『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「お願いしますご飯を分けてくださいって頭を下げるなら奢ってやってもいいけど?」
こう見えても今資産長者なほうだから。
昼の会話を思い出すな…
「うーん……」判定中……
「たしかに、多少なら全然かも」
よしとします。
骨の浮くほど、ではないけど。細いは細い。
「ああ、食の楽しみとシャワーなら……」
「……温かいシャワーだったら迷わないんですけどね」
「四子ちゃんは多少肉付き良くなっても平気でしょ」
乙女心はそうじゃない、かも。分かんないですけど。
「俺おでんに入ってるたまごってしらないなあ」
「肉しか見てないから……」
「和食の出る文化圏なんでしょうかね……」
言語がどうなってるのか、未だによくわからない。
「ここがコンビニだったらもう少し過ごせたのに」
「太っちゃいそうだけど」
『玉子も人気だった』
『大根とセットでね』
『お菓子出せるなら』
『おでんも出せないかなぁ』
流石にちょっと無茶があるか。
でも、想像して、ふふ、と笑った。
「あ、いいな。おでんのつゆご飯はよくやりますよね」
「コンビニのおでん、美味しかったな……」
「玉子買ったら黄身に浸して食べてました」」
『屋敷でお世話してたご主人様がね』
『おでんのおつゆかけたご飯とか、好きだったよ』
『出汁が出て美味しいんだって』
『牛スジ多めのおでん、よく作ったなぁ』
今年はまだだったな。
作ってあげとけばよかったかも。
後悔未満の郷愁だ。
では失礼します、と優しい声とおでんに見送られつつ。
ふらりとプールを去りました。
羽根が一つ落ちて「いた」という声も落ちました。
「いい思い出あったほうがいいからなァ~」
「最後くらい普通の生活っぽいことして、普通の人間らしくなりたいわ」
ざばー、ばしゃー。
死ぬしか無いって分かってからが一番前向きかもな~