『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「や。利き手ではないので、なんとか、まあ」
「血って抑えてたら止まります?」
きっと様子から察する通りだろう。
こんな時でさえ、……こんな時だからか。
一応、笑顔は浮かべる余裕はあるようで。
「いやあ。そらそうでしょうね、といった感じで……」
ひら、とリボンを揺らして訪れた。
『大丈夫?』
丁度知っている顔が揃っている。
無事だったかな、ときょろきょろ見回した。
「………………」
ずぶぬれな様子に、目を瞬かせた。
「………………ふぅ〜。」
やっと少し煩わしさが収まった。
流れ出る赤を止めて一息。
応急処置が終わればまたプールサイドの隅で窓の外を見て立ち尽くしている。
「……長い放送でしたね」
ここは静かだ。
食堂では、きっと今も資源を巡って声が上がっているのだろう。
今はこの水の音が、やけに落ち着く。
流れて、溜まって、どこにも行かない。
生きようとも、争おうともしていない音。
……いいですねえ。
カッパはカッパに医療品をおくった
カッパはカッパに医療品をおくった
カッパはカッパに医療品をおくった
カッパはカッパに医療品をおくった
『不具合が三十三件あります』
「……あれ」
濡れた羽織を絞りながらシャワー室を出て来た。
何人か入って来たと思うのだが……
「それ、利き手?」
やられたのだろうな、と。
『不具合により規定数生産できませんでした』
『そのため、生産プロセスを再調整しました』
『追加資源を投入しました。』
「………………。」
喧しい。喧しい。
追加資源の投入だと。
通信機から流れるノイズ混じりの声を聞き届ける。
喧しい、喧しい、喧しい、喧しい!
「…………。」
赤い合羽から赤が滴り落ちる。
それはプールサイドの一角を汚して、それでもただ佇み続ける。
何もなかったかのように。
喧しい、喧しい、喧しい、喧しい、喧しい、喧しい!!
『このプロトコルは8分後、■■時30分に行われます』
『緊急プロトコルにより追加資源を生産・投入します』
『不具合が三件以上あります。速やかに確認してください』
『追加生産を行い行い行い行い』
『追加生産を行いました』
『直らねぇんだけど?』
『バイタルサインに異常を検知。緊急プロトコルを起動します……』
ザザ、ザ……
ザザザザ……
『死者を確認、資源の追加生産を行います』
『……』
『不具合が三件あります。不具合により、規定量生産できませんでした』
ザザ、ザ……
また放送が流れ始めた……
『こ資源供給システムに追加の不具合を確認しました』
『資源供給システムに三件の不具合を感知。担当者は速やかに確認してください』
『資源倉庫への追加資源を配置しました』
『資源供給システムの不具合を確認してください』
『資源・バイタルサインのスキャンを完了しました。』
『以降、モニタリング結果を出力します』
『管理システムに一件の不具合を確認しました。』
『資源・バイタルサインの表示切替は少量の資源を用いてください』
『こちらは自動放送です。』
ザザ、ザ……
『あ、予報が短くなりましたね!』
『そりゃ予報だからな。推定だし。』
『長くなることもあれば、短くなることもある。』
『まあ、そんなもんですよねぇ』
『また晴れてくれることを願うばかりだな。』
『さ、とっとと管理部屋の確認行くぞ』
ザザ、ザ……
『次の[快晴]は推定約三日後です』
「え」「……」
「……え? 待ってください、もしかしてあの胡散臭い薬は本物なんですか」
生き返った。
……何故? と思う間に思い当たるとすれば資源と交換できるあの薬だ。
「試した方が……」
「……驚きました。ここは慌ただしい場所だな……」
「あ、お花屋さんいました? 聞いてくださいよ」
「生き返った方がいらっしゃいました」
すごく悲しそうな声がシャワー室から聞こえてくる。
「朝からは見ていませんので誰かが訪れたのかは知りませんが……」