『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「ふふ。プールがやっとプールらしい使われ方をしましたね」
「あ。滑らないようにだけ気を付けて……」
さっき刺されたばかりだというのに、
笑って眺めているこれもまた随分と暢気なのかもしれない。
ちまこいのも満足顔。
ダブピしています。バシャバシャ楽しかったね~。
楽しかったから気にしないでねということでもある。
「………………。」
無邪気に水を掛け合っている様子を、ちらりと見た。
微笑ましく、羨ましい光景だ
呑気だなと思いながらも、何も言わず。やがてまた視線を逸らす。
これでよし! かもしれません。
空元気に近いはしゃぎだけれど、ないよりは良いと考えた。
水遊びはちょっと楽しいし。冷たいけれど。
大丈夫そうかも。
そして水が!
「!!!」
ちめたい! になったかもしれません。
ちょっとかかっただけで支障はないだろうけれど。
主人がドジっ子なので、皮肉な事に慣れている。
雑事なら、上手に出来るつもり。
「どういたしまして」
「いいよ。助けられて、ぼくも嬉しい」
「そうしたくて、そうしてるから」
「……お大事にね」
とりあえず血が止まったのを見れば安堵する。
拒まれないなら、そっと腕の傷のない部分か、背中を撫でて離れるんだろう。
「…………生きるつもりがあるのなら。」
「ケガくらいは面倒見たほうがいいだろう。」
治療は終わっただろうか。
であれば窓の外に視線を戻すだろう。
ああ、手際が良いな。慣れてるんだろうか。
話を聞く限りきっとそうなのかもな。
腕がじくじくと痛い。
傷もケガもこれには縁遠い。
それこそ枝切りばさみで指を切る程度しか。
「……ありがとうございます。助かりました」
「助けられてばかりですね、俺……」
きっとコレで血も止まっていくだろう。
何もしないでいるのは得意だから、傷はすぐに塞がる。
「ケガしたら、痛いからね……」
痛みが消えなくても、傷が見えるのも痛いから。
包帯やガーゼで隠して、少しでも誤魔化したい。
しれっと喋っている。文字書いてる余裕がありませんでした。
「いいの。好きでしているから」
自分がやりたくってしているのだ。
見せてもらえれば、ありがとうとお礼を言って。
テキパキと手当てをする。
血の色で震える指は、見ないふり。
大丈夫。大丈夫だ。それどころじゃないし。
しっかりしないと。
医者でもないし、傷がなくなるわけでもないけれど。
……しないよりは、きっとマシだった。
「使った方が良さそうには見えるね。怪我の具合の話じゃなくて、お兄さんのメンタル的に」
医療品による治療は視覚的な安堵も得られる。
むしろそちらの方がこの場においては重要な気がする。
「腕、見せて」
医療品を抱えて戻ってきた。
カッパさんは確かさっき資産を持ち出していたのを見ていたから。
花屋さんの方へ向かおうか。
「止血、少しなら出来るから」
「まあ、まあまあまあ、まあ……」
「ここにいたとしても責める気はないです。
疑ってもいませんし……」
ある種の無関心だった。
犯人に対しても。自分に対しても。
「やっぱ使った方が良いです?
こういう怪我ってあんましたことなくてぇ……」
「抑えてるだけでは止まりませんよ。
ひとまず心臓より高い位置にあげなさい」
掃除どころじゃなくなったな、二人もここにけが人がいる。
犯人がいるなら図太いも図太いだろう、あまり考慮をしていない。
「……一瞬だけ席を離れていいですか?
モニターを見てきます」
「かなり怪しいよね〜。それで言ったら俺もだけど」
同じタイミングでプールにいた訳だし。
「誰かがやらなきゃ怪我しないっしょ。リスカするようにも見えないし」
「なんだ私以外にも人いるじゃないですか、あははは」
「へえ」
血の匂いがする。あの辺かな、汚れているのは。
「すみません、少しだけ掃除……」
「え? 誰宛ですか、私でしょうか」
「加害という意味でしたら、していませんよ。
ゆっくりシャワーあびてましたし…………」