『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
そう言われればそっと頷いた。
スケッチブックを開く。
『どういたしまして』
『あなたはいつもやさしいから』
お花の絵も添えます。
やさしい人には、やさしくいたい。
それくらいは思うもの。
「冷たぁ……」
こないだ出したすっとんきょうな大声は出ない。
湯シャンすらできないから贅沢は言えない。
シャワーで一通り体を流して一息つく。
「ああ。行ってらっしゃい」
「筆記具もありがとうございました」
煙草を吸いに行く人には笑みを向けて。
出ていく人に手を振り返す。
俺真っ先に洗っちゃったな。
いいんじゃないかな。濡れて。
「ああ、……大丈夫」
「他のもっと寒そうな人に、かけてあげて」
今日は本当に、さっと流す程度だったもので。
「ありがとう、気にかけてくれて」
感謝は忘れずにしておく。
他人を気に掛ける心。失われてないことに、心から温かくなる。
寒いと言う女性にそっと近づいた。
自分の上着のケープを脱ぎ、肩にかけても良い? のジェスチャーをする。
タオルにされるのは困りますが、身体が暖まる間の風邪避けくらいになら……。
体躯相応に小さいけども。
「殺して奪うなら全部持ってって欲しいっす。死んでんのに握ってるのは無駄なんで」
ひらりと手を振りながら、男も個室に向かいます。
ところで今日怪我したところって濡らさない方が良いですよね。
……………………無理ゲー?
着ていた服を纏めて、眼鏡をかけ、
傘を小脇に。冷水を浴びると少し意識がしゃっきりする。
「さむいです」
でもこの有り余る体力。風邪を引きそうにはない。
「危うく俺目覚め代わりに殺されるところだった……?」
間一髪だったかもしれない……
「食うに困ったら考えるかァ~」
冗句かどうかなんぞここじゃわかりやしないだろ。
じゃあね~、隅のシャワー室貰っちゃお
「いってらっしゃいませ〜」
一服する方には手をひらひら。
あなたがシャワー室の容疑者からはすまれてよかった〜、という顔をしています。
「おお、すごい人の波」
この時間プールにいたことが無かったのでややびっくり。混む前に洗濯しておいて良かった。
「俺は一服しに行こ〜」
次は心の洗濯です。
「亜希奈ちゃんに四子ちゃんまで……」
「あげませんよ。欲しけりゃ殺して奪ってくださいね」
「まーこんなんだと考えちゃいますよね」
ね。
「ちゃんともう2日前くらいに夢から覚めてますゥ~」
「現実を受け止めて尚明るく振る舞う心では泣いてるおじさん……健気だネ……」
キャルン……
ひとまずシャワー
この場には複数のお兄さんがいますが、
さっきのタイミングでシャワーを浴びに来たやさしいお兄さんは木枯さんだけだ。
あってるあってると頷いている。
お上手と言われればふふんと胸も張っちゃいます。
お世辞じゃないけどね。
「あら!この子ったらお上手だワ~!やっぱりいい子には俺がお兄さんに見えちゃうんだよネ…」
おじさんのことじゃなかったらどうしよう…
その時は、お兄さんの存在を消します。
「資源いっぱい持ってるからつけ狙おうかなと」
シャワー浴びたいだけ。
タオルを手にシャワーを浴びにきたら
先客や話し込んでいる人々がいる。
そろそろお風呂時だから詰めかける人も多そうだ。
「シャワー……借りるね」
誰ともなしにそう告げる。
はい。潤沢さを隠すつもりのない男です。
今もどこかに持っているんでしょうね。
知らんうちに長者番付にのっちゃってるんで。
「おじさんストーカー?」
キモ……
『せめて踏み台になるなら人の為になるものがいい……』
しょぼぼの顔文字も添えた。
医療実験とかの方がまだ気分的にはマシだ。
「こんな冷水でも心のオアシスになりつつある。人間の順応には涙が出ますね。健気で……」
「ロビーのやつは見ましたか?今は作戦会議中?」