『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「気持ちが安らぐ手段があるのは、良いと思います」
「こんなところですからね」
ここは奇妙だし、慣れない環境に居るのだから
息抜きは必要だろうな。
「……あー、でも息抜きみたいなものだと思うのでそこは自由で良いって言うか。
吸う事自体は別に良いと思います。こういうトコだと落ち着かないでしょうし」
空気を読んでついつい二の句を続けた。
ヤニ臭さの発生源は素知らぬ顔でのんびりしています。
「アル中よりはヤニ中の方がマシ」
どっちもどっちです。良い子は手を出さないようにしましょう……。
「今は頑張ってもお湯が出ないようで。
慣れるか耐えるか他の策を取るか……」
貯水して室温に戻す案もあるが、
ちょっと現実的ではなかった。
「どうも……。学校のプールなら水しか出ないシャワーってのも納得だけどここ室内プールじゃん……。
温水にも冷水にも平等にふれあえて然るべきなのに」
ぶつくさぶつくさ。でもじっとシャワーに手を当てていると慣れてきた気がする。
「確かにいないねえアル中……」
「おやどうもこんにちは、あ、いい悲鳴ですね」
冷水シャワーに驚く者を喜んでいる人もいます。
「ここは水と触れ合う場所ですよ~」
「……外に出られないから喫煙スペースとか無いのキツそうだな~」
なんかこの辺り、水場なのにタバコ臭い。
臭うな~と思いながらシャワー室の方へと向かう。
蛇口をひねると「冷たっ!?」と大きな声が響いた。
「温水出ないのここ!?」
プールにやってきた。
窓を見ると雨が降っている。
身をかがめて水に触れてみる。
さざ波が立ち、水面に移る顔が揺れた。
「・・・」
少しの間じっと映る顔を見ている。
「物理的禁煙で人が死ぬのはちょっとな……」
やっぱり吸っていただいたほうが良い。
誰であろうが、一応は死なないでほしかった。
「……こう思うと意外とアル中が居ないな」
「生命線だからねえ。没収されてたらそれこそ死んでたかも」
「間違いなく第一犠牲者だったね」
第五犠牲者くらいまでは喫煙者になっていたかもしれない……
「ふふ。よかったですね、ここに来るときに煙草が没収されなくて……」
各喫煙者たちが大変な事になってしまう。
所持も補充も許されている分、優しいのかも。
「羽はほんと、匂いも水気も落ちにくいんで至近距離はやめてくださいね」
そう言いながら、プールへ戻ってきた鳥。
煙に風で対抗することにします。
「う〜ん、嫌がらせのしがいが無い……」
ス……と大人しくなった。
「大丈夫、全人類に止められても吸う。任せて」
強い意志で悪魔の囁きに頷いた。
「お、ヤニ臭~。
若い子には嫌われるかも。でも……ニコチンには逆らえない……
ただ単純に臭うよりはマシだしな……このままどんどん吸っていってやろう……」
悪魔の囁きをしている。
「ああ、香水と同じ要領で……」
「喫煙者の方が多いようですから、結果的にはそうなる事もあるかも」
煙草の煙は気にならないタイプ。
きっとどこかから副流煙が漂ってきてもそ知らぬ顔をするだろう。