『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「……あの方ですね」
天使。きっと落ちていったというあの。
歌声がきれいな方だった。
最後にあった日も、バンケットで歌っていたのを覚えている。
「分かりました。俺が落ちたら伝えておきましょう」
「戻ってきたら、……あなたの口から伝えてください」
「ああ、あんぱんさんのことですね」
「はい。構いませんよ、いつか戻ってきたときのために、文字で書いておくのもいいかと思われます」
ずっと泣きながらも抱えていらしたので、確かに責任感が強そうでして。
「動くポットがあれば万々歳ですが」
「やっぱりガスコンロが最強な気もします。あったらいいな」
「たらいでそのままお湯沸かせるし」
注意が自分に向いているなら。少しでも可能性を。
けれどこの空気を乱したくなかったから、簡潔に。
「すみません、返事は要りませんので、少しだけお願いがあります。
覚えておいてくれるだけで結構ですので」
潤ったばかりの喉だけど、何とか言葉を出して。
そう前おいたら、誰の返事も待たずに本題を切り出した。→
「ひび割れのお兄さんもこんにちは。」
水を汲んでて挨拶出来なかったので、ご挨拶。
「燃やすものがあれば火付けられそうだよね。」
「ふう」
早々にプールから上がって休憩。
蚕のような子に視線を向けて、会釈ひとつ。
「……そうですよね、これって下準備で」
「あとは……引き当てる力も要るという」
水を抜いて捨ててるから、水溜まりは山ほどあるだろな。
確か天使に世話されてたやつだった覚え。
天使、どこかに行ったからなァ。難儀な話。
「終わりだァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
とりあえず、成し遂げたぞ!!
あとは湯を沸かす道具があるかどうかだ───
おや、先程ロビーにいた方だ。
どうも、と会釈して。
「……終わりましたねえ。見事に空だ」
「お疲れ様です」
これが風呂になるのかあ。
やっぱりしみじみ眺めていた。
こっそりと姿を現す、喧騒の邪魔にならないように。
どこかしらにある水たまりに指を浸せばそっと舐めた。
咳が止まれば何でもよかった。一人じゃペットボトルも開けられないだろうし。