『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「…………」
夢。殺人トリック。
夢を見ない生き物だから、ここが夢ではないと思っている。
首を傾けて、会話を聞いているだろう。
「なんか俺が人殺すと思われてる…?俺は殺さないからね。
小説の題材にほしいの、トリックの案が」
「プールで水を使わないトリックか……たしかに盲点でいいかもな……」
突き落としはトリックではない、ただの殺害方法。
人間パーティは気ィつけろよォ~、と見送って。
「水があるってのは閉鎖空間だとありがたそうだよなァ~」
「最悪プールの水飲んで生きられそうだし」
人気スポットになるかもな。現実でも小説の中でも。
あ、また人間だ。
化け物は化け物として差別しますが、人間は好きです。数少ないっすからね……。
ともあれ、パーティは続いていきます。ザッザッザッ……
「夢だから礼儀知らずが大した問題にならないの、盲点だ……」
パーティへの本格加入がまだ後の章であるため(?)、
未だ自由に見て回っている。
「プールぐらいの段差なら、突き落として頭打っちゃうとかありそうだな」
化け物と呼ばれるのは好きじゃない。
しかしそれらを口にするのも疎ましい。
立ち去るかとも考えたが、相手の方がこの場を去るらしい。
結局黙って此処にいる事にした。
「ドリーミング……」
「ゆ、夢見ることは、悪いことじゃないから……」
現実逃避しても仕方ない状況ではあるし……
「あ、うん」
人間パーティ、移動のお時間。ついていこう。
食堂とはまた違った広い場所に入る、見た感じ…普通のプールだろうか。
まばらに人の姿も視界に入るが、他の場所よりもヒトじゃなさそうな人は少なそうで内心安堵する。
「相変わらず失礼なガキだなこいつ……俺の夢のくせに俺に害意が高すぎる」
「殺害方法模索中。いい案あったら教えてなァ~」
夢だと思い込んでるドリーミングおっさんです。
化け物、彼?私?両方かな。
自認はあった。うんうん頷いてる。
「人間として社会生活してましたからねぇ」
「あっは、物騒なこと考えてる方もいらっしゃる。夢は夢のままに平和に生きましょう〜」
「やった、譲られた」
「雨具を着るのは案外一石二鳥かもですね」
「……医薬品も確かにあるといいんだけど。
まったく病気しないとも思えないし」
「あのおっさんはドリーミングおっさんです。現実を受け入れられずに夢だと思い込んでいるようです」
「哀れなのでそっとしておいてあげてください。つつくとガチうるさいっすよ」
「…お?ここは……プール?ははァ~……なんか、思ったより変な構造だなァ~」
薄暗い廊下を抜けて、たどり着いたはプールエリア。
さっきロビーで見た奴らもちらほらだなぁ。
「水を使ったトリックは可能、と…」
メモメモ……
「飲用水を身体洗うのに使うのはもったいないけど……
衛生的に身体はきちんと洗っておきたい……」
「きっと男の子も同じでしょうね」
「着替えになりそうな布は譲れないかも」
「……資源で水が配られるって言ってたよね…」
「プールサイドに排水口があれば、流すくらいなら出来そう…かな」
着替えはともかく……節約していけば、最低限は何とかなるかもしれない。
「楽しくはないだろうけど……」
「濡らしたタオルとかもあれば良いっすね。でもそれを洗うところも無いかもしれない」
「他に何にもなければここが1番“ぽい”っすね」
しかしこの先不衛生になっていきそうな水場と思うと、何だかなあ。
人間には代謝があるのだ。化け物は知らんけど。
「全然楽しくないっす」
クサクサも嫌っす。
「少なくともクサクサ仲間にするため、
集められたわけじゃないと信じたいですけど」
「……着替えぐらいはできそうかな……
着替えるものもないけど。カーテンがあったら抑えとこうかな」
新陳代謝が存在しないものなので、シャワーがなくとも問題はない。
問題はないが、周囲が臭くなるのは嫌だなぁ……。
クサクサ仲間ではないが、否定する声もない。