーな!」
「お、休むのか〜、気ぃつけてしっかりゆっくりじっくり休めよ〜」
「おやすみなさいませ、棚バトラートーノ様」
「ひざしさんもいってらっしゃいませ」
ゆるり、カーテシーでお見送り。
「……時間も丁度いい塩梅かねぇ」
賑わいもまた、退く時は一瞬であるものだ。