『廊下』
薄暗く、色褪せた廊下。一切の破損はない。
絨毯は水にぬれ、だいなし。
中庭に面した壁は割れない窓になっている。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
『記録[
「7日後じゃなくて今晴らしてくだしゃい゛!!!」
無茶言っている。
「初めから夢の中じゃないれすぅ゛……!」
ファンタジー化物もなんか言っている。
似たように鳴いたその子には、瞬きした後。
大丈夫、と撫でていた。
何もしなくて良いし、こうなった以上あなたを守らねば。
べそかいてるから説得力はめちゃくちゃ弱いかもしれないが…
「そういう自治民みたいなの言ってる方がどうかと思います。たまたま食堂にいただけで管理してるつもりなんでしょうか」
なんて。言いながらドリーミングおじさんに近付いた。
「……話が違う」
放送自体が不具合であってくれよと。
吐き気が込み上げてくる。
このまま、同じ放送が続いたら……
今度こそ、おかしくなってしまうかもしれない。
>>4105
「……分からない事だらけだけど、襲う事が目的の人がいないといいけどね。」
少し疲れの色が混じった声色でそんな返事だけする。
まだ24時間経ってないだけでしょ。なんてそういうのはどうでも良いか。
7日って言われたんなら、きっとあと7日なんですよ。多分。
「誰のものでもないなら気にしなくて良いんじゃないんですか。俺を治療するのに使ってもらいましたし」
「放送の日数、減ってないね」
「どこからどこまでが一日、なんだろうね」
ぽつりと。抱いた違和感を、誰に聞かせるでもなく呟いた。
館内放送、聞きながら。
日数が進んでねぇな。
「食堂もま~騒ぎだったよ。人多かったしネ」
「怪我人やら……あ~、あとお前ら資源持ってただろォ~」
「別に誰のもんでもないから文句とかじゃないけどなァ」
「ちょっと目立ったかもなって感じ。」
「気をつけたほうが良いよ。みんな気にしてなさそうではあったけどな」
・・・。
(資源が足りなくなったらその気になるやつはいるかもしれんと思ってたが……)
(いや、でもよ、本気か? 七日後には雨が上がって出られるっつーのに……)
(笑えん話だが、資源を使い切りそうなほど腹ペコのやつがいるか、資源なんて関係なく傷つけたいと思ってるやつがいるか……)
(……だが、この調子で資源が減っていったら、オレも七日持つのかね……皆が持ってる資源の量が同じだとも限らんか……)
(考えてもしかたねえのに、考えなきゃいけないことだらけだ……)
「残念ながら最初から夢じゃないです」
放送が聞こえた天井を指さす。
次いで自分の──まだ垂らした左腕を指さす。
そんで最後に天使と繭を指さした。
こんだけ揃ってるんで夢じゃないです。
人外でも怪我はするんだ、なんて乾いた感想が浮かぶ。
自分だって藍さん程態度には出さないが理解が及ばない人外はただ怖い。
…廊下も少し人が増えてきた、食堂は騒がしそうだから避難してくる人もいるのかもしれない。
自分も暫くは食堂に寄るのはやめておこう、ロビーに続いてもう1か所足を遠ざける場所が増えた。
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
『不具合が1件あります。担当者は速やかに確認をしてください』
「……一人だけじゃないんだ」
何人も襲われているし、他人を襲うような人が何人もいる。そしてそれが誰かも分からない。
ゾッとする。信じ難いけれど、これが現実だと受け入れなければ。
だって、わたしが襲われなかったのはただ運が良かっただけかもしれないから。明日襲われるのは、わたしかもしれない。
「なん、で……」
疑問を口にする。側で聞こえた言葉に対してか、己の内側に起こる感情に対してか。
「ぅ、あぅぅ……」
誰かに似た様子でただ鳴いた。できることが思い浮かばなくて。
「お~……そうだ、お前たちに重大発表があんだよなァ~……」
「実は………」
「ここは………」
「………夢の中じゃないかも知れない………」
現実と向き合いました。現実おじさんです。
まぁそれはそれとして
「命まで奪う必要はないと思うけど」
「……危険分子を殺そうって流れになったら世も末ですね」
ならないでいてほしいなあ。作品だといっつもそうなる。
「あ、木枯先生……」
「そっちは……お変わりないようでよかった」
『こちらは自動放送です。』
ザザ、ザ……
『……資源供給に不具合?』
『またか。湿気ですぐダメになる……どうにかしないと』
ザザ、ザ……
『次の[快晴]は推定約七日後です』
また放送が流れ始めた……
>>4091
「…………襲われた、って」
目を見開く。こんな場所で、誰が何のためにそんなことを。……思いつく可能性はいくつもあるけれど、それでも人を襲うだなんて。
気を付けないとダメ、その言葉にはこくこくと頷くばかり。
「……あら、存外廊下にも人いるんだなァ~」
食堂から抜け出し、どこそこへ行くための廊下歩き。
こっちも怪我人がいんな。まぁ……そりゃそうか。
食堂だけってことはないわな。
泣きながら、よくわからない気分の子にはそっと大丈夫と耳打ちをした。
「怪我は……わかりましぇんけどぉ゛…」
えぐえぐ泣いている。パッと見血は出ていない。
「お部屋に入る前か後からわからにゃいれすけど」
「暗くなって、誰かが襲って゛きたんれすけどぉ゛…!」
「あ゛ぁ゛〜〜ん゛………」
バサバサ泣いている。
誰が襲ってきたかはわかんないようだ。
怪我したらしい張本人はいつもと変わらない。
絨毯の赤い染みが増えたかもしれませんね。
「どうなんでしょうね。これからなるのかもしれません」
「喧嘩になって、殺し合いの地獄になってないなら……いいか…」
そうだったら足を踏み入れるのも躊躇しそうだ。怖すぎて。
「……天使の子も、怪我したの…?」
>>4060
「………停電の時に藍さんが誰かに襲われたみたい。」
自然といつも以上に小さな声でそう伝える。
「玲依さんと私で応急処置したから怪我の方は多分大丈夫…、でも…気を付けないとダメだと思う。」
「ふーん」
そりゃそうか。棚に隠してあるんだから。
こんな風に斬り合いになるんなら、取り合いにもなる。
食堂にいる人が仕切ってるつもりなら、それこそ驕りでしょう。
言わないけど。
人間か非人間かの境界線なんて、大して気にしていない少女からしてみれば、肌の色で差別をするのと大差ないのでした。
非人間側が対抗してヘイトスピーチをしていないのなら、常温ぐらいだったりしないかな。
人も、人じゃなさそうなのも増えてきたのを見て、傘をくるりと一回転。
伝播していく混乱を、好ましくないような眼で眺めている。
「え、ぜんぜん大丈夫じゃないじゃない、どうしたの」
さっきは心配しないよう告げた癖に。
困惑と心配が混ざってよく分からない気分。