『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「くっ……俺が元の世界でフードガキの近くに住んでいたらこんなしみったれたおっさんには……」
元の世界では御主人様がいるだろうからそんなことはない。
多分凄い駄目男になってたんだろうな
「さっきのあったけ~~~~~~が録音されてたらどうしよう……」
「もし次来たらそいつらがここを温泉施設と勘違いするカモ……」
酷いトラップである。
まぁ、流れるのは最後のほうか。じゃあいいか。
こういう終わりもあったよって、そういうな。
「………んー」
「……聞きたい。願いとか悔いって人が察するもんじゃねぇだろォ~」
間違ってたら悲しいだろ?ちゃんと覚えておきたいんだよネ
「欲を言うなら……」
「ふかふかのお布団を天日干しして、ベッドにして」
「美味しいお料理作ってあげて」
「お風呂とマッサージを用意してあげて」
「人をとろとろにさせたかったな……」
叶わぬ願いです。くっ。
「お花、持って行ってもらえるといいね」
「………………」
「い~っぱい、してあげたいことはあるけど」
「い~っぱい、もらったから」
「お腹はいっぱいかもしれないなぁ」
幸せかも。
「もしも、私の声が……
また一年後とかにスピーカーで流れるなら」
「少しは明るいものを残したいですね」
これはまあ、現在進行形でやっているとして。
「……木枯先生なら当てられそうだと思うんですけど」
「聞きたいですか?」
いつか、名前を聞かれた時のように。
嫌ではないが言いにくそうな温度感。
はい。
きっと、いいように。
頷いて。
「……店の花だけ、持っていってくれればいいな」
「バイトの子らとか……」
置かれた花が自分と共に朽ちる事はないから。
せめて別の所で咲いていればいい。
「いい感じになるでしょうね」
「そうだ……失礼?」
そして中庭の扉が空いているかを確認しにいきました。
落ちずに帰ってくることをお望みください。
「なにもしないのもなァ~、なんかな」
せっかく覚悟が決まったのに、雨音聞いてたら怖くなりそうだろ。
とはいえ、やれることももうないし。
「のんびり話すしか無いわな。それぞれ」
「で、叶わない悔いってなんなの?」
「飯は相変わらず黴付いてるし」
「光は差し込めど雨音はやまねぇし」
「そのうち雨漏りとかしだしたらどうすっかね。」
「まぁ、そんなに長く持たないか、俺らが。」
「どうすっかな~、この後は。」
「光が差し込んでたから、ずっと…って訳じゃないと思うんだけどね。」
そもそも私達がここに来た時は雨の中を通ってこなかったんだろうか。
そういう事になると思うのだけれど…。
「……使い果たしちゃいました。
持ってた資源、全部」
結構あったのにな。言い草はやはり軽い。
「……ここでは誰も、亡くなっていないようでよかった」
「頑張ったよねぇ」
もう、喋っていいかな、って思った。
多分もう争いは起こらなくって。
誰かが誰かを傷つけることにも、怯えなくてよくて。
何か言ったら、怖いことを呼び込むんじゃないかって。
そういう不安からも、解放されたから。
「……晴れねェなァ~、結局」
「しゃあないわな。」
「この建物も、今までよく頑張ったよ」
なァ。ここがなかったら、今頃雨で全員溶けてるだろ。
じゃあまぁ、ここも頑張ってたんだよな。ずっと。
『次の[快晴]は計測不能です。』
同じ放送が繰り返されている。
『次の[快晴]は計測不能です。』
同じ放送が繰り返されている