『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
『こちらは自動放送です。』
ザザ、ザ……
『……おい、何かがおかしくないか?』
『計測中』
『はい……』
『……管理人室、というか』
『二階以上が、まるまるなくなっている』
ザザ、ザ……
『予報更新』
『次の[快晴]は推定約三十時間後です』
欠伸をしながら戻ってきた。
座る前に窓の外を、立ち止まってぼうっと眺めて。
それからいつもの場所に腰掛ける。
プールの水は……気持ち少し綺麗になったかな。
なっているといいな。あれだけ入れ替えしたから……
「……んあっ」
はっと顔を上げれば静かなプールが広がるのみ。
そこそこ長い間ぼーっとしていたみたいだ。
「ハハ、昨日も今朝も色々あったとはいえ、こうも意識が飛びやすくなるとはね……ストレスかな」
そっと立ち上がってどこか別の場所に。
『わかった』
『それじゃあまたね』
『ぼくもお散歩してくるよ』
気分転換になるかもしれないし。
良いアイデアかも。
あなたを見送って、自分もお散歩してこようか。
「うーん」
「……俺も少し歩いてこようかな。
散歩して、また戻ってきます」
いつもと違う場所にいるのもいいかも。
景色を変えてみようかなって。
『よかった』
『もう少しここにいる? 移動する?』
ここにいる様子なら、もう少し傍にいようかな。
何をするわけでもないけれど。ちょっとのんびりするくらい。
『じゃあカモミールとかも好きかも』
今度描いてみようかな。
立ち上がるなら見上げて、いってらっしゃいと見送るつもり。
『気を付けていってらっしゃい』
「私白と黄色の花が好きなんですよねえ」
あなたたちの言葉や説明をぼんやりと聞きながら、特に理由は言わず。
ゆるりと立ち上がって、あたりを見渡す。
気持ち悪かった冷えた服もマシになりました。
「すみません、ちょっと見てきたいものがありますから」
「少しは元気になりましたか?」
「青も赤もありますが、どちらもシックな色合いで。
俺は青のも好きですね」
「これはバラ科じゃなくてキンポウゲ科なので……
バラっぽくないのも、きっとそのせいです」
花弁がフリルのようで可愛らしい。
主人もこういうお花、好きだったなぁ。
懐かしげな顔をしている。
大人たちの雰囲気がやわらいでいると、
ちまこいのも嬉しいというもので。
にこにこしちゃうね。
「…………」
「へぇ」
自分から頼んでおいて簡素な返事。
そして書かれた花の輪郭を追って。
「白、の花なんですね」
「あと薔薇っぽくないです」
ほんの少しだけ和らいだ笑みを見せた。
「ああ。クリスマスローズはですね」
「こういう……」
「丸い花弁は五枚、色は白で縁から赤紫。
全体的に赤紫のものもあったり、内側が黄緑がかっていたり」
「俺の仕入れてたのはこういうので……」
描きながら説明していく。
花弁が丸じゃなくてフリルのようになっているやつ。
これもやっぱり白寄り。
「じゃあ、失礼して……」
クレヨンを借りて、スケッチブックにいくつか描いてみよう。
スミレにスズラン、ローズにアネモネ。
絵は描ける方だ。普段から描いていたし。
『わ。上手』
『菊の花だ』
『可愛いね』
お花ってきれいで可愛くて癒される。
香りはないものの、見た目だけでも癒し効果、ありです。