『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「壁に向かって後退しながら頭をぶつけ──」
「って言いながら落ちていったら」
「それはやっぱりバラエティ番組すぎます」
そうしたいのは山々なんだけども。
「私の伝言が伝わることで、誰かが私と同じ目に遭うことを考えると、
とっても、心苦しいけど……」
落ちるも落ちないもままならない今だから、できることをするつもり。
「マジで落ちんなよお前ェ」
「落ちたら落ちる瞬間に直前の行動叫べよ」
無理。
まぁ片割れ落ちたら落ちたいわな。
道があるといい。どっかにはあるはずだ。
『だから、頑張って』
『応援してる』
落ちたくないし、落ちてほしくないけど。
落ちちゃったら、自分も迎えにいこうとする。
だから応援だけ添えておこう。
会える希望ってあった方がいいから。
「働いてたら、目が冴えてきちゃった」
「落ちる方法の模索も正直したいんですけど、
それで本当に落ちちゃったらと思うと」
「もう私一人の命でもありませんからね」
そうでなかったら、ちょっとは探ってた気がする。
つくづく自分の、自分への無関心さが恐ろしいという自覚。
「それはそれで恥ずかしいけど、
現実的な話をすれば。私の手は扉の取っ手を回せないほど非力だから。
書ききる前に命が尽きてしまうわ」
だから、残すのは一枚だけ。それまでは、道を探すの。
避けられない不安であり、仕方がないものだ。
怖がっても防止出来るものでもない。
なのでこれはただの甘えたちゃんかもしれません。
「私は落ちた先に食事と風呂がある希望を一応捨てていませんが……」
この様子なら戻ってくるほうが大変なんでしょう。
「そんなウォーターサーバーがあるなら初日から置いてくれたらいいのに」
あれは紛うことなき電力……。
落ちたらと聞いて花屋さんにくっつきにいった。
落ちないで……。
落ちたら落ちちゃうので防げないのだけれど。
相変わらずそれだけは怖いらしい。
「ありがとう……。既に筆記具にあてはあるから」
人があちらに落ちる以上、伝える手段は伝聞が効果的だった。
だけど人はいつまでも残り続けないから、その為に。少女は筆を認めるのでしょう。
「月並みな言葉ですが、あなたもあなたを責めないよう」
「身体が弱るかもしれませんが、お疲れのようなので。足などはよく休ませて下さいね」
「……」
「会うことがあれば、勿論」
短く答える。そういうこともあるだろうから。
拾い上げては、もう一つ積む。
「お湯が出せるウォーターサーバーは……」
「出せるなら最初から置いてて欲しすぎる……」