『プール』
白いタイルと規則正しい大き目の窓で構成されている。
窓は割れ、崩れた天井からプールに雨が降り注いでいる。
雨と地味な噴水と、緑のない殺風景な中庭が見える。
水しか出ないシャワー室も一応ある。
『記録[
「……」
個室からまっすぐここへやってきた。
昨日ここを去る前に聞こえた言葉を思い出す。葬儀とやらだったか。
あの派手な姿の男は私が葬儀屋であることを覚えてあれを言ったのか?弔辞を読ませていただく?何故だったのだろう。
「……あの方。
葬儀屋の才能あるんじゃないですか」
何が起こるかきっとわかってやっていた。
そこにあるのは呆れと侮蔑と称賛だ。
ひとまず手袋だけを洗いにシャワー室に向かって。
後はのんびりと、プールの際で羽を伸ばし暫し休んでいた。
「うーん……まあこのぐらいでいいか」
窓際に干した上着を回収しにやってくる。
ほんの少し冷たく感じたが、それが湿ってるのか単に気温の問題か分からなかった。
そのうち扉は開いて、ひとつも濡れた様子のない少女が出てくる。
昨夜と同じ光景だった。
傘はまだ完全には乾き切っていない。
黒色の少女が歩いた側から、斑らに湿った跡を残していく。
少女は一度も足元に目を落とすことのないまま、立ち去った。
このままプール以外の床も、構わず濡らして回るのだろう。
水気はそんなに多くないから、大体の人が起きてくる頃には、すっかり乾いているだろな。
雨音に見立てられた水流は時々強められたり、或いは弱められたりを利用者の気の向くままに繰り返している。
おそらく小一時間ほど水音は続いていただろうか。
音が止んでからも一向に外に出てくる気配のないまま、徒に時間が過ぎていく。
タイル目掛けて不規則に水滴が滴り落ちる音が聞こえる。
雨粒が傘に絶え間なくぶつかり続けるような音。
「あんまり無駄遣いしてたら、怒られちゃうかな」
ようやく、扉が内側から閉められた。
雨傘差した少女が一人。
誰かがいてもいなくても、誰が見ていても見ていなくても、全く気にしていないような足取りで、奥のシャワー室へと消えていく。
雨が頻りに傘を打つような音がする。
扉は閉まっていない。
「…………。」
欠伸。
誰が死んだだとか。葬儀だとか。
いちいち興味を持つことができない。
そんなに皆は死を特別視したいのだろうか。
>>8828
>>8836
「……綿積雫様は、お優しい方ですね。」
掛けられた湿ったテーブルクロス。
タオル代わりに使われていた布の一部をぎゅっと、
少しだけ、泣きそうな顔をして握りしめた。
「……、……ええ、偲ぶのは何も葬儀の場だけでなくても良い筈です。ありがとうございます、戻りましょうか、ロビーに。」
──そういってやや強引にバサッと、湿ったテーブルクロスを頭にかける
「風邪引く前にはやく上がんなよ。そしたらさっさとロビーに戻ろうじゃないか」
>>8815
「まったく、優れない体調をシャワーで悪化させてどうするのさ。……僕が言えた義理じゃ無いが」
「葬儀に出席しなくったって悼む事はできるよ。それに…………いや、なんでもない」
葬儀、と呼ぶにはあまりに烏滸がましい食堂での蛮行。
彼への心配もあるが、あの場から逃げ出す口実にうってつけだったのも事実。
ならば
「これ、まだ乾ききってないけど……よかったら使って」
「とはいっても綾川さんからのもらい物だけどね」
そういってバサッと湿ったテーブルク
>>8807
「……綿積雫様」
数分もすれば、濡れた髪から滴る露を手で受けながら
いつもよりも顔色の悪い姿が扉の先から顔を出す。
冷たい水を浴びたからだろう、指先は微かに震えている。
「どう、されました?
葬儀の方は……ああ、えっと……連れ戻せとでも、願われたのでしょうか……?申し訳ありません、それならば、すぐに……」
>>8797
気分の悪そうなあなたを見て後を追い、シャワー室に入った所を見かけて立ち止まる。
水音が止むまでは扉のすぐ外で静かに待っているようだ。
「……まったく」
「少しでも賛同していた自分が恥ずかしいよ」
上がった。今は足だけを水に浸している。
「ラララの葬式は明るく盛大にしてー、王様の葬儀は……国葬?こんなとこで勝手にやっていいのかな」
「アタシが死んだときはー、顔見知りなやつらにアレコレ決めてもらいたいな」
縁起でもないけど、本人的にはとても大事な話。
ひた、ひた、と裸足が通過していく音がする。
それは何かに目を向けることなく一直線にシャワー室へ。
ほんの少し間を置けば、シャワーの水音が響いただろうか。
あのアプリで消した相手は存在ごと無かったことにされるから、葬式なんてやらなかった。
アタシは今まで沢山の人にどれだけ酷いことを
考えても仕方ないので、泳いだ。
「忘れるも何も、こっちは最初から何も知らないっつーの」
イライラしてきたな。…泳いでみようか。
服を脱ぎ、下着だけの状態でプールに飛び込んだ。
>>8729 花屋
『ありがとう』
『……無理しないでね』
お礼を添えた後、少し迷って言葉を付け加えた。
心配そうにはしつつも引き留めず、そっと見送るだろう。
>>8722 marry
去り際にその文面を見て。
「……ええ。もちろん」
「いいですよ」
笑顔は向けられた。それから離れていく。
「…………」「俺、も」
「やめておきます」「…………すみません」
先程よりもいくらか良くない顔色をして。
ふらりと自分も部屋の方へ。