『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「1番下はカッパを着るとか……」
肌にさえ触れなければ問題ない、と考えている派です。
「景品寄越す余裕が誰にあると思ってるんです?」
「ただ日常を楽しむだけでしょう」
あんぱんの名前が広がっている。
ぺそぺそぺそ……と泣いていたことだろう。
あんぱんには違いない。
小さい子にさすられているガキ(天使)。
「そ、空を飛ぶにしてもお外に…」
「室内だと羽が引っかかってぇ……」
無駄に羽根がでかい。しかも不揃い。
「ゲーム下手なんでいきませんが、何か景品は出るんですかね?気になるところです」
自分で古傷を開いて閉じた。
勝ち負けがないゲームが好きです、水鉄砲とか……
「ゲーム……ですか」
いやあ。傷に響きそうだな。
俺が行ったところでな……という陰気さもある。
行く人がいるなら見送ろうかな。
すっかりここに根を張っていた。
「ゲーム、でございますか」
食堂で、ということは
以前見たものと同じようなものなのかな。
兎も角これは今ここへきたばかり。
去っていく人がいれば御見送りしよう。
「向かわれる方はどうぞ楽しんできてくださいましね。」
あんぱんはいっつもあんな感じです。
「ゲーム?」
「て事は暫く行けないっすね……」
退屈なのは嫌いだけど、人混みとうるさいのも嫌い。
我儘なので着席です。
「……次から次へと、思いつくものですね」
「私は……いかない、けど。
ゲームをして、気が紛れるなら、いいと思います」
皮肉みたいな言い草になっちゃった。
確かに、それで心が和らぐ人がいると思う。
「出られるようになったとて、
相合傘も……私の傘じゃ、難しそうですね」
「おや……それはそれは、配慮が行き届かず申し訳ございません……」
怪我した人はきっと、
もうどこにでもいるんだろうな。
「けれどもこちらの皆様は比較的穏やかに過ごされているようで何よりでございます。皆様の血の通ったお顔が見られて、よかった。」
「よっと。ここか~」
入口から顔だけを覗かせ、プールの中へ声を掛ける。
「さっきの子の人間クン~。崇おじ~。それからその他の人間クンの皆~。
今から食堂でゲームをやりま~す。よかったら来るといい。それじゃ~。」
言うだけ言って引っ込んでいった。
時間も時間ですからね。
やられた死んだの騒ぎは遠ざかって。
後片付けもそろそろ終わって。そんな感じ。
「翼があるひとなら、空に昇っていけませんかね?」
無理そ?
訳あってこれを名乗るしかないので名乗っているが、これは本名ではない。
から自分で名乗ったくせにべそついている…
左の手の裾で拭われている。
いつもこんな調子だった──
『ケガした人はいるから、どうだろう……』
落ち着いた頃というだけかもしれない。
『そっか。無事で、よかった』
『開かないね。お外、出たいけど……』
「どうも、こちらは比較的落ち着いている……のですかね?」
どこもかしこも大変だろうから、
落ち着いてるかどうかは不明。
兎も角ひら、と手を振り挨拶を。
傷もなければ、返り血もない。
「警戒はただの杞憂で御座いました。」
「さまざまに異常をきたしている今ならば、と思いましたがあの扉は未だ開きそうにないですねえ……ええほんとうに、退屈で御座います。」
「行けるようになったら皆こぞって出るでしょうね。
雨に当たる人は当たるでしょうが」
扉は以前閉ざされたままなのだろう。
窓だって開く気配もない。
「うーん。明日明後日開いたり……」