『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「当羽の羽が暖かいようでよかったれすぅ」
寝具扱いでいい。
「はわ……」
人間はお若い方ばかりれすねえ…
そんな顔をしていた。
「ユウガオと申します。有難い事にこの世に生命を受けて二十二年、経過しておりますね。」
また何やらお腹を空かせている様子。
微笑ましげに見ていたでしょう。
「おや、ふふ……まあ真っ当な生物でありましたら皆段々と年をとりますもの。いつまでも若いふりはしては居られぬものでございます。」
受け入れちゃったな、おじさん。
まあいずれ、みんなそうなるよ。
「うーん……おそらくしません。
体感なので人からどう感じられているかは分かりませんが」
「体内の油分の酸化? が云々らしいので……」
「フライドポテトに似た匂いらしいですね」
加齢臭の最初。
「じゃあおじさんです」
「よろしくおねがいします」
おじさん呼ばわり、ノーダメージ。
「19からならもう、20代後半はそう見えるでしょう。
否定はしません。俺も思っていた時期がありました」
「繭様のお体に人数を乗せるわけには行きましぇん………」
それなら自分が体を張る。
「雨が降ってると飛びずらいれすしぃ…」
「湿気を吸って膨らみましゅ…」
飛ぶのも下手だった。
この間廊下を通ったら30を超えているように見えたと言われたことを思い出しました。
そうです、おじさんと言われました。20代なのに。
「あら、まあ……」
26歳はおじさんらしい。
まあ、若い方から見れば
20代後半なんておじさんかも。
同情気味に苦笑でもしている。
「飛ぶことも叶わないのですね、ここ……お空を飛べるお方なら誰も彼も捨て置いて、気軽に逃げられたかもしれませんのに。」
雨が降っているから、
そうもいかないかもしれないけれど。
「不健康な人?」
ちょっと考えたけど分かりませんでした。
病気とかって事なんでしょうか。
精神性を問われたら、ほとんどみんなだと思います。
「まあそんな頼りない羽には期待してないですよ」
「人数乗らなそうだし……」
ちらりと周りの顔色をうかがっている。
健康と、顔色がいいと、体力があるは別物だけれど。
「……ああ、なんとなく最近心に詰まっていた嫌な感情が言語化できました」
「不健康な人しか不健康な顔してほしくないんですねぇ」
こちらの方も顔の半分が不健康でとても悲しいです。
半分は健康でとても嬉しいです。
ひらひらと羽を揺らした。
「飛べやしないわね……」
そのための力が奪われている、というわけでもなく。
これは飛べない蛾の羽ですから。
「退屈凌ぎに騒ぎたい、という方の為の催しなのかもしれません。」
どういう意図のどんなゲームなのかは知らないけれど。
一度だけ訪れた食堂の雰囲気は騒がしい、というものだったので
きっとまた、騒がしい雰囲気なのだろうと。
「健康的なお顔の方が見ていて安心できますものね。」